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月の光の下で1

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 満月の光が降り注ぐ中、月下草を咲かすことに成功したティナの前に、彼女を追いかけて来たトールが現れた。

 そうして、お互いの想いを伝え合って落ち着いてみると、ずっと二人を見守っていたルーアシェイアと精霊たちの視線に気がついた。

「うぁっ! ル、ルーアシェイア様……っ! す、すみません……! その……っ!」

 ルーアシェイアたちの存在をすっかり忘れ、未だ抱き合ったままだったティナは、慌ててトールの腕から離れた。

《うむうむ……。人間の愛情とは素晴らしいな。久しぶりにイイものを見せて貰ったぞ》

「えぇっ! い、良いもの……っ!?」

 ティナは恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまう。精霊と人間とでは感じ方に違いがあるだろうが、それでも恥ずかしいのだ。
 そんなティナとは対照的に、トールはいつも通り平然としている。そしてルーアシェイアの前に出ると、深々と頭を下げて挨拶した。

「初めまして、精霊王ルーアシェイア様。俺はトールヴァルド・ビョルク・クロンクヴィストと申します」

《ああ、久しい気配を感じるな。……よく顔を見せてくれないか》

「はい」

 トールの了承を得たルーアシェイアは、彼の顔を覗き込み、じっとその瞳を見つめている。

《エーレンフリートと同じ金色の瞳だな。姿形は違えども、確かに彼の血脈だ》

 トールにエーレンフリートの面影を見たルーアシェイアは、何かを思い出すように、懐かしさを噛み締めるように微笑んだ。

 トールの祖先であるエーレンフリートとルーアシェイアがどのように絆を深めていったのか、詳しいことはわかっていない。
 ただ、エーレンフリートを気に入ったルーアシェイアが彼に祝福──金眼を与えたとだけ、記述が残されている。

 だけどエーレンフリートはルーアシェイアにとって、本に書かれている以上に特別な存在だったのではないか、とティナは思う。

 それはきっと、誰も知ることが出来ない、二人だけの物語なのだろう。

 ルーアシェイアとトールの邂逅を見守っていたティナは、トールのそばにいる精霊に気がついた。
 その精霊は小さい女の子の姿の精霊で、青い髪色をしている。
 初めて見る精霊だったが、よく話す三人の精霊と同じ雰囲気を持っていた。

(……あれ? もしかして……)

 以前、アウルムはトールのそばに精霊がいると言っていた。きっと、あの青い精霊がそうなのだろう。

 ティナが色々推測していると、青い精霊とばちっと目が合った。
 すると、青い精霊が嬉しそうにティナへと突進し、頭にしがみついてきた。

《ティナー! 私がわかる? ずっとティナたちと一緒にいたんだよ!!》

「うわっ! あ、うん! アウルムから聞いたよ。トールと仲良しの精霊さんだよね?」

《そうそう! トールとは昔からの付き合いで……あ! アウルム! 久しぶりー!》

 青い精霊はティナに飛びついた後、今度はアウルムに向かって突進した。
 三人の精霊と同じように、青い精霊もずっとアウルムをモフりたかったのかもしれない。

《おや、あの子は……ああ、エーレンフリートの守護精霊だな》

 ルーアシェイアがアウルムと戯れていた青い精霊を見て呟いた。

《まあ! 久しぶりね! 何年振りかしら?》

《あらあら! 懐かしい気配がすると思ったらあなただったのね!》

《無事帰って来たのね! おかえりなさい!》

 三人の精霊たちも青い精霊に気づき、久しぶりの再会を喜んでいる。
 本来は四人一緒にいたのだろう、揃った姿を見ると妙な安定感があった。
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