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噂1
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辺境の村の宿から出て、隣国クロンクヴィストへ向かう準備をしていたティナ達は、周りの様子がおかしいことに気がついた。
「ねぇ、トール。何だか雰囲気がおかしくない?」
ティナの言葉に、トールは周りをぐるっと見渡してみる。
確かに、どの商人も冒険者たちも覇気がないようだ。
「……そうだな。落ち着きがないっていうか……何かを怖がってるような表情をしているね」
辺境の村といっても、隣国クロンクヴィストへ向かうための通過拠点として利用されているこの村には、結構な数の商団や冒険者たちがいた。
どのグループも出立の準備をしているが、その表情は何処か不安げだ。
ティナたちがどうしたのだろうと不思議に思っていると、モルガンが慌てて戻ってきた。
「さっきそこで教えて貰ったんだが、どうやらこの先の森で高レベルの魔物が出たらしい」
「高レベルの……? それは珍しいですね。どの魔物が出たのか聞いていますか?」
「それがなぁ……。どれもこの辺りにはいなかった魔物でな。名前は……スチュ……パリ……ス? とかシロップ? 何だっけ、シェロップ? だっけか?」
トールの質問に答えたモルガンから出た答えは、予想外の魔物の名前だった。
「もしかして、ステュムパリデスとシェロブですか……?」
ティナが記憶を辿り、似たような魔物の名前を口にする。
「そう、それそれ! 馴染みがない名前だから覚えらんなくってな」
ステュムパリデスは、毒を巻き散らす怪鳥で、青銅の嘴と羽根を持つ。森に棲み、群れで人を襲い田畑を荒らす迷惑な魔物だ。そしてシェロブは巨大な体躯に堅い外骨格と堅い糸、毒針を持つ蜘蛛の魔物である。
「確か両方ともCランクの魔物ですね。しかし、どうしてこんなところにそんな魔物が……」
この辺りにはいるはずがない魔物の出現に、トールが首を傾げている。
「どうやら北の方角にある大森林から流れて来たんじゃないかって噂だけどな」
北の方角にある森と聞き、ティナはそう言えば、と思い出す。
「北の大森林……『黒い森』ですね」
ティナが聖女になり、初めて浄化した場所が『黒い森』であった。
そこは鬱蒼と生い茂った木々が光を遮り、常に暗くて不気味だったとティナは記憶している。
(ああ、あそこを浄化してもう七年経つんだっけ……。早いなぁ……)
七年前、ティナが『黒い森』を浄化するために訪れた時、襲って来たステュムパリデスを聖騎士たちが討伐したことがあった。
毒持ちの魔物から素材を得ることは難しいので、通常であれば討伐後は燃やしてしまうのだが、好奇心旺盛なティナはステュムパリデスを試しに浄化してみたのだ。
すると、毒は綺麗サッパリと無くなり、青銅の嘴と羽根を素材として手に入れることが出来た。更にその肉は滋味溢れる美味しさで、聖騎士たちが大喜びで食べていたことを思い出す。
その出来事がきっかけで、ティナは魔物を討伐し、その素材をギルドに持って行くようになったのだ。
(そういやアレクシス元気かな……。今頃驚いてるだろうなぁ……)
アレクシスは、ティナの護衛をしていた聖騎士団員で、若くして聖女付きとなった少年であった。
優秀だったアレクシスはメキメキと頭角を表し、聖騎士団の中でも異例の速さで階級を上げていった。近い内に副団長になるだろうと期待されているらしい。
そんなアレクシスはティナの護衛を他の者に任せ、聖騎士団本部での勤務をと打診されていたが、面倒くさいのかその悉くを断っていた。
『──クリスティナ様のそばにいると退屈しませんから』
その言葉は、ティナが「本部勤めの方が出世できるのに」と言った時、アレクシスが笑顔で言ったものだ。
そんな聖騎士っぽくないアレクシスのお陰で、ティナは魔物を狩ることが出来たし、ギルドへ素材を持って行くことも出来た。
