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月の光の下で2
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《元々上級精霊はここに四人いたのだよ。だけどあの子はエーレンフリートと共にいることを選んだんだ》
まるでティナの心の中を読み取ったかのように、ルーアシェイアが教えてくれた。
三人の精霊が人の形を象っているのも、上位の精霊だからだそうだ。
《其方のおかげで私の力が戻ったからな。これからは精霊たちも力を取り戻し成長していくだろう》
「本当ですか?! 良かったです……!」
精霊たちが幼かったのは、その存在が消えないように、成長を止め現状維持にリソースを割り振っていたからだ、とルーアシェイアが言う。
だけどこれからは憂なく、のびのびと成長していけるだろう。
「ティナ」
微笑ましく精霊たちを眺めていたティナのもとに、トールがやって来た。
「あ、トール……えっと……っ、さっきはごめんね」
改めてトールと対面したティナは、さっきまで泣きじゃくってた自分を思い出し、恥ずかしくなる。
「ううん。俺はティナの気持ちがわかって嬉しかったし、ティナは泣き顔も可愛いなぁって思っていたよ」
「かっ! かわ……っ!!」
羞恥心で赤くなっていた顔が、トールの一言でさらに真っ赤になった。
トールと久しぶりにしたこんなやりとりに、ティナはモルガン一家と旅をしていた頃に戻ったような気分になる。
「……トール、あのね。私、ルーアシェイア様に月下草の種を咲かせる方法を教えてもらったんだ」
「えっ?! 本当? それはすごい! 良かったね、ティナ!」
ティナの話を聞いたトールは、自分のことのように喜んでくれた。
「うん……でも、咲かせることが出来る場所の条件が難しいんだよね……。トールは清浄で聖気に満ちている場所って知ってる……?」
ティナはルーアシェイアから教えられた条件をトールに伝えた。それに栽培場所はトールに聞いた方が良いと言ったのもルーアシェイアだ。
それはきっと何かしらの理由があるのだと、ティナは思っている。
「……なるほどね。ちなみにティナは希望する場所があるの?」
「えっ? えっと、この森の近くの街の外れとか良いと思っているけど……。そんな場所ないよね?」
「そうだなぁ。場所はともかく、その条件で考えると神殿が当てはまるんじゃないかな、って思うんだけど」
「──あ!」
清浄で聖気が溢れるような地は、人の手が入っていない秘境のような場所だとティナは思い込んでいた。しかしよく考えてみると、トールが言うように神殿なら月下草の栽培に適していることに気がついたのだ。
「た、確かに……! いや、でも神殿は……っ」
確かに神殿なら月下草の栽培にうってつけかもしれない。
だけどティナは神殿と関わりたくないと今だに思っている。だから無意識に候補から神殿を排除していたのだろう。
「ごめん、ティナにそんな顔させるつもりはなかったんだ。神殿じゃなくても育つ場所はあるから大丈夫だよ。意地悪を言ってごめんね?」
「ほ、本当……? 神殿以外にもあるの?」
「うん、もちろん。それはティナ──君がいる場所だよ」
「え? それってどう言う意味?」
ティナはトールが言った答えの意味がわからなかった。またトールが意地悪を言っているのかとも思ったけれど、トールの表情を見るに、本気でそう思っているようだ。
「そのままの意味だよ。ティナがいる場所ならどこでも月下草を咲かせることが出来るんだ。例えばそう……小さい植木鉢でも王宮の庭園でも、それこそ冒険者ギルドのギルド長室でも、どこでもね」
「え、嘘……っ」
「嘘じゃないよ。ティナは瘴気を浄化できるだろう? それに神聖力を使って結界も作れる。それって、月下草の栽培条件にぴったり当てはまるんじゃないかな?」
「──っ!?」
ティナはトールの言葉に絶句する。
