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手掛かり1

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 お金を支払ったティナは、アウルムにブレスレット兼首輪を付けてあげた。予想通り、とてもアウルムに似合っている。

「ふふ、アウルム可愛い! よく似合ってる!」

『ほんとー?』

「ほんとほんと! 苦しくない? 大丈夫?」

『大丈夫だよー!』

「なら良かった。失くさないように気をつけようね」

『わかったー』

 ティナがアウルムに確認を取っていると、店主が驚いた様子でティナに声を掛けて来た。

「ちょ、ちょっとお嬢ちゃん!! あんた、獣魔と会話出来るのかい?」

「え、はい。そうですけど……」

 ティナがきょとん、とした様子で答えると、店主は信じられないという表情の後、呆れた声を出した。

「……ったく、只者じゃないとは思ってたけど……。 まさかねぇ……」

「えーっと……?」

 やれやれと言った店主の様子に、ティナは何かやらかしてしまったのかと心配になる。

「あんた、獣魔と会話出来るなんて人に言っちゃいけないよ! まだこの国なら大丈夫だろうけど、ラーシャルード教の息がかかってる所じゃ魔女扱いされちまうからね!」

「──えっ……」

 ティナの胸がどくん、と跳ねる。ここでラーシャルード教の名が出てくるとは思わなかった、というのもあるが、魔女扱いされるなんて初めて聞いたからだ。

「あいつらに魔女だって疑われたら最後、お嬢ちゃんは捕まって二度と外へは出てこられないよ! だから重々気をつけるんだよ! いいね?」

「は、はい……っ! 肝に銘じます……っ」

 顔を青くしながら返事をするティナに、店主は驚かせ過ぎたか、と少し可哀想に思う。

「念のためお嬢ちゃんもこれを付けておきな。獣魔とお揃いだよ。サービスさ」

 店主はティナにそう言うと、アウルムのブレスレット兼首輪と同じものをティナの前に置いた。

「えっ、でも……っ!」

「いいから持ってお行き。あんたも目立たないようにした方が良いだろう」

 ただでさえティナは人目を惹く容姿をしているのだ。それなのに珍しい獣魔まで連れていたら、あっという間に悪人に連れ去られてしまうかもしれない。

「……っ、有難うございます……っ! あの、私に出来ることはありますか? 何かお礼をしたいんですけど……!」

 最低でも小銀貨三枚するブレスレットを貰う訳にはいかないと、ティナが店主に申し出る。お金を受け取って貰えないのなら、何か店主の役に立つことをしたい、とティナは思ったのだ。

「そんなもん何もないよ……って言いたいところだけど……。そうさねぇ。じゃあ、お嬢ちゃんの話を聞かせておくれ」

「えっ! 私の話、ですか……?」

 店主の希望をティナは意外に思う。店の掃除や荷物運びを頼まれると思っていたからだ。

「ああ。この店は客があまり来なくてね。退屈しているんだよ」

 確かに、ティナたちがこの店に来て結構時間が経つが、お客さんが来る気配はない。
 並んでいる魔道具を見る限り、随分腕が良い魔道具師なのに、とティナは不思議に思う。

「私の話なんかでよければ……」

 ティナは聖女だった頃の話はせず、今は亡き両親の望みを叶えるために旅をしているのだと話した。

「ふんふん、なるほどねぇ。あんたも苦労しているんだねぇ。それでご両親の望みって何なんだい?」

「それが、月下草の群生地を見つけることなんですけど……。店主さんは場所をご存知ありませんか?」

 月下草は主に治療ポーションの材料として使われている。この店でもポーションが売られているので、ティナは店主が何か知っているかもしれない、と思ったのだ。
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