しかしティナがフレードリクから断罪された時、タイミングが悪いことにアレクシスは、ラーシャルード神を崇拝する宗教の総本山があるアコンニエミ国へ行っていて不在であったのだ。
「ねぇ、トール。何だか雰囲気がおかしくない?」
ティナの言葉に、トールは周りをぐるっと見渡してみる。
確かに、どの商人も冒険者たちも覇気がないようだ。
「……そうだな。落ち着きがないっていうか……何かを怖がってるような表情をしているね」
辺境の村といっても、隣国クロンクヴィストへ向かうための通過拠点として利用されているこの村には、結構な数の商団や冒険者たちがいた。
どのグループも出立の準備をしているが、その表情は何処か不安げだ。
ティナたちがどうしたのだろうと不思議に思っていると、モルガンが慌てて戻ってきた。
「さっきそこで教えて貰ったんだが、どうやらこの先の森で高レベルの魔物が出たらしい」
「高レベルの……? それは珍しいですね。どの魔物が出たのか聞いていますか?」
「それがなぁ……。どれもこの辺りにはいなかった魔物でな。名前は……スチュ……パリ……ス? とかシロップ? 何だっけ、シェロップ? だっけか?」
トールの質問に答えたモルガンから出た答えは、予想外の魔物の名前だった。
「もしかして、ステュムパリデスとシェロブですか……?」
ティナが記憶を辿り、似たような魔物の名前を口にする。
「そう、それそれ! 馴染みがない名前だから覚えらんなくってな」
ステュムパリデスは、毒を巻き散らす怪鳥で、青銅の嘴と羽根を持つ。森に棲み、群れで人を襲い田畑を荒らす迷惑な魔物だ。そしてシェロブは巨大な体躯に堅い外骨格と堅い糸、毒針を持つ蜘蛛の魔物である。
「確か両方ともCランクの魔物ですね。しかし、どうしてこんなところにそんな魔物が……」
この辺りにはいるはずがない魔物の出現に、トールが首を傾げている。
「どうやら北の方角にある大森林から流れて来たんじゃないかって噂だけどな」
北の方角にある森と聞き、ティナはそう言えば、と思い出す。
「北の大森林……『黒い森』ですね」
ティナが聖女になり、初めて浄化した場所が『黒い森』であった。
そこは鬱蒼と生い茂った木々が光を遮り、常に暗くて不気味だったとティナは記憶している。
(ああ、あそこを浄化してもう七年経つんだっけ……。早いなぁ……)
七年前、ティナが『黒い森』を浄化するために訪れた時、襲って来たステュムパリデスを聖騎士たちが討伐したことがあった。
毒持ちの魔物から素材を得ることは難しいので、通常であれば討伐後は燃やしてしまうのだが、好奇心旺盛なティナはステュムパリデスを試しに浄化してみたのだ。
すると、毒は綺麗サッパリと無くなり、青銅の嘴と羽根を素材として手に入れることが出来た。更にその肉は滋味溢れる美味しさで、聖騎士たちが大喜びで食べていたことを思い出す。
その出来事がきっかけで、ティナは魔物を討伐し、その素材をギルドに持って行くようになったのだ。
(そういやアレクシス元気かな……。今頃驚いてるだろうなぁ……)
アレクシスは、ティナの護衛をしていた聖騎士団員で、若くして聖女付きとなった少年であった。
優秀だったアレクシスはメキメキと頭角を表し、聖騎士団の中でも異例の速さで階級を上げていった。近い内に副団長になるだろうと期待されているらしい。
そんなアレクシスはティナの護衛を他の者に任せ、聖騎士団本部での勤務をと打診されていたが、面倒くさいのかその悉くを断っていた。
『──クリスティナ様のそばにいると退屈しませんから』
その言葉は、ティナが「本部勤めの方が出世できるのに」と言った時、アレクシスが笑顔で言ったものだ。
そんな聖騎士っぽくないアレクシスのお陰で、ティナは魔物を狩ることが出来たし、ギルドへ素材を持って行くことも出来た。
しかしティナがフレードリクから断罪された時、タイミングが悪いことにアレクシスは、ラーシャルード神を崇拝する宗教の総本山があるアコンニエミ国へ行っていて不在であったのだ。
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