確かに、トールの言う通りティナが神聖力で浄化した後結界を張れば、ティナが許可した者しか結界の中に入ることは出来ないし、瘴気に侵されることなく清浄な空間が維持されるだろう。
まるでティナの心の中を読み取ったかのように、ルーアシェイアが教えてくれた。
三人の精霊が人の形を象っているのも、上位の精霊だからだそうだ。
《其方のおかげで私の力が戻ったからな。これからは精霊たちも力を取り戻し成長していくだろう》
「本当ですか?! 良かったです……!」
精霊たちが幼かったのは、その存在が消えないように、成長を止め現状維持にリソースを割り振っていたからだ、とルーアシェイアが言う。
だけどこれからは憂なく、のびのびと成長していけるだろう。
「ティナ」
微笑ましく精霊たちを眺めていたティナのもとに、トールがやって来た。
「あ、トール……えっと……っ、さっきはごめんね」
改めてトールと対面したティナは、さっきまで泣きじゃくってた自分を思い出し、恥ずかしくなる。
「ううん。俺はティナの気持ちがわかって嬉しかったし、ティナは泣き顔も可愛いなぁって思っていたよ」
「かっ! かわ……っ!!」
羞恥心で赤くなっていた顔が、トールの一言でさらに真っ赤になった。
トールと久しぶりにしたこんなやりとりに、ティナはモルガン一家と旅をしていた頃に戻ったような気分になる。
「……トール、あのね。私、ルーアシェイア様に月下草の種を咲かせる方法を教えてもらったんだ」
「えっ?! 本当? それはすごい! 良かったね、ティナ!」
ティナの話を聞いたトールは、自分のことのように喜んでくれた。
「うん……でも、咲かせることが出来る場所の条件が難しいんだよね……。トールは清浄で聖気に満ちている場所って知ってる……?」
ティナはルーアシェイアから教えられた条件をトールに伝えた。それに栽培場所はトールに聞いた方が良いと言ったのもルーアシェイアだ。
それはきっと何かしらの理由があるのだと、ティナは思っている。
「……なるほどね。ちなみにティナは希望する場所があるの?」
「えっ? えっと、この森の近くの街の外れとか良いと思っているけど……。そんな場所ないよね?」
「そうだなぁ。場所はともかく、その条件で考えると神殿が当てはまるんじゃないかな、って思うんだけど」
「──あ!」
清浄で聖気が溢れるような地は、人の手が入っていない秘境のような場所だとティナは思い込んでいた。しかしよく考えてみると、トールが言うように神殿なら月下草の栽培に適していることに気がついたのだ。
「た、確かに……! いや、でも神殿は……っ」
確かに神殿なら月下草の栽培にうってつけかもしれない。
だけどティナは神殿と関わりたくないと今だに思っている。だから無意識に候補から神殿を排除していたのだろう。
「ごめん、ティナにそんな顔させるつもりはなかったんだ。神殿じゃなくても育つ場所はあるから大丈夫だよ。意地悪を言ってごめんね?」
「ほ、本当……? 神殿以外にもあるの?」
「うん、もちろん。それはティナ──君がいる場所だよ」
「え? それってどう言う意味?」
ティナはトールが言った答えの意味がわからなかった。またトールが意地悪を言っているのかとも思ったけれど、トールの表情を見るに、本気でそう思っているようだ。
「そのままの意味だよ。ティナがいる場所ならどこでも月下草を咲かせることが出来るんだ。例えばそう……小さい植木鉢でも王宮の庭園でも、それこそ冒険者ギルドのギルド長室でも、どこでもね」
「え、嘘……っ」
「嘘じゃないよ。ティナは瘴気を浄化できるだろう? それに神聖力を使って結界も作れる。それって、月下草の栽培条件にぴったり当てはまるんじゃないかな?」
「──っ!?」
ティナはトールの言葉に絶句する。
確かに、トールの言う通りティナが神聖力で浄化した後結界を張れば、ティナが許可した者しか結界の中に入ることは出来ないし、瘴気に侵されることなく清浄な空間が維持されるだろう。
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