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再会2

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 優雅で気品があり、誰が見ても聖女だと認めざるを得ない美しいティナを見たトールは、だけど、と思う。

『わたしティナ! よろしくね!』

 初めて会った時の、花が咲くような満面の笑顔を知っている分、トールは今のティナが心の底から笑えていないことに気がついたのだ。

 トールはティナと仲良くなりたいと思いながらも、話し掛けるのをじっと我慢した。
 いきなり話し掛けてもきっと、ティナは自分に心を開いてくれないと感じたからだ。

 だからトールはゆっくり時間を掛けて、少しずつティナと交流を持つことにした。

 まずは明るい挨拶から始め、自分の存在に気づいて貰ってから、授業のことでさりげなく話し掛ける……そんな地味なことから徐々にアプローチしてきたトールは、その甲斐あって、ティナと雑談できるほど仲良くなることが出来た。

 聖女の役目や王妃教育で忙しくなったティナは、学院を休みがちではあったが、学院生活をとても楽しんでいたと思う。

「──あら、トール。お久しぶりですわね。元気にしていらして?」

「──まあ! これを私に貸して下さるのですか?」

「──トールのお話はとても興味深いですね。もっとお話をお聞きしたいわ」

 相変わらず口調はお嬢様言葉だったが、トールにはそれすら背伸びしている少女のようにとても可愛らしく思えたし、時々見せてくれる年相応のティナの笑顔に触れるたび、どんどん気持ちが大きくなって、トールは自分が彼女のことを好きなのだと、何度も自覚させられた。

 ティナへの恋心を自覚したトールであったが、しかしその想いはトールを苦しめることになる。
 何故なら、ティナが今幸せそうじゃないのも、心から笑えていないのも、元はと言えば自分のせいだからだ。

 自分がヴァルナルやリナを巻き込んだから、二人は命を落とし、ティナに深い心の傷を負わせてしまった──その事実が、トールを苛むのだ。

 ティナを想えば想うほど、罪悪感に襲われる──そんな無限ループを繰り返していたある日、トールは例の大事件に遭遇する。

 学院の教授に卒業後の進路で呼び出された後、教室に戻ろうと渡り廊下を歩いていたトールは、ふと誰かに呼ばれたような気がして足を止めた。

 周りを見渡しても、自分に声を掛けたらしい生徒は見当たらない。
 だけどトールは何故かその声が、とても大切なもののように感じられたのだ。

 一瞬、精霊たちが自分を呼んだのかと思ったトールだったが、セーデルルンド王国の王都では精霊たちの動きが何故か鈍ってしまう。
 だからトールは精霊たちのことを考え、学院に連れて来ていなかったのだが──。

 結局、自分を呼んだ声の正体はわからないまま、歩いていたトールは学院中の雰囲気がおかしいことに気がついた。

 誰かが喧嘩でもしたのだろうか、と思ったトールは生徒たちが話している内容を聞いて驚愕する。

 ──ティナが王子から婚約破棄され、そして聖女の称号を剥奪されたと言うではないか。

 トールはティナが公衆の面前で侮辱されたことに激怒した。
 そしてティナが常日頃どれだけ頑張っていたか知っている分、ティナを蔑ろにした王子たちに対して殺意が湧いてくる。

 正直、王子たちがしたことはある意味トールが望んだことと一致する。しかし今はそれどころではなかった。
 一刻も早く学院から去ったティナを見つけなければならないのだ。

 トールは慌てて学院から飛び出し、必死になってティナを探し続けた。
 自分の手が届かないところへティナが行ってしまうと考えるだけで、気が狂いそうになる。

 こういう時、精霊の力を借りることが出来れば、すぐにティナを見付けられただろう。しかし精霊に頼れることが出来ない今、自分の足でティナを探す他ない。

 そうして半ばパニックになりながらも、神殿や王宮など思い当たる場所を探し続けたトールだったが、ティナの姿はどこにも見当たらなかった。

 冷静になって考えれば、すぐに思いついたであろう場所も、ティナを失いたくないと考えるあまり、すっかり頭から抜け落ちていたのだ。

 トールは自由になったティナが、何を望むか想像し、ようやく正解に辿り着く。

 ティナが冒険者になる夢を諦める訳がない。そんな彼女ならきっと──!




 ──斯くして、トールは冒険者ギルドでティナと無事再会することが出来た。

 そしてもう二度とティナを失う恐怖を経験したくないトールは、何もかも捨てたとしてもティナのそばにいたいと強く思うようになる。
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