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第16話 ②
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「そうなんだよ。今日は久しぶりの非番なんだ」
(なるほど。久しぶりのお休みだから朝早くデートなんだ。なかなかのラブラブっぷりだなぁ)
「今騎士団の方は忙しいのですか? お疲れのように見えますけど……」
「え……そう見えちゃう? 目聡いなぁ。アンちゃんにはいつも格好良い姿を見せたかったのに」
「ええ……。今からデートに行く人がそんな事を言っちゃ駄目ですよ」
「デート? 誰が?」
「え? 今から花束を持ってデートに行かれるんじゃ……?」
「違う違う! 今日は妹の誕生日なんだ! だからお祝いに花束を贈ろうと思ってたんだけど……。もしかして今までもそう思ってた?」
「あ……はい。ずっと彼女さんへの贈り物かと……」
「うわ~~! そっか……! 普通はそう思うのか……。俺、姉弟が多くてさ。姉ちゃん達の誕生日祝いに花束をお願いしていたんだよ」
「えっ……! そうだったんですか……? だからいつも雰囲気が違う花束を……?」
「そうなんだ。うちって姉弟でもそれぞれタイプが違うんだよね」
私はヴェルナーさんから聞いた事実に衝撃を受ける。
(まさかずっと勘違いしていたなんて……!)
複数の彼女がいると思っていたヴェルナーさんは、実は姉弟思いの優しい人だった。
私は勝手な思い込みで彼を不誠実な人だと思っていた自分を、すごく情けなくて恥ずかしく思う。
「す、すみません……! 本当にすみません……! 私、勝手に勘違いしていました! ヴェルナーさん格好良いから、彼女さんもたくさんいるのかなって……!」
「えっ?! か、格好良い? ホント? アンちゃんがそう思ってくれるなら嬉しいな!」
「嘘じゃないです! お世辞でそんなことは言いません!」
実際、ヴェルナーさんの顔は整っているし、格好良いと思う。しかも老若男女憧れの騎士団員だし、かなりモテるのではないだろうか。
「あっ! そうだ! 妹さんのお誕生日なんですよね? 花束はどうされますか?」
すっかり本題を忘れかけていたけれど、ヴェルナーさんは妹さんの花束を買いに来てくれたのだ。勘違いのお詫びも兼ねて、とびきり素敵な花束を作ろうと思う。
「あ、そうだね。えっと、じゃあ可愛い感じでお願いしようかな」
「はい! 少々お待ち下さいね」
私は八重咲きのトゥルペ、大輪のローゼとクリュザンテーメ、ガーベラにブプレリウムとヴィッケなど、お店に並んでいる花の中から厳選して花束を作る。
可愛い色合いながらも高級感が漂う、華やかな花束だ。
「うわぁ! すごく可愛いね! これならフィーネも喜ぶよ! アンちゃん有難う!」
私の渾身の花束をヴェルナーさんはとても喜んでくれた。妹さんも喜んでくれたら、と思ったところでふとあることを思いつく。
「気に入って貰えて嬉しいです。あの、ヴェルナーさんは今少しだけお時間ありますか?」
「え? うん、そんなに急がなくても大丈夫だけど?」
「じゃあ、すみませんが少しお待ちいただけますか?」
私はヴェルナーさんが「え、いいけど……?」と、了承すると同時にキッチンへと向かい、焼いたプレッツヒェンを数個袋に入れる。
そしてリボンを掛けて可愛くラッピングすると、急いでお店に戻った。
「すみません、これ! さっき焼いたプレッツヒェンなんですけど、良かったらフィーネさんと一緒に召し上がって下さい」
プレッツヒェンが入った袋を差し出すと、ヴェルナーさんはとても嬉しそうに笑う。
「えっ! いいの!? アンちゃん有難う! もしかしてこれ手作り?」
「はい、さっき作ったところなんです。疲れが取れるクラテールのローズマリンが入っていますから、ヴェルナーさんにもぴったりかと思って」
「……すごく嬉しい。フィーネと分けるのが勿体ないよ」
「ふふっ、独り占めは駄目ですよ。ちゃんと二人で食べてくださいね」
思わず笑みが溢れてしまった私を見たヴェルナーさんが、驚きの表情を浮かべている。そして「アンちゃん……あのさ……」と言いかけたところに、お客さんが入ってきた。
「おう、アンちゃんおはようさん! お、先客か?」
「あ、ロルフさんおはようございます! 少々お待ち下さいね! ヴェルナーさん、すみません。今何か言い掛けてましたよね?」
話の続きを聞こうと思ったけれど、ヴェルナーさんは「気にしないで! プレッツヒェン有難う! また来るから!」と言って慌ててお店から出て行ってしまった。
……大丈夫だとは言っていたけれど、やっぱり時間が無かったのかもしれない。
ヴェルナーさんに悪いことをしたなぁと反省しつつ、私は仕事を頑張るのだった。
* * * * * *
❀名前解説❀(復習も兼ねてます)
クラテール→ハーブ
ローズマリン→ローズマリー
ハーゲブッテ→ローズヒップ
イングヴェア→生姜
ホーニッヒ→はちみつ
クロイターティ→ハーブティー
トゥルペ→チューリップ
ローゼ→バラ
クリュザンテーメ→菊
ヴィッケ→スイートピー
(なるほど。久しぶりのお休みだから朝早くデートなんだ。なかなかのラブラブっぷりだなぁ)
「今騎士団の方は忙しいのですか? お疲れのように見えますけど……」
「え……そう見えちゃう? 目聡いなぁ。アンちゃんにはいつも格好良い姿を見せたかったのに」
「ええ……。今からデートに行く人がそんな事を言っちゃ駄目ですよ」
「デート? 誰が?」
「え? 今から花束を持ってデートに行かれるんじゃ……?」
「違う違う! 今日は妹の誕生日なんだ! だからお祝いに花束を贈ろうと思ってたんだけど……。もしかして今までもそう思ってた?」
「あ……はい。ずっと彼女さんへの贈り物かと……」
「うわ~~! そっか……! 普通はそう思うのか……。俺、姉弟が多くてさ。姉ちゃん達の誕生日祝いに花束をお願いしていたんだよ」
「えっ……! そうだったんですか……? だからいつも雰囲気が違う花束を……?」
「そうなんだ。うちって姉弟でもそれぞれタイプが違うんだよね」
私はヴェルナーさんから聞いた事実に衝撃を受ける。
(まさかずっと勘違いしていたなんて……!)
