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遺恨2

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 その人物はトールヴァルドのことを忌み嫌っており、彼を殺せるのなら、と元当主に協力を申し出てくれたのだ。

 それから元当主はクロンクヴィスト王国の情報を渡す代わりに、その人物から庇護を受けることが出来た。

 そしてトールヴァルドが学院に留学している間、元当主は力を貯め、協力者を募り、地盤を築きながら虎視眈々とトールヴァルドを殺す機会を窺っていたのである。

 予定よりは早かったが、トールヴァルドが国に戻り、予想外にも自身の孫であるフロレンツに王太子の座を譲った後、護衛もつけず一人で王宮を飛び出したと聞いた元当主は、今がチャンスだと判断した。

 協力者が用意してくれた暗殺者を引き連れ、今度こそ確実に金色の瞳の化け物を殺してやるのだと、転移魔法で先回りしてトールヴァルドを迎え討つつもりであった。

 元当主自身、念願であったトールヴァルド暗殺が、後少しで叶うと信じて疑わなかった、それなのに──。

「ぐっ……!! くそぉっ!! 許さん!! 許さんぞぉっ!!」

 トールヴァルドが魔法に長けているのは理解していたが、元当主は本当の意味で理解していなかった。まさか最上級の氷魔法まで使えるとは思いもしなかったのだ。

 そんな元当主は今、身動き出来ないように拘束され、地に転がされトールヴァルドに見下ろされている。

「うーん、誰の協力を得ているのか教えて欲しいんですけど……無理そうですね」

「当たり前だっ!! 儂は絶対に喋らんぞっ!!」

 元当主は実際、協力者の名前を知らなかった。
 会う時はいつも顔を隠していたから、男ということしかわからないのだ。

「その協力者はよほど俺のことが気に食わないんですね。ちなみに俺のことをなんて言っていましたか?」

「そうだ!! お前を殺してやりたいほど憎んでおったわ!! その金色の目が忌々しいんだと!! まるで獣のようで悍ましいともな!!」

「……なるほど。貴重な情報を有難うございました」

「は? え? ぐぎゃっ」

 トールは元当主にお礼を言うと、首にツヴァイハンダーを突き立てた。
 元当主の首から血が溢れ出て、凍って真っ白な地面を真っ赤に染めていく。

 トールは死体に構わず、馬に跨って再びフラウエンロープへと向かう。
 死体をわざと放置したのも、元当主の背後にいる人物への警告だ。

 元当主から得た情報でトールは元当主の協力者──いや、協力する組織に当たりをつけた。

「──アコンニエミ聖国、か……」

 トールがぽつりと呟いた。

 アコンニエミ聖国は、ラーシャルード教の総本山である宗教国家だ。

 ──ある意味、ティナを不幸にした原因の一つでもある。
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