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精霊の祝福2
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「で、でも……っ! 私は精霊を見たことがなくて……」
「そうさな。見たところ、嬢ちゃんはまだ万全の状態じゃないからのう。魔力の流れが不自然に澱んどるでな。長い間魔力を封じられておったんかのう?」
「……あっ!? た、確かに……!!」
ティナは聖女の証である腕輪を思い出した。
聖女になってからずっと身に付けていた腕輪は、結界を維持するために必要で、膨大な量の神聖力を常にティナから奪い続けていた。
10年以上身に付けていた腕輪が無くなった反動なのか、今のティナは魔力が安定していないのだろう。
「すごい!! ノアさんすごいです!! 何でも知っていらっしゃるんですね!!」
「ふぉっふぉっふぉ。そんなに褒められたら照れちゃうのう」
ティナの心からの賞賛を受けたノアが、嬉しそうにくねくねして照れている。
「しかし嬢ちゃんは随分魔力が多いのう。若いのに大したもんじゃ。今までよう無事じゃったのう。国の権力者に目を付けられんかったのか?」
「え、そんなに多いですかね? 確かに、しばらく神殿にいましたけど……」
神殿がティナを無理やり連れて行ったのも、その身に宿す神聖力の多さが理由だった。そう言う意味ではノアが言う通り、権力によって自由を奪われていたのかもしれない。
「あれ? でも魔力と神聖力は違うものじゃないんですか?」
この世界の人間は差はあれど皆、魔力を持って生まれてくる。
しかし神に選ばれた者は魔力ではなく神聖力を与えられる、とティナは神殿で教えられたのだ。
──神聖力を持つ者は特別な存在である。だからラーシャルード神に感謝しながら、日々その力を神殿のため、人々のために捧げなければならない──。
ティナはずっとそう教えられてきたのだが……。
「いんや? 魔力も神聖力も元は同じものじゃて。ただ、大切な人を救いたいという想いが神聖力となる場合があるでな」
神聖力は決して特別な存在に与えられるものではなく、ラーシャルード神を信仰するしないに関わらず、その想い次第で誰にでも使える力になる──とノアは教えてくれた。
「嬢ちゃんはうんと小さい頃から、誰かを助けたいと思い続けておったんじゃないかのう」
ティナはノアの言葉を聞いて、両親のことを思い出す。物心ついた頃から二人は旅をしていて、常に危険に晒されていた。
二人が高ランクの冒険者であっても、怪我は日常茶飯事だったのだ。
──きっと、生まれた頃からティナはずっと、両親を守りたいと思っていたのだろう。
「…………」
ノアの言葉はどれも納得出来るものばかりで、疑問に思っていたことの説明もついた。
ティナはフレードリクから婚約破棄され、アンネマリーに聖女の称号を奪われた日を思い出す。
あの日からティナは不思議に思っていたのだ。神聖力を持たず、ただ魔力が多いだけのアンネマリーが、なぜ聖女の腕輪を外すことが出来たのか。
結局、神殿が必要としていたのは神聖力を持つ人間ではなく、より多い魔力を持つ人間だったのだ。
神聖力は神殿の威光を示すための託言──口実なのだろう。
「そうさな。見たところ、嬢ちゃんはまだ万全の状態じゃないからのう。魔力の流れが不自然に澱んどるでな。長い間魔力を封じられておったんかのう?」
「……あっ!? た、確かに……!!」
ティナは聖女の証である腕輪を思い出した。
聖女になってからずっと身に付けていた腕輪は、結界を維持するために必要で、膨大な量の神聖力を常にティナから奪い続けていた。
10年以上身に付けていた腕輪が無くなった反動なのか、今のティナは魔力が安定していないのだろう。
「すごい!! ノアさんすごいです!! 何でも知っていらっしゃるんですね!!」
「ふぉっふぉっふぉ。そんなに褒められたら照れちゃうのう」
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「しかし嬢ちゃんは随分魔力が多いのう。若いのに大したもんじゃ。今までよう無事じゃったのう。国の権力者に目を付けられんかったのか?」
「え、そんなに多いですかね? 確かに、しばらく神殿にいましたけど……」
神殿がティナを無理やり連れて行ったのも、その身に宿す神聖力の多さが理由だった。そう言う意味ではノアが言う通り、権力によって自由を奪われていたのかもしれない。
「あれ? でも魔力と神聖力は違うものじゃないんですか?」
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──神聖力を持つ者は特別な存在である。だからラーシャルード神に感謝しながら、日々その力を神殿のため、人々のために捧げなければならない──。
ティナはずっとそう教えられてきたのだが……。
「いんや? 魔力も神聖力も元は同じものじゃて。ただ、大切な人を救いたいという想いが神聖力となる場合があるでな」
神聖力は決して特別な存在に与えられるものではなく、ラーシャルード神を信仰するしないに関わらず、その想い次第で誰にでも使える力になる──とノアは教えてくれた。
「嬢ちゃんはうんと小さい頃から、誰かを助けたいと思い続けておったんじゃないかのう」
ティナはノアの言葉を聞いて、両親のことを思い出す。物心ついた頃から二人は旅をしていて、常に危険に晒されていた。
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──きっと、生まれた頃からティナはずっと、両親を守りたいと思っていたのだろう。
「…………」
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結局、神殿が必要としていたのは神聖力を持つ人間ではなく、より多い魔力を持つ人間だったのだ。
神聖力は神殿の威光を示すための託言──口実なのだろう。
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