複数の彼女がいると思っていたヴェルナーさんは、実は姉弟思いの優しい人だった。
私は勝手な思い込みで彼を不誠実な人だと思っていた自分を、すごく情けなくて恥ずかしく思う。
「す、すみません……! 本当にすみません……! 私、勝手に勘違いしていました! ヴェルナーさん格好良いから、彼女さんもたくさんいるのかなって……!」
「えっ?! か、格好良い? ホント? アンちゃんがそう思ってくれるなら嬉しいな!」
「嘘じゃないです! お世辞でそんなことは言いません!」
実際、ヴェルナーさんの顔は整っているし、格好良いと思う。しかも老若男女憧れの騎士団員だし、かなりモテるのではないだろうか。
「あっ! そうだ! 妹さんのお誕生日なんですよね? 花束はどうされますか?」
すっかり本題を忘れかけていたけれど、ヴェルナーさんは妹さんの花束を買いに来てくれたのだ。勘違いのお詫びも兼ねて、とびきり素敵な花束を作ろうと思う。
「あ、そうだね。えっと、じゃあ可愛い感じでお願いしようかな」
「はい! 少々お待ち下さいね」
私は八重咲きのトゥルペ、大輪のローゼとクリュザンテーメ、ガーベラにブプレリウムとヴィッケなど、お店に並んでいる花の中から厳選して花束を作る。
可愛い色合いながらも高級感が漂う、華やかな花束だ。
「うわぁ! すごく可愛いね! これならフィーネも喜ぶよ! アンちゃん有難う!」
私の渾身の花束をヴェルナーさんはとても喜んでくれた。妹さんも喜んでくれたら、と思ったところでふとあることを思いつく。
「気に入って貰えて嬉しいです。あの、ヴェルナーさんは今少しだけお時間ありますか?」
「え? うん、そんなに急がなくても大丈夫だけど?」
「じゃあ、すみませんが少しお待ちいただけますか?」
私はヴェルナーさんが「え、いいけど……?」と、了承すると同時にキッチンへと向かい、焼いたプレッツヒェンを数個袋に入れる。
そしてリボンを掛けて可愛くラッピングすると、急いでお店に戻った。
「すみません、これ! さっき焼いたプレッツヒェンなんですけど、良かったらフィーネさんと一緒に召し上がって下さい」
プレッツヒェンが入った袋を差し出すと、ヴェルナーさんはとても嬉しそうに笑う。
「えっ! いいの!? アンちゃん有難う! もしかしてこれ手作り?」
「はい、さっき作ったところなんです。疲れが取れるクラテールのローズマリンが入っていますから、ヴェルナーさんにもぴったりかと思って」
「……すごく嬉しい。フィーネと分けるのが勿体ないよ」
「ふふっ、独り占めは駄目ですよ。ちゃんと二人で食べてくださいね」
思わず笑みが溢れてしまった私を見たヴェルナーさんが、驚きの表情を浮かべている。そして「アンちゃん……あのさ……」と言いかけたところに、お客さんが入ってきた。
「おう、アンちゃんおはようさん! お、先客か?」
「あ、ロルフさんおはようございます! 少々お待ち下さいね! ヴェルナーさん、すみません。今何か言い掛けてましたよね?」
話の続きを聞こうと思ったけれど、ヴェルナーさんは「気にしないで! プレッツヒェン有難う! また来るから!」と言って慌ててお店から出て行ってしまった。
……大丈夫だとは言っていたけれど、やっぱり時間が無かったのかもしれない。
ヴェルナーさんに悪いことをしたなぁと反省しつつ、私は仕事を頑張るのだった。
* * * * * *
❀名前解説❀(復習も兼ねてます)
クラテール→ハーブ
ローズマリン→ローズマリー
ハーゲブッテ→ローズヒップ
イングヴェア→生姜
ホーニッヒ→はちみつ
クロイターティ→ハーブティー
トゥルペ→チューリップ
ローゼ→バラ
クリュザンテーメ→菊
ヴィッケ→スイートピー
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