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出発1
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出発の日の朝、ティナはトールと待ち合わせしているギルドのホールへと足を運ぶ。
まだ早い時間ではあったが、すでにトールは到着していて、ティナの姿を見つけると嬉しそうに近づいてきた。
「おはようティナ。ほら、カードを受け取ったよ」
「おめでとう! トールも冒険者の仲間入りだね! 改めてよろしく!」
「こちらこそ、よろしく!」
二人は笑顔で握手を交わす。その場にいた冒険者達も、新人で後輩となるティナ達に温かい眼差しを送っている。
つい先日まで学院に通いながら、聖女としての役目に加え王妃教育に勤しんでいた自分が、自由の象徴となっている職業である冒険者になれる日が来るとは……ティナは考えもしていなかった。
そういう意味では、フレードリクに感謝しても良いかもしれない。
「まずは装備を買い揃えないとね。やっぱりトールは魔法使いの装備かな?」
「そうだなぁ。俺、魔法使いより剣士をやってみたいな」
「あ、そっか。トールは戦闘演習が得意だったもんね。トールが剣士……うん、格好良い!」
「……っ! か、格好良いかどうかはわからないけど、魔法と併用しようと思ってるんだ」
「なるほど! 魔法剣士ね! トールの戦闘スタイルにピッタリだね!」
ティナはトールが剣を持っている姿を想像する。長身でスタイルが良いトールにはツヴァイハンダーが似合うかもしれない。
ちなみにツヴァイハンダーとは、ロングソードより更に長い剣で、重量もあるので腰ではなく背中に背負って持ち運ぶ。長剣を背負ったトールの姿はさぞや格好良いだろう。
「武器屋に気に入ったものがあればいいけどね。ティナはどうする?」
「そうだなぁ。私はいつも魔法を使っていたんだけど……この機会に護身用の武器でも新調しようかな」
二人が装備について話し合っていると、受付の職員に声を掛けられた。ギルド長が呼んでいるから執務室へ行って欲しいのだそうだ。
ベルトルドに出発の挨拶をしたかったティナは丁度良かったと、トールと一緒に執務室へ向かう。
「ギルド長、ティナとトールが参りました」
「どうぞ入って」
ティナとトールは「失礼します」と声を掛け執務室の中に入る。
「ご苦労さま。出発前にすまないね。君達を呼んだのは渡したいものがあるからなんだ」
ベルトルドはそう言うと、ティナ達の前に鞄を置いた。
その鞄は冒険者達が使っている物と似ていたが、それよりも良い材質で作られているように見えた。
「ギルド長、この鞄は?」
「これは空間拡張の魔法が掛けられた鞄だよ。中には食料に水やテント、調理器具が入れてあるんだ」
「魔法鞄……?! これってすごく高価なんじゃ……!」
見た目以上に物が入る魔法鞄は希少な空間魔法が施されており、二立方メートルの容量で白金貨二枚となる。およそティナの生活費二十年分だ。
「ふふふ。私のお下がりだけどね、ティナに使って貰おうと思って。