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第一章 港町グラード
episode 07 拭えぬ疑い
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カルディアからの話に腕組みをし素直に聞き終えたレディは、振り返ると手摺を両手で掴み海を眺めだした。
「疑問ということはないんだ、アテナ。
だがね、それだけの理由であたいらの力を借りたいってのがどうにも引っかかってね」
「そうなの?
あたしは別に分からない話ではないと思ったけど」
「それはそうなんだがね。
何か……第六感と言うべきかな、過去のわだかまりで引っかかってるってだけじゃない気がしてさ。
彼女は二手三手先を詠むことに長けていてね、剣技のみ成らず策士としても功績を上げていたのさ。
そんな彼女が単純に力を借りたいと……ってね」
「んー、それなら確かめることは出来ないわよね。
聞きに行ったところで教えてくれるわけもないだろうし。
だとしたら、あたし達がするべきことは何かに備えておくしかないってこと、か。
ミーニャには船に残ってもらおうかと思ってたけど、一緒に行ったほうが良さそうね」
チラリとミーニャを見ると不安げな表情で首を縦に振った。
「それなら荷物は持って行くしかないからミーニャに任せようかしら」
「分かりました。
お嬢様の荷物くらいは運べます」
というのも、レディは荷物と呼べるほどの物はなく手ぶらに近い状態なので、実際はあたし達の荷物しかない。
「ん、なんだ?
あれか?」
急に海賊の怒号が響くと船上が慌ただしくなり、それに気づいたレディは何かに気づいたようであたしも身を乗りだし船首の先を見据えた。
「あれね!?
これからあたし達が行くところは。
小島だと思っていたけど、この距離であの大きさ。
結構広そうね」
彼方に見える海に浮かぶ木々。
目指す島はあそこだと云わんばかりに船は真っ直ぐに進んで行く。
「降りる支度をするわよ。
万全の準備をしなきゃね」
そう言って与えられた部屋へ向かうあたしの後ろを二人が黙ってついてくる。
「さて、何を身に付けて行こうかしら?」
「あたいらは宝を探すよりも身を守る物を重視したほうが良いだろうね」
部屋に入るなり背嚢から道具を取り出し、床に並べながら選別を始める。
「すると、これとこれは要らない。
……これはどうする?」
レディに見せたのは旅で見つけた冠。
強い魔力を発する物だとか言われたのだが。
「身に付けて行った方が良いだろう。
とは言っても魔法は使えないが、何もないよりは良いだろうね」
「ま、そうね。
魔法の罠なんかあったりしても不思議じゃないだろうし、何も無いよりはってことよね。
そうなると、ミーニャには近くにいてもらわなきゃだわ」
「は、はい」
あたしは魔力の欠片もないようで、冠に秘められた魔力を解くにはミーニャが必要だった。
彼女からは少なからず魔力を感じると行く先々で言われていたが、これまで魔法を披露することもなければ覚えようともして来なかった。
「ちゃんと覚えてるわよね?
魔言語」
「大丈夫です、お嬢様。
しっかりと覚えてます」
これを見つけた後、魔法具に詳しいお爺さんに鑑定してもらい教えてもらった魔言語。
それを唱えることにより魔力が解放されるのだとか。
ただし、魔力が封じられていること以外の詳しいことは分からず、魔法を使う者に更なる鑑定をしてもらわなければならないのだとか。
「よし!
あとはこれとこれね。
さて、あたしは準備出来たわ。
良いわね、みんな」
普段より多少の武具を身に付け二人が首を縦に振るのを確認し甲板へ出ると、遠くに見えていた島は既に船の間近まで迫っていた。
「疑問ということはないんだ、アテナ。
だがね、それだけの理由であたいらの力を借りたいってのがどうにも引っかかってね」
「そうなの?
あたしは別に分からない話ではないと思ったけど」
「それはそうなんだがね。
何か……第六感と言うべきかな、過去のわだかまりで引っかかってるってだけじゃない気がしてさ。
彼女は二手三手先を詠むことに長けていてね、剣技のみ成らず策士としても功績を上げていたのさ。
そんな彼女が単純に力を借りたいと……ってね」
「んー、それなら確かめることは出来ないわよね。
聞きに行ったところで教えてくれるわけもないだろうし。
だとしたら、あたし達がするべきことは何かに備えておくしかないってこと、か。
ミーニャには船に残ってもらおうかと思ってたけど、一緒に行ったほうが良さそうね」
チラリとミーニャを見ると不安げな表情で首を縦に振った。
「それなら荷物は持って行くしかないからミーニャに任せようかしら」
「分かりました。
お嬢様の荷物くらいは運べます」
というのも、レディは荷物と呼べるほどの物はなく手ぶらに近い状態なので、実際はあたし達の荷物しかない。
「ん、なんだ?
あれか?」
急に海賊の怒号が響くと船上が慌ただしくなり、それに気づいたレディは何かに気づいたようであたしも身を乗りだし船首の先を見据えた。
「あれね!?
これからあたし達が行くところは。
小島だと思っていたけど、この距離であの大きさ。
結構広そうね」
彼方に見える海に浮かぶ木々。
目指す島はあそこだと云わんばかりに船は真っ直ぐに進んで行く。
「降りる支度をするわよ。
万全の準備をしなきゃね」
そう言って与えられた部屋へ向かうあたしの後ろを二人が黙ってついてくる。
「さて、何を身に付けて行こうかしら?」
「あたいらは宝を探すよりも身を守る物を重視したほうが良いだろうね」
部屋に入るなり背嚢から道具を取り出し、床に並べながら選別を始める。
「すると、これとこれは要らない。
……これはどうする?」
レディに見せたのは旅で見つけた冠。
強い魔力を発する物だとか言われたのだが。
「身に付けて行った方が良いだろう。
とは言っても魔法は使えないが、何もないよりは良いだろうね」
「ま、そうね。
魔法の罠なんかあったりしても不思議じゃないだろうし、何も無いよりはってことよね。
そうなると、ミーニャには近くにいてもらわなきゃだわ」
「は、はい」
あたしは魔力の欠片もないようで、冠に秘められた魔力を解くにはミーニャが必要だった。
彼女からは少なからず魔力を感じると行く先々で言われていたが、これまで魔法を披露することもなければ覚えようともして来なかった。
「ちゃんと覚えてるわよね?
魔言語」
「大丈夫です、お嬢様。
しっかりと覚えてます」
これを見つけた後、魔法具に詳しいお爺さんに鑑定してもらい教えてもらった魔言語。
それを唱えることにより魔力が解放されるのだとか。
ただし、魔力が封じられていること以外の詳しいことは分からず、魔法を使う者に更なる鑑定をしてもらわなければならないのだとか。
「よし!
あとはこれとこれね。
さて、あたしは準備出来たわ。
良いわね、みんな」
普段より多少の武具を身に付け二人が首を縦に振るのを確認し甲板へ出ると、遠くに見えていた島は既に船の間近まで迫っていた。
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