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第十六話「リリアーヌの秘策」
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「馬鹿な……その言葉が本当であれば、王都は!」
「か、かろうじて……かろうじて王都だけに『結界』を集中させることでなんとか持ち堪えてはいますが、恐らくあと二日ももたないでしょう……」
それでも、スターク様なら、皇国最強の騎士であればあるいは、と、何万分の、何億分の一かの奇跡にかけて、王都から伝令は放たれたのだろう。
だけど、遠すぎた。
助けを求めるのに、ピースレイヤー領はあまりに王都ウェスタリアからかけ離れた場所にある。早馬を飛ばしたとしても、結構な日数がかかるほどに。
それでもまだ国が滅んでいないという事実を考えれば、恐らく初手の初手で神皇陛下はその策に打って出たのだろう。
皆が皆できる精一杯を尽くして王都に、この国が稼いだ猶予は、残り二日。
あまりにも残酷すぎる現実に、アインハルト様も、エスティさんも、スターク様すら、この場にいる全員が打ちひしがれていた。
最後の晩餐会を開くことぐらいはできるだろう、と、邪竜王の高笑いが聞こえてくるようだ。
残り二日、たった二日。
それしかわたしたちには残されていない。
──それでも。
ぐっ、と拳を固めて、わたしは一歩前に歩み出た。
「あと二日……確かに二日、猶予はあるのですね?」
「はっ! 騎士様や我々兵士の誇りにかけて、それだけは確かだと言えます!」
「ならば、十分です」
わたしの言葉に、正気か、とばかりにスターク様を除いて、この場に集まった人たちが目を見開く。
そう、二日。これがあと一日であればわたしも絶望に打ちひしがれていたけれど、二日残されているのであれば、まだ希望は潰えていない。
「策はあるのか、リリアーヌ……!」
「はい、わたしの……わたしの錬金術で、必ず王都を救ってみせます! ですから力をお貸しください、スターク様!」
わたしだけでは無理だ。
あの邪竜王を倒すだけの力がわたしにはない。だけど、スターク様なら。
皇国最強の騎士様であれば、可能性はあるはずだと、そう信じたかった。
「……わかった、君に命を預けよう。必要なものはなんだ?」
「オリハルコンです。悠久の時を経ても決して朽ちることのない、時の旅人とも呼ばれる金属……それさえあれば、理論上は王都まで一日も経たずに着くことができます」
わたしが作ろうとしている魔道具、その一つは「刻の水門」と呼ばれる、念じた場所へ瞬間移動することができるものだった。
だけど、その錬成にはどうしても、不壊にして悠久の金属を、オリハルコンを欠かすことはできない。
もちろんそれが一朝一夕に用意できるようなものではないということはわかっていたけど──
「……オリハルコンか、ならば当てはある」
「本当ですか、スターク様!?」
「ああ……今は亡き母のティアラだ。勇猛な剣士として名を馳せた功績を讃えられて、神皇陛下から贈られたものがある。それを使ってくれ、リリアーヌ」
そんな大事なものを、と一瞬舌先から言葉が滑り落ちそうになったけれど、今は一秒一刻を争う緊急事態だ。
スターク様のご厚意と、お義母様と、この巡り合わせに感謝して、ありがたく錬成させていただくとしよう。
オリハルコンが手に入るかどうかが一番の心配ではあったけど、それが解決したなら、あとは心配することはなにもない。
「アインハルト、リリアーヌが魔道具の準備をしている間に我々は邪竜王に対しての情報を可能な限り集める。書庫を開け放て! 知識ある者、明かりを持つ者は俺とリリアーヌに続け!」
『はっ!』
スターク様の号令に続いて、使用人や駐留している騎士たちが応えて、我こそはと知識を持つ人が歩み出る。
邪竜王イーヴェル。そう簡単に倒せるような相手じゃないことはわかっているけど。
全力を尽くさなくちゃいけない。今のわたしにできる全てを使って、必ずこの国に、大好きな人が愛するこの地に勝利をもたらすのだ。
「か、かろうじて……かろうじて王都だけに『結界』を集中させることでなんとか持ち堪えてはいますが、恐らくあと二日ももたないでしょう……」
それでも、スターク様なら、皇国最強の騎士であればあるいは、と、何万分の、何億分の一かの奇跡にかけて、王都から伝令は放たれたのだろう。
だけど、遠すぎた。
助けを求めるのに、ピースレイヤー領はあまりに王都ウェスタリアからかけ離れた場所にある。早馬を飛ばしたとしても、結構な日数がかかるほどに。
それでもまだ国が滅んでいないという事実を考えれば、恐らく初手の初手で神皇陛下はその策に打って出たのだろう。
皆が皆できる精一杯を尽くして王都に、この国が稼いだ猶予は、残り二日。
あまりにも残酷すぎる現実に、アインハルト様も、エスティさんも、スターク様すら、この場にいる全員が打ちひしがれていた。
最後の晩餐会を開くことぐらいはできるだろう、と、邪竜王の高笑いが聞こえてくるようだ。
残り二日、たった二日。
それしかわたしたちには残されていない。
──それでも。
ぐっ、と拳を固めて、わたしは一歩前に歩み出た。
「あと二日……確かに二日、猶予はあるのですね?」
「はっ! 騎士様や我々兵士の誇りにかけて、それだけは確かだと言えます!」
「ならば、十分です」
わたしの言葉に、正気か、とばかりにスターク様を除いて、この場に集まった人たちが目を見開く。
そう、二日。これがあと一日であればわたしも絶望に打ちひしがれていたけれど、二日残されているのであれば、まだ希望は潰えていない。
「策はあるのか、リリアーヌ……!」
「はい、わたしの……わたしの錬金術で、必ず王都を救ってみせます! ですから力をお貸しください、スターク様!」
わたしだけでは無理だ。
あの邪竜王を倒すだけの力がわたしにはない。だけど、スターク様なら。
皇国最強の騎士様であれば、可能性はあるはずだと、そう信じたかった。
「……わかった、君に命を預けよう。必要なものはなんだ?」
「オリハルコンです。悠久の時を経ても決して朽ちることのない、時の旅人とも呼ばれる金属……それさえあれば、理論上は王都まで一日も経たずに着くことができます」
わたしが作ろうとしている魔道具、その一つは「刻の水門」と呼ばれる、念じた場所へ瞬間移動することができるものだった。
だけど、その錬成にはどうしても、不壊にして悠久の金属を、オリハルコンを欠かすことはできない。
もちろんそれが一朝一夕に用意できるようなものではないということはわかっていたけど──
「……オリハルコンか、ならば当てはある」
「本当ですか、スターク様!?」
「ああ……今は亡き母のティアラだ。勇猛な剣士として名を馳せた功績を讃えられて、神皇陛下から贈られたものがある。それを使ってくれ、リリアーヌ」
そんな大事なものを、と一瞬舌先から言葉が滑り落ちそうになったけれど、今は一秒一刻を争う緊急事態だ。
スターク様のご厚意と、お義母様と、この巡り合わせに感謝して、ありがたく錬成させていただくとしよう。
オリハルコンが手に入るかどうかが一番の心配ではあったけど、それが解決したなら、あとは心配することはなにもない。
「アインハルト、リリアーヌが魔道具の準備をしている間に我々は邪竜王に対しての情報を可能な限り集める。書庫を開け放て! 知識ある者、明かりを持つ者は俺とリリアーヌに続け!」
『はっ!』
スターク様の号令に続いて、使用人や駐留している騎士たちが応えて、我こそはと知識を持つ人が歩み出る。
邪竜王イーヴェル。そう簡単に倒せるような相手じゃないことはわかっているけど。
全力を尽くさなくちゃいけない。今のわたしにできる全てを使って、必ずこの国に、大好きな人が愛するこの地に勝利をもたらすのだ。
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