201 / 206
月の光の下で1
しおりを挟む
満月の光が降り注ぐ中、月下草を咲かすことに成功したティナの前に、彼女を追いかけて来たトールが現れた。
そうして、お互いの想いを伝え合って落ち着いてみると、ずっと二人を見守っていたルーアシェイアと精霊たちの視線に気がついた。
「うぁっ! ル、ルーアシェイア様……っ! す、すみません……! その……っ!」
ルーアシェイアたちの存在をすっかり忘れ、未だ抱き合ったままだったティナは、慌ててトールの腕から離れた。
《うむうむ……。人間の愛情とは素晴らしいな。久しぶりにイイものを見せて貰ったぞ》
「えぇっ! い、良いもの……っ!?」
ティナは恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまう。精霊と人間とでは感じ方に違いがあるだろうが、それでも恥ずかしいのだ。
そんなティナとは対照的に、トールはいつも通り平然としている。そしてルーアシェイアの前に出ると、深々と頭を下げて挨拶した。
「初めまして、精霊王ルーアシェイア様。俺はトールヴァルド・ビョルク・クロンクヴィストと申します」
《ああ、久しい気配を感じるな。……よく顔を見せてくれないか》
「はい」
トールの了承を得たルーアシェイアは、彼の顔を覗き込み、じっとその瞳を見つめている。
《エーレンフリートと同じ金色の瞳だな。姿形は違えども、確かに彼の血脈だ》
トールにエーレンフリートの面影を見たルーアシェイアは、何かを思い出すように、懐かしさを噛み締めるように微笑んだ。
トールの祖先であるエーレンフリートとルーアシェイアがどのように絆を深めていったのか、詳しいことはわかっていない。
ただ、エーレンフリートを気に入ったルーアシェイアが彼に祝福──金眼を与えたとだけ、記述が残されている。
だけどエーレンフリートはルーアシェイアにとって、本に書かれている以上に特別な存在だったのではないか、とティナは思う。
それはきっと、誰も知ることが出来ない、二人だけの物語なのだろう。
ルーアシェイアとトールの邂逅を見守っていたティナは、トールのそばにいる精霊に気がついた。
その精霊は小さい女の子の姿の精霊で、青い髪色をしている。
初めて見る精霊だったが、よく話す三人の精霊と同じ雰囲気を持っていた。
(……あれ? もしかして……)
以前、アウルムはトールのそばに精霊がいると言っていた。きっと、あの青い精霊がそうなのだろう。
ティナが色々推測していると、青い精霊とばちっと目が合った。
すると、青い精霊が嬉しそうにティナへと突進し、頭にしがみついてきた。
《ティナー! 私がわかる? ずっとティナたちと一緒にいたんだよ!!》
「うわっ! あ、うん! アウルムから聞いたよ。トールと仲良しの精霊さんだよね?」
《そうそう! トールとは昔からの付き合いで……あ! アウルム! 久しぶりー!》
青い精霊はティナに飛びついた後、今度はアウルムに向かって突進した。
三人の精霊と同じように、青い精霊もずっとアウルムをモフりたかったのかもしれない。
《おや、あの子は……ああ、エーレンフリートの守護精霊だな》
ルーアシェイアがアウルムと戯れていた青い精霊を見て呟いた。
《まあ! 久しぶりね! 何年振りかしら?》
《あらあら! 懐かしい気配がすると思ったらあなただったのね!》
《無事帰って来たのね! おかえりなさい!》
三人の精霊たちも青い精霊に気づき、久しぶりの再会を喜んでいる。
本来は四人一緒にいたのだろう、揃った姿を見ると妙な安定感があった。
そうして、お互いの想いを伝え合って落ち着いてみると、ずっと二人を見守っていたルーアシェイアと精霊たちの視線に気がついた。
「うぁっ! ル、ルーアシェイア様……っ! す、すみません……! その……っ!」
ルーアシェイアたちの存在をすっかり忘れ、未だ抱き合ったままだったティナは、慌ててトールの腕から離れた。
《うむうむ……。人間の愛情とは素晴らしいな。久しぶりにイイものを見せて貰ったぞ》
「えぇっ! い、良いもの……っ!?」
ティナは恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまう。精霊と人間とでは感じ方に違いがあるだろうが、それでも恥ずかしいのだ。
そんなティナとは対照的に、トールはいつも通り平然としている。そしてルーアシェイアの前に出ると、深々と頭を下げて挨拶した。
「初めまして、精霊王ルーアシェイア様。俺はトールヴァルド・ビョルク・クロンクヴィストと申します」
《ああ、久しい気配を感じるな。……よく顔を見せてくれないか》
「はい」
トールの了承を得たルーアシェイアは、彼の顔を覗き込み、じっとその瞳を見つめている。
《エーレンフリートと同じ金色の瞳だな。姿形は違えども、確かに彼の血脈だ》
トールにエーレンフリートの面影を見たルーアシェイアは、何かを思い出すように、懐かしさを噛み締めるように微笑んだ。
トールの祖先であるエーレンフリートとルーアシェイアがどのように絆を深めていったのか、詳しいことはわかっていない。
ただ、エーレンフリートを気に入ったルーアシェイアが彼に祝福──金眼を与えたとだけ、記述が残されている。
だけどエーレンフリートはルーアシェイアにとって、本に書かれている以上に特別な存在だったのではないか、とティナは思う。
それはきっと、誰も知ることが出来ない、二人だけの物語なのだろう。
ルーアシェイアとトールの邂逅を見守っていたティナは、トールのそばにいる精霊に気がついた。
その精霊は小さい女の子の姿の精霊で、青い髪色をしている。
初めて見る精霊だったが、よく話す三人の精霊と同じ雰囲気を持っていた。
(……あれ? もしかして……)
以前、アウルムはトールのそばに精霊がいると言っていた。きっと、あの青い精霊がそうなのだろう。
ティナが色々推測していると、青い精霊とばちっと目が合った。
すると、青い精霊が嬉しそうにティナへと突進し、頭にしがみついてきた。
《ティナー! 私がわかる? ずっとティナたちと一緒にいたんだよ!!》
「うわっ! あ、うん! アウルムから聞いたよ。トールと仲良しの精霊さんだよね?」
《そうそう! トールとは昔からの付き合いで……あ! アウルム! 久しぶりー!》
青い精霊はティナに飛びついた後、今度はアウルムに向かって突進した。
三人の精霊と同じように、青い精霊もずっとアウルムをモフりたかったのかもしれない。
《おや、あの子は……ああ、エーレンフリートの守護精霊だな》
ルーアシェイアがアウルムと戯れていた青い精霊を見て呟いた。
《まあ! 久しぶりね! 何年振りかしら?》
《あらあら! 懐かしい気配がすると思ったらあなただったのね!》
《無事帰って来たのね! おかえりなさい!》
三人の精霊たちも青い精霊に気づき、久しぶりの再会を喜んでいる。
本来は四人一緒にいたのだろう、揃った姿を見ると妙な安定感があった。
183
お気に入りに追加
1,923
あなたにおすすめの小説
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。
藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。
そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。
私がいなければ、あなたはおしまいです。
国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。
設定はゆるゆるです。
本編8話で完結になります。
【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました
鈴宮ソラ
ファンタジー
オラルト伯爵家に生まれたレイは、水色の髪と瞳という非凡な容姿をしていた。あまりに両親に似ていないため両親は彼女を幼い頃から不気味だと虐待しつづける。
レイは考える事をやめた。辛いだけだから、苦しいだけだから。心を閉ざしてしまった。
十数年後。法官として勤めるエメリック公爵によって伯爵の罪は暴かれた。そして公爵はレイの並外れた才能を見抜き、言うのだった。
「私の娘になってください。」
と。
養女として迎えられたレイは家族のあたたかさを知り、貴族の世界で成長していく。
前題 公爵家の養子になりました~最強の氷魔法まで授かっていたようです~
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる