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第十七話「刻の水門」
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スターク様から託していただいたお義母様のティアラと、「暗闇の森」に棲まう魔物から取れる中でも最も純度が高い「蒼の魔石」、そして、部屋に飾られていた時計を素材にして、わたしは失敗することなく「刻の水門」を創り上げていた。
今頃は、スターク様の指示でこの書庫から根こそぎ邪竜王にまつわる書物を運び出していった騎士たちが作戦会議をしている頃だろう。
だけど、わたしにはもう一つだけやるべきことがあった。
「これを使って……」
邪竜王に関する噂やお伽話の類でいいのなら、わたしも少しは聞いたことがあるし、錬金術の勉強で少し疲れたときにはここの書物を何冊か読んでいたこともある。
曰く、本当か嘘かはわからないけれど、あまりにも強すぎる闇の力を纏う邪竜王は、近づくだけで並の人間を死に至らしめるほどの瘴気を身に纏っているらしい。
そして、死を遂げた者をアンデッドとして自分の配下とする性質も。
そのお話が本当なら、スターク様が並の人間ではないとはいえ、なんの加護もない状態で戦いを挑むのは危険すぎる。
なにせ、相手は「聖女」の加護を得て戦う勇者様すらも討ち倒した古竜なのだから。
だから、わたしが作らなければいけないのは。
この家に嫁いでから、何度もお世話になってきた「新訳錬金術大全」のページをめくりながら、目当てのそれが載っている箇所を探し出す。
分厚いという言葉が生ぬるいほどにページが嵩んでいる本だ、カテゴライズされているとはいえ、見つけ出すのはそう簡単なことじゃなかった。でも。
目当てのページに辿り着いたわたしは、決意と共に素材を錬金釜の中に入れて、魔力を注ぐ。なによりも大事な、かけがえのないお方の顔を強く、脳裏に浮かばせながら。
◇◆◇
「ここを訪れたということは、邪竜王討伐のための勝利の鍵……それを創り上げたということでいいのだな、リリアーヌ」
「はい、スターク様。これが……念じた場所へと即座に移動することができる魔道具、『刻の水門』でございます」
作戦会議室を訪れたわたしは、スターク様に促される形で、手にしていた「刻の水門」を──見た目としては、仄蒼く光る砂が入っているだけの砂時計を、円卓の上に置く。
どんなものが出てくるのかと期待していた騎士たちの中には少なからず落胆の視線を向ける人もいたけれど、これは失敗なんかじゃない。
それを証明するように、わたしは「刻の水門」を再び手に取ると、魔力を込めて砂時計をひっくり返す。
「おおっ……!?」
一瞬で蒼い光の中に姿を消したわたしが、作戦会議室の反対側に現れるのを見て、消沈していた兵士たちも一転、驚愕しながらも希望に満ちた表情を取り戻していた。
「……このように、錬成は成功でございます」
ドレスの裾を摘んで一礼するわたしに、歓声と、ウェスタリア神聖皇国の勝利を願う鬨の声が浴びせられる。
「よくやった。よくやってくれた、リリアーヌ……我々も作戦は固まったところだ、装備を整え次第、出立する」
「……恐れながら、スターク様。作戦とは……?」
邪竜王イーヴェルは、正面から挑んで倒せるような相手ではない。
大砲やバリスタをも容易く弾き返すその鱗を斬り裂けるのは、唯一、オリハルコンでできた聖剣だけだと、童話には謳われている。
それが本当かどうかは確かめようがないけれど、勝算があるのならば、わたしも最大限に力を尽くすべく、スターク様へと問いかける。
「邪竜王イーヴェル……やつは二百年前にも現れ、そのときの勇者に一度『魔の島』へ封じ込められている。恐らくではあるが、まだその目覚めは不完全……手負いの状態であるというのが、竜の生態に詳しい者たちが下した結論だ」
──もっとも、生物としての枠を超えた生物であるエンシェント・ドラゴン……その王たる存在に、人間の定規が当てられるかはわからんが。
スターク様は少しだけ物憂げな顔をして、眉間にシワを寄せる。
確かに、お伽話が本当であるなら、伝承であるのなら、北方大陸を不毛の地に変えたかの邪竜王が、この世界でも随一の大国であるとはいえ、ウェスタリア神聖皇国を滅ぼすのに手間取ったりはしないはずだろう。
だとしたら、希望はある。わたしはほっと、安堵に胸を撫で下ろした。
「そこで、俺が取るべき作戦は一つ……この聖剣『クラウ・ソラス』で伝承に謳われたように、二百年前の勇者が封印を施したときのように、あえてやつの逆鱗を穿ち、勝負を決するつもりだ」
聖剣の傷跡は、魔の者にとっては耐え難い苦痛であると同時に、どれほどの時を経ても癒えることなく痛み続けるという。
だとすれば、逆鱗に……最強種たる竜が持つ、唯一の弱点に二百年前の傷跡が刻まれているのならば、それを深く抉り、勝負を決するという作戦は決して無謀なものではない。
一か八かには違いないけれど、確実に勝利の目がある一手だ。
だから、わたしは。
今頃は、スターク様の指示でこの書庫から根こそぎ邪竜王にまつわる書物を運び出していった騎士たちが作戦会議をしている頃だろう。
だけど、わたしにはもう一つだけやるべきことがあった。
「これを使って……」
邪竜王に関する噂やお伽話の類でいいのなら、わたしも少しは聞いたことがあるし、錬金術の勉強で少し疲れたときにはここの書物を何冊か読んでいたこともある。
曰く、本当か嘘かはわからないけれど、あまりにも強すぎる闇の力を纏う邪竜王は、近づくだけで並の人間を死に至らしめるほどの瘴気を身に纏っているらしい。
そして、死を遂げた者をアンデッドとして自分の配下とする性質も。
そのお話が本当なら、スターク様が並の人間ではないとはいえ、なんの加護もない状態で戦いを挑むのは危険すぎる。
なにせ、相手は「聖女」の加護を得て戦う勇者様すらも討ち倒した古竜なのだから。
だから、わたしが作らなければいけないのは。
この家に嫁いでから、何度もお世話になってきた「新訳錬金術大全」のページをめくりながら、目当てのそれが載っている箇所を探し出す。
分厚いという言葉が生ぬるいほどにページが嵩んでいる本だ、カテゴライズされているとはいえ、見つけ出すのはそう簡単なことじゃなかった。でも。
目当てのページに辿り着いたわたしは、決意と共に素材を錬金釜の中に入れて、魔力を注ぐ。なによりも大事な、かけがえのないお方の顔を強く、脳裏に浮かばせながら。
◇◆◇
「ここを訪れたということは、邪竜王討伐のための勝利の鍵……それを創り上げたということでいいのだな、リリアーヌ」
「はい、スターク様。これが……念じた場所へと即座に移動することができる魔道具、『刻の水門』でございます」
作戦会議室を訪れたわたしは、スターク様に促される形で、手にしていた「刻の水門」を──見た目としては、仄蒼く光る砂が入っているだけの砂時計を、円卓の上に置く。
どんなものが出てくるのかと期待していた騎士たちの中には少なからず落胆の視線を向ける人もいたけれど、これは失敗なんかじゃない。
それを証明するように、わたしは「刻の水門」を再び手に取ると、魔力を込めて砂時計をひっくり返す。
「おおっ……!?」
一瞬で蒼い光の中に姿を消したわたしが、作戦会議室の反対側に現れるのを見て、消沈していた兵士たちも一転、驚愕しながらも希望に満ちた表情を取り戻していた。
「……このように、錬成は成功でございます」
ドレスの裾を摘んで一礼するわたしに、歓声と、ウェスタリア神聖皇国の勝利を願う鬨の声が浴びせられる。
「よくやった。よくやってくれた、リリアーヌ……我々も作戦は固まったところだ、装備を整え次第、出立する」
「……恐れながら、スターク様。作戦とは……?」
邪竜王イーヴェルは、正面から挑んで倒せるような相手ではない。
大砲やバリスタをも容易く弾き返すその鱗を斬り裂けるのは、唯一、オリハルコンでできた聖剣だけだと、童話には謳われている。
それが本当かどうかは確かめようがないけれど、勝算があるのならば、わたしも最大限に力を尽くすべく、スターク様へと問いかける。
「邪竜王イーヴェル……やつは二百年前にも現れ、そのときの勇者に一度『魔の島』へ封じ込められている。恐らくではあるが、まだその目覚めは不完全……手負いの状態であるというのが、竜の生態に詳しい者たちが下した結論だ」
──もっとも、生物としての枠を超えた生物であるエンシェント・ドラゴン……その王たる存在に、人間の定規が当てられるかはわからんが。
スターク様は少しだけ物憂げな顔をして、眉間にシワを寄せる。
確かに、お伽話が本当であるなら、伝承であるのなら、北方大陸を不毛の地に変えたかの邪竜王が、この世界でも随一の大国であるとはいえ、ウェスタリア神聖皇国を滅ぼすのに手間取ったりはしないはずだろう。
だとしたら、希望はある。わたしはほっと、安堵に胸を撫で下ろした。
「そこで、俺が取るべき作戦は一つ……この聖剣『クラウ・ソラス』で伝承に謳われたように、二百年前の勇者が封印を施したときのように、あえてやつの逆鱗を穿ち、勝負を決するつもりだ」
聖剣の傷跡は、魔の者にとっては耐え難い苦痛であると同時に、どれほどの時を経ても癒えることなく痛み続けるという。
だとすれば、逆鱗に……最強種たる竜が持つ、唯一の弱点に二百年前の傷跡が刻まれているのならば、それを深く抉り、勝負を決するという作戦は決して無謀なものではない。
一か八かには違いないけれど、確実に勝利の目がある一手だ。
だから、わたしは。
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