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ルシオラ3
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《早くティナとアウルムに会いたいわ! わたしを見たらびっくりすると思うの!》
ずっと一緒に旅をしていたものの、ティナはルシオラの存在に全く気づいていなかった。アウルムとは疎通があったものの、当時はお互い会話が出来るほどではなかった。
しかし、力を取り戻した今ならきっと、二人と仲良く出来るに違いない、とルシオラは信じて疑わない。
「そうだね。俺も早く会いたいよ」
《わたしに任せて! ティナとアウルムの気配を感じたらすぐに教えるわ!》
「うん、ありがとう。頼りにしてる」
実際、トールはルシオラをとても頼りにし、感謝していた。
しかもこれからは会話ができるから、ティナを探す効率がかなり上がるだろう。
次の日、トールは夜明けと同時に出発する。ティナに追いつくにはまだまだ時間がかかるだろうが、せめて彼女の痕跡だけでも早く見付けたかったのだ。
《あ~~……。元に戻っちゃったよ~~!》
ルシオラと会話ができるようになったものの、精霊が人間の姿になれるのは満月の日の夜だけらしく、今のルシオラの姿は光の玉に戻っている。
だから表情はわからないが、声からしてものすごく落ち込んでいることがわかる。
「不思議だね。どうして満月の夜だけなんだろう」
《ルーアシェイア様が月を司るからかもね。満月は力が一番強くなるし》
「月を司る、か。じゃあ月下草も精霊王と関係がありそうだね」
《そう思うんだけど……。その辺りは記憶が無いの……役に立てなくてごめんね……》
ルシオラはティニアの記憶を完全に受け継いでいないため、ところどころ記憶が抜け落ちていると言う。
きっと彼女は記憶があればティナを助けてあげられるのに……と思っているのだろう。
「ルシオラにはいつも助けられているよ。ヒントもたくさん教えてもらったしね。それだけで十分だよ」
《うぅ、トールぅ~~っ!》
トールに励まされたルシオラが頭に飛び乗った。もし人の姿だったなら、しがみついているように見えるだろう。
《ほんと、トールってば身内にはすっごく優しい……って、あれ?》
トールの頭上で跳ねていたルシオラの動きがピタッと止まる。
「どうした?」
さっきまで賑やかだったルシオラが黙ってしまう。何かの気配を感じたのかもしれない。
《あのね、ずっと向こうの方に魔力を感じたの》
「魔力?! もしかしてティナの?!」
《ティナの魔力かどうかは、ここからじゃ遠すぎてわからないけど……》
今いる場所から魔力を感じた場所まで、かなり距離があるという。
「方角はわかる? とりあえずその場所に行ってみよう」
《うん! こっちだよ!》
ルシオラに誘われ、トールは魔力の持ち主がいる場所へ向かう。
もしその主がティナだったら、と思うと居ても立っても居られない。
しかし、目的の場所まではずいぶん遠いらしく、一日や二日では辿り着けなさそうだ。
「ルシオラ、魔力の持ち主はまだそこにいるかな?」
《どうやら移動はしていないみたいね。ずっと同じ場所にいるみたいよ》
「そうか……」
トールは魔力の主がティナじゃないのでは、と思い始めた。ティナならそこに留まらず、移動しているはずだからだ。
しかし、もしティナではなかったとしても、この森にいること自体その人物が只者ではないことを示している。
トールはその人物が何者なのか気になってきた。
そして魔力の気配を感じて三日ほど経った頃、トールとルシオラは森の中に佇む小屋を発見する。
ずっと一緒に旅をしていたものの、ティナはルシオラの存在に全く気づいていなかった。アウルムとは疎通があったものの、当時はお互い会話が出来るほどではなかった。
しかし、力を取り戻した今ならきっと、二人と仲良く出来るに違いない、とルシオラは信じて疑わない。
「そうだね。俺も早く会いたいよ」
《わたしに任せて! ティナとアウルムの気配を感じたらすぐに教えるわ!》
「うん、ありがとう。頼りにしてる」
実際、トールはルシオラをとても頼りにし、感謝していた。
しかもこれからは会話ができるから、ティナを探す効率がかなり上がるだろう。
次の日、トールは夜明けと同時に出発する。ティナに追いつくにはまだまだ時間がかかるだろうが、せめて彼女の痕跡だけでも早く見付けたかったのだ。
《あ~~……。元に戻っちゃったよ~~!》
ルシオラと会話ができるようになったものの、精霊が人間の姿になれるのは満月の日の夜だけらしく、今のルシオラの姿は光の玉に戻っている。
だから表情はわからないが、声からしてものすごく落ち込んでいることがわかる。
「不思議だね。どうして満月の夜だけなんだろう」
《ルーアシェイア様が月を司るからかもね。満月は力が一番強くなるし》
「月を司る、か。じゃあ月下草も精霊王と関係がありそうだね」
《そう思うんだけど……。その辺りは記憶が無いの……役に立てなくてごめんね……》
ルシオラはティニアの記憶を完全に受け継いでいないため、ところどころ記憶が抜け落ちていると言う。
きっと彼女は記憶があればティナを助けてあげられるのに……と思っているのだろう。
「ルシオラにはいつも助けられているよ。ヒントもたくさん教えてもらったしね。それだけで十分だよ」
《うぅ、トールぅ~~っ!》
トールに励まされたルシオラが頭に飛び乗った。もし人の姿だったなら、しがみついているように見えるだろう。
《ほんと、トールってば身内にはすっごく優しい……って、あれ?》
トールの頭上で跳ねていたルシオラの動きがピタッと止まる。
「どうした?」
さっきまで賑やかだったルシオラが黙ってしまう。何かの気配を感じたのかもしれない。
《あのね、ずっと向こうの方に魔力を感じたの》
「魔力?! もしかしてティナの?!」
《ティナの魔力かどうかは、ここからじゃ遠すぎてわからないけど……》
今いる場所から魔力を感じた場所まで、かなり距離があるという。
「方角はわかる? とりあえずその場所に行ってみよう」
《うん! こっちだよ!》
ルシオラに誘われ、トールは魔力の持ち主がいる場所へ向かう。
もしその主がティナだったら、と思うと居ても立っても居られない。
しかし、目的の場所まではずいぶん遠いらしく、一日や二日では辿り着けなさそうだ。
「ルシオラ、魔力の持ち主はまだそこにいるかな?」
《どうやら移動はしていないみたいね。ずっと同じ場所にいるみたいよ》
「そうか……」
トールは魔力の主がティナじゃないのでは、と思い始めた。ティナならそこに留まらず、移動しているはずだからだ。
しかし、もしティナではなかったとしても、この森にいること自体その人物が只者ではないことを示している。
トールはその人物が何者なのか気になってきた。
そして魔力の気配を感じて三日ほど経った頃、トールとルシオラは森の中に佇む小屋を発見する。
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