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子爵家の令嬢であったトールの母は、王家に是非、と望まれるほどの美貌の持ち主であった。
しかし、身分が低い子爵家の出身だったことと、強い権力を持つ公爵家の圧力もあり、正妃ではなく側妃として迎え入れられことになる。
正妃となった公爵家令嬢からのささやかな嫌がらせがあったものの、側妃は比較的平和な王宮生活を送っていたのだが、そんな平和な生活もトールが生まれたことで一変してしまう。
正妃が第一王子を出産してからしばらく、側妃も子供を身籠ったが、側妃の子供には王位継承権が与えられないこともあり、第一王子が王位を継ぐのだと、継承権を巡る争いは起こらないだろうと、誰もが安堵していた。
──そうして十ヶ月後、第二王子となるトールがこの世に生を受けたのだが……。
「……な……っ! 何ぃ?! <金眼>、だと……っ?!」
よりにもよって、<金眼>──<王の目>とも呼ばれる、王者の素質を持つ金色の目をした子供が、側妃から生まれたのだ。
出産に立ち会った医師から、そのことを報告された国王は大喜びだったという。
古い血統であるクロンクヴィストの王族だが、<金眼>を持って生まれた子供の誕生は実に百年振りであった。
そんなこともあり、国の重鎮たちが<金眼>を持つ第二王子にこそ、王位を授けるべきだと主張し出したことで、クロンクヴィストの貴族は二つの派閥に分かれてしまう。
──と同時に、側妃と第二王子であるトールの周りで、不審な事故が起こり始めたのもこの頃だ。
第二王子を狙っているのは正妃と、その実家である公爵家の派閥に与する者たちなのは明白だった。
しかし、手口が巧妙なことと、証拠を一切残さないことで責任の追求が出来ないまま、結局側妃はトールを庇って毒殺されてしまう。
側妃を守ろうとした国王だったが、正妃を輩出した公爵家の権力は予想以上に強かった。
愛する者を守れなかったことで、すっかり憔悴してしまった彼が気がついた時には既に、クロンクヴィスト王国の実権は公爵派に握られた後だったのだ。
公爵派の権力が強くなっていく中、このままクロンクヴィストにいればトールが殺されてしまう、と危惧した側妃の侍女は、実家である商家と連絡を取り、トールをセーデルルンド王国へ逃がそうとした。
王室派貴族たちの協力のもと、無事に王宮から脱出したトールたち一行であったが、セーデルルンド王国までの道中で魔物に襲われてしまう。
護衛も少なく、一行が魔物に苦戦していた時、運良く偶然通りかかった冒険者ヴァルナルに救われたトールたちは、そのままヴァルナル一家と行動を共にすることになる。
「困った時はお互い様だ! それにあんたら訳ありだろ? 見たところ何かから逃げてるんじゃないか?」
経験豊富で優秀な者しかなれないA級冒険者であるヴァルナルは、トールたち一行の事情を一目で見抜いたらしい。
おそらくトールの瞳の色を見て、彼の正体を察したのだろう。
しかし、身分が低い子爵家の出身だったことと、強い権力を持つ公爵家の圧力もあり、正妃ではなく側妃として迎え入れられことになる。
正妃となった公爵家令嬢からのささやかな嫌がらせがあったものの、側妃は比較的平和な王宮生活を送っていたのだが、そんな平和な生活もトールが生まれたことで一変してしまう。
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出産に立ち会った医師から、そのことを報告された国王は大喜びだったという。
古い血統であるクロンクヴィストの王族だが、<金眼>を持って生まれた子供の誕生は実に百年振りであった。
そんなこともあり、国の重鎮たちが<金眼>を持つ第二王子にこそ、王位を授けるべきだと主張し出したことで、クロンクヴィストの貴族は二つの派閥に分かれてしまう。
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第二王子を狙っているのは正妃と、その実家である公爵家の派閥に与する者たちなのは明白だった。
しかし、手口が巧妙なことと、証拠を一切残さないことで責任の追求が出来ないまま、結局側妃はトールを庇って毒殺されてしまう。
側妃を守ろうとした国王だったが、正妃を輩出した公爵家の権力は予想以上に強かった。
愛する者を守れなかったことで、すっかり憔悴してしまった彼が気がついた時には既に、クロンクヴィスト王国の実権は公爵派に握られた後だったのだ。
公爵派の権力が強くなっていく中、このままクロンクヴィストにいればトールが殺されてしまう、と危惧した側妃の侍女は、実家である商家と連絡を取り、トールをセーデルルンド王国へ逃がそうとした。
王室派貴族たちの協力のもと、無事に王宮から脱出したトールたち一行であったが、セーデルルンド王国までの道中で魔物に襲われてしまう。
護衛も少なく、一行が魔物に苦戦していた時、運良く偶然通りかかった冒険者ヴァルナルに救われたトールたちは、そのままヴァルナル一家と行動を共にすることになる。
「困った時はお互い様だ! それにあんたら訳ありだろ? 見たところ何かから逃げてるんじゃないか?」
経験豊富で優秀な者しかなれないA級冒険者であるヴァルナルは、トールたち一行の事情を一目で見抜いたらしい。
おそらくトールの瞳の色を見て、彼の正体を察したのだろう。
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