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満月3
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「アウルム大丈夫? ご飯食べる?」
『…………ごはん……? 食べるー!』
ティナに抱っこされて落ち着いたのか、ご飯と聞いたアウルムの目に再び光が宿り始めた。
どうやらティナの料理を食べたいという欲望が、精霊たちのモフり攻撃で受けたダメージを回復させたようだ。
「よかった。たくさん食べてね」
ティナはお皿に料理をてんこ盛りにしてアウルムに渡した。どれもアウルムの好物ばかりだ。
『おいしいー! ティナおいしいよー!』
すっかり元通り元気になったアウルムが、ティナの料理を美味しそうに食べている。
そうしているうちに、夜はどんどん深まって、月の光も一層強くなっていく。
《あ! ルーアシェイア様だわ!》
《ルーアシェイア様がおいでになるわ!》
《久しぶりに起きられたのね!》
ルーアシェイアの気配を感じ取ったらしい精霊たちが、一斉に湖へと集まった。
湖面には大きな月が映り込んでいて、まるで二つの月が浮かんでいるように見える。
「ふわぁああ……っ!!」
湖面に映った月の光が大きくなり、どんどん輝きを増していった。以前見た時とは比べ物にならないほど光が大きくなっていく。
ティナは目の前で繰り広げられる光の乱舞に感動した。今日何度目の感動なのかわからない。
きっとこんなに深く感動したのは、ティナの人生において初めてかもしれない。
《今宵は皆、随分と楽しそうだな》
月の光が集まって、人の形を成した大精霊ルーアシェイアが、ほぼ一ヶ月ぶりに姿を現した。
前回見たぼんやりとした姿ではなく、はっきりとした美しい姿だ。
ルーアシェイアが持つ長い髪は光り輝く白金色で、瞳は宵闇を映すような深い銀灰色をしている。
ティナはルーアシェイアを見て、その美しさに胸を打たれた。
以前会った時とは比べ物にならないほどの、威圧に似た圧倒的存在感を全身に感じ、ティナの身体が無意識に震えてしまう。
その姿も、声も、何もかもが美しいのだ。
ルーアシェイアが少し動くだけで、その一コマ一コマすべての瞬間が非現実的に感じるほどに。
《ルーアシェイア様!》
《目が醒められたのですね!》
《心配していたんですよ!》
すべての精霊たちが、ルーアシェイアの目覚めに喜んでいるのが伝わってくる。
ティナも精霊たちと一緒に、ルーアシェイアの目覚めを心の底から喜んだ。
《ラーシャルード様の寵愛を受ける者──ティナよ》
「…………ふあっ?! あ、あわゎ、は、はいっ!!」
ルーアシェイアの美しい声が、自分の名前を呼んだことに、一瞬ティナは気づかなかった。ルーアシェイアが出す声の響きの美しさに、思わず聞き惚れていたのだ。
《我が眷属たちが世話になった。其方の尽力により、精霊樹も無事息を吹き返した。皆を代表して礼を言う。──有難う》
「……っ! ……っ、そ、そんな……っ!! お、恐れ多いですっ!!」
《ふふ、そう謙遜するでない。其方が精霊樹に神聖力を分け与えてくれたおかげで、私の力も回復したのだ》
「──えぇっ?!」
ルーアシェイアから意外な事実が知らされ、ティナはひどく驚いた。
《精霊樹と私は繋がっていてな。弱まっていく精霊樹の維持に、私は力の大半を使っていたのだよ》
そうしてルーアシェイアは、ティナにこれまでのことを教えてくれた。
何故、自分の力が弱まっていったのかを──。
『…………ごはん……? 食べるー!』
ティナに抱っこされて落ち着いたのか、ご飯と聞いたアウルムの目に再び光が宿り始めた。
どうやらティナの料理を食べたいという欲望が、精霊たちのモフり攻撃で受けたダメージを回復させたようだ。
「よかった。たくさん食べてね」
ティナはお皿に料理をてんこ盛りにしてアウルムに渡した。どれもアウルムの好物ばかりだ。
『おいしいー! ティナおいしいよー!』
すっかり元通り元気になったアウルムが、ティナの料理を美味しそうに食べている。
そうしているうちに、夜はどんどん深まって、月の光も一層強くなっていく。
《あ! ルーアシェイア様だわ!》
《ルーアシェイア様がおいでになるわ!》
《久しぶりに起きられたのね!》
ルーアシェイアの気配を感じ取ったらしい精霊たちが、一斉に湖へと集まった。
湖面には大きな月が映り込んでいて、まるで二つの月が浮かんでいるように見える。
「ふわぁああ……っ!!」
湖面に映った月の光が大きくなり、どんどん輝きを増していった。以前見た時とは比べ物にならないほど光が大きくなっていく。
ティナは目の前で繰り広げられる光の乱舞に感動した。今日何度目の感動なのかわからない。
きっとこんなに深く感動したのは、ティナの人生において初めてかもしれない。
《今宵は皆、随分と楽しそうだな》
月の光が集まって、人の形を成した大精霊ルーアシェイアが、ほぼ一ヶ月ぶりに姿を現した。
前回見たぼんやりとした姿ではなく、はっきりとした美しい姿だ。
ルーアシェイアが持つ長い髪は光り輝く白金色で、瞳は宵闇を映すような深い銀灰色をしている。
ティナはルーアシェイアを見て、その美しさに胸を打たれた。
以前会った時とは比べ物にならないほどの、威圧に似た圧倒的存在感を全身に感じ、ティナの身体が無意識に震えてしまう。
その姿も、声も、何もかもが美しいのだ。
ルーアシェイアが少し動くだけで、その一コマ一コマすべての瞬間が非現実的に感じるほどに。
《ルーアシェイア様!》
《目が醒められたのですね!》
《心配していたんですよ!》
すべての精霊たちが、ルーアシェイアの目覚めに喜んでいるのが伝わってくる。
ティナも精霊たちと一緒に、ルーアシェイアの目覚めを心の底から喜んだ。
《ラーシャルード様の寵愛を受ける者──ティナよ》
「…………ふあっ?! あ、あわゎ、は、はいっ!!」
ルーアシェイアの美しい声が、自分の名前を呼んだことに、一瞬ティナは気づかなかった。ルーアシェイアが出す声の響きの美しさに、思わず聞き惚れていたのだ。
《我が眷属たちが世話になった。其方の尽力により、精霊樹も無事息を吹き返した。皆を代表して礼を言う。──有難う》
「……っ! ……っ、そ、そんな……っ!! お、恐れ多いですっ!!」
《ふふ、そう謙遜するでない。其方が精霊樹に神聖力を分け与えてくれたおかげで、私の力も回復したのだ》
「──えぇっ?!」
ルーアシェイアから意外な事実が知らされ、ティナはひどく驚いた。
《精霊樹と私は繋がっていてな。弱まっていく精霊樹の維持に、私は力の大半を使っていたのだよ》
そうしてルーアシェイアは、ティナにこれまでのことを教えてくれた。
何故、自分の力が弱まっていったのかを──。
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