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第35話 ②
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「ふへへ。ねぇちゃん、花屋やってんだろ? 随分儲かってんだってなぁ?」
「アレアレ! 噂の白い花! アレ、俺にもくれよぉ! すっげー高く売れるんだろ?」
私は酔っ払いたちの台詞にピンときた。
どうやらこの人達の目的は初めから私だったらしい。
「いえ、あの花は王家が特別に用意した花です。そう簡単に手に入るものじゃありません」
「うるせぇっ!! だったら王家に掛け合って持ってこいやっ!! ねぇちゃん、王女のお気に入りなんだろぉがっ!!」
酔っ払いたちはどう見ても貧民街の住人のような身なりなのに、何故か私の事情に精通している。
(……もしかして、何処かの貴族の回し者……?)
ヘルムフリートさんやジルさんが手を回してくれたからしばらくは大丈夫だったけど、マイグレックヒェンが手に入らないことに痺れを切らした何処ぞの貴族が強行突破に出たのかもしれない。
「お断りします! 無理なものは無理ですからっ!!」
「なんだとぉっ?! 俺らがお願いしてやってるのによぉ! いい度胸じゃねぇかっ?!」
私はこんな時なのに、どこの世界の酔っぱらいやチンピラも似たような台詞を言うんだな、と暢気に思う。
「おらっ!! さっさと金だせやゴラァアっ!!」
怒り狂った酔っぱらいの一人が、私に向かって手を伸ばしてくる。
「……っ?!」
私に酔っ払いの手が触れる直前、”ドドォン!! バチバチバチィッ!!”という轟音が周りに響き渡った。
恐る恐る目を開けてみると、私に触れようとした酔っ払いの身体が、ところどころ焼き焦げ煙を上げている。まるで雷に打たれたかのようだ。
「お、おいっ!! 一人やられたぞっ!!」
「うわぁっ?! な、何だこの女っ?!」
ヘルムフリートさんが施した術式は雷属性の攻撃魔法だったらしい。
「ま、魔法を使いやがったのかっ?! ただの花屋じゃねぇのかよっ!!」
「怯むなっ!! 一斉にかかれっ!!」
酔っ払いたちが同時に私に襲いかかってくる。私は避けようとするけれど、囲まれていたせいで逃げ道が見つからない。
「オラァッ!! 大人しくし……っ?! ぎゃぁあああっ!!!」
私の髪の毛を掴もうとした酔っ払いの腕が、髪留めに付与された炎属性の魔法で燃え上がる。
「な、今度は火の魔法……っっ!! ぐわぁああああっ!!」
燃え上がる炎に驚いていた酔っ払いは、氷で出来た棘に身体を串刺しにされている。
そして他の酔っぱらいも、風の魔法で切り刻まれ、石の礫に全身強打され、次々と倒れていった。
「……っ!! アンちゃんっ!!」
──あまりのことに驚いて、放心状態だった私の名前を誰かが呼ぶ声がする。
「……あ、あれ……? ヴェルナー、さん……?」
気がつけば目の前にはヴェルナーさんがいて、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「良かった……っ! アンちゃんが無事で……!」
ものすごく心配してくれたのだろう、我に返った私を見たヴェルナーさんが安堵のため息を漏らす。
「……あ、すみません……! なんだか驚いてしまって……」
「多分魔力酔いだろうね。強力な魔法の余波を間近で受けて、身体がびっくりしたんだと思う」
確かに、ヘルムフリートさんが施してくれたという魔法はどれも強力だった。
しかも様々な属性の魔法が発動したこともあり、普通であれば気絶するほどの魔力を一斉に浴びたことで、一瞬放心状態になってしまったらしい。
「とにかく一旦お店に戻ろう。歩けなかったら俺が運んであげるよ」
「……っ?! い、いえっ! 大丈夫ですっ! 歩けますっ!」
ぼんやりとしていた私は、ヴェルナーさんの言葉に正気に戻る。
「はは、残念」
ヴェルナーさんはそう言うけれど、運んで貰うなんてとんでもない。街の人に見られたらあっという間に噂になってしまう。
「大丈夫ですかっ?!」
ヴェルナーさんと話していると、通報を受けたのだろう、衛兵さんたちがやって来た。そして倒れている酔っぱらいたちの惨状を見て顔が青くなっている。
ヴェルナーさんが衛兵さんたちに指示を出し、酔っぱらいたちは衛兵さんたちに拘束され運ばれていった。
命に別状は無さそうなので、これから拘留所で手当を受けた後、尋問を受けるのだろう。
私は彼らに指示した黒幕の正体がわかればいいな、と思う。
一波乱あったものの、お店に戻った私はヴェルナーさんにさっき起こった出来事を説明した。そして私を守ってくれた髪留めのことも。
「ええっ?! 団長と師団長が?! アンちゃんにその髪留めをっ?!」
ヴェルナーさんはジルさんとヘルムフリートさんがこの店の常連だと知り、何故かショックを受けている。
「うわ~~! 知らなかった……っ!! マジか……団長が……っ」
「すみません……てっきりご存知だと思っていました」
「……いや、アンちゃんは何も悪くないよ……。ああ、でもそっか~~! そう言うことか~~!! 気づけよ俺……っ!!」
何やら考えていたヴェルナーさんが、何かに気付いたのか、更に思い悩んでいると……。
「アンっ!! 無事かっ?!」
店のドアベルが鳴ったと思ったら、ジルさんが慌てた様子で店に飛び込んできた。
「アレアレ! 噂の白い花! アレ、俺にもくれよぉ! すっげー高く売れるんだろ?」
私は酔っ払いたちの台詞にピンときた。
どうやらこの人達の目的は初めから私だったらしい。
「いえ、あの花は王家が特別に用意した花です。そう簡単に手に入るものじゃありません」
「うるせぇっ!! だったら王家に掛け合って持ってこいやっ!! ねぇちゃん、王女のお気に入りなんだろぉがっ!!」
酔っ払いたちはどう見ても貧民街の住人のような身なりなのに、何故か私の事情に精通している。
(……もしかして、何処かの貴族の回し者……?)
ヘルムフリートさんやジルさんが手を回してくれたからしばらくは大丈夫だったけど、マイグレックヒェンが手に入らないことに痺れを切らした何処ぞの貴族が強行突破に出たのかもしれない。
「お断りします! 無理なものは無理ですからっ!!」
「なんだとぉっ?! 俺らがお願いしてやってるのによぉ! いい度胸じゃねぇかっ?!」
私はこんな時なのに、どこの世界の酔っぱらいやチンピラも似たような台詞を言うんだな、と暢気に思う。
「おらっ!! さっさと金だせやゴラァアっ!!」
怒り狂った酔っぱらいの一人が、私に向かって手を伸ばしてくる。
「……っ?!」
私に酔っ払いの手が触れる直前、”ドドォン!! バチバチバチィッ!!”という轟音が周りに響き渡った。
恐る恐る目を開けてみると、私に触れようとした酔っ払いの身体が、ところどころ焼き焦げ煙を上げている。まるで雷に打たれたかのようだ。
「お、おいっ!! 一人やられたぞっ!!」
「うわぁっ?! な、何だこの女っ?!」
ヘルムフリートさんが施した術式は雷属性の攻撃魔法だったらしい。
「ま、魔法を使いやがったのかっ?! ただの花屋じゃねぇのかよっ!!」
「怯むなっ!! 一斉にかかれっ!!」
酔っ払いたちが同時に私に襲いかかってくる。私は避けようとするけれど、囲まれていたせいで逃げ道が見つからない。
「オラァッ!! 大人しくし……っ?! ぎゃぁあああっ!!!」
私の髪の毛を掴もうとした酔っ払いの腕が、髪留めに付与された炎属性の魔法で燃え上がる。
「な、今度は火の魔法……っっ!! ぐわぁああああっ!!」
燃え上がる炎に驚いていた酔っ払いは、氷で出来た棘に身体を串刺しにされている。
そして他の酔っぱらいも、風の魔法で切り刻まれ、石の礫に全身強打され、次々と倒れていった。
「……っ!! アンちゃんっ!!」
──あまりのことに驚いて、放心状態だった私の名前を誰かが呼ぶ声がする。
「……あ、あれ……? ヴェルナー、さん……?」
気がつけば目の前にはヴェルナーさんがいて、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「良かった……っ! アンちゃんが無事で……!」
ものすごく心配してくれたのだろう、我に返った私を見たヴェルナーさんが安堵のため息を漏らす。
「……あ、すみません……! なんだか驚いてしまって……」
「多分魔力酔いだろうね。強力な魔法の余波を間近で受けて、身体がびっくりしたんだと思う」
確かに、ヘルムフリートさんが施してくれたという魔法はどれも強力だった。
しかも様々な属性の魔法が発動したこともあり、普通であれば気絶するほどの魔力を一斉に浴びたことで、一瞬放心状態になってしまったらしい。
「とにかく一旦お店に戻ろう。歩けなかったら俺が運んであげるよ」
「……っ?! い、いえっ! 大丈夫ですっ! 歩けますっ!」
ぼんやりとしていた私は、ヴェルナーさんの言葉に正気に戻る。
「はは、残念」
ヴェルナーさんはそう言うけれど、運んで貰うなんてとんでもない。街の人に見られたらあっという間に噂になってしまう。
「大丈夫ですかっ?!」
ヴェルナーさんと話していると、通報を受けたのだろう、衛兵さんたちがやって来た。そして倒れている酔っぱらいたちの惨状を見て顔が青くなっている。
ヴェルナーさんが衛兵さんたちに指示を出し、酔っぱらいたちは衛兵さんたちに拘束され運ばれていった。
命に別状は無さそうなので、これから拘留所で手当を受けた後、尋問を受けるのだろう。
私は彼らに指示した黒幕の正体がわかればいいな、と思う。
一波乱あったものの、お店に戻った私はヴェルナーさんにさっき起こった出来事を説明した。そして私を守ってくれた髪留めのことも。
「ええっ?! 団長と師団長が?! アンちゃんにその髪留めをっ?!」
ヴェルナーさんはジルさんとヘルムフリートさんがこの店の常連だと知り、何故かショックを受けている。
「うわ~~! 知らなかった……っ!! マジか……団長が……っ」
「すみません……てっきりご存知だと思っていました」
「……いや、アンちゃんは何も悪くないよ……。ああ、でもそっか~~! そう言うことか~~!! 気づけよ俺……っ!!」
何やら考えていたヴェルナーさんが、何かに気付いたのか、更に思い悩んでいると……。
「アンっ!! 無事かっ?!」
店のドアベルが鳴ったと思ったら、ジルさんが慌てた様子で店に飛び込んできた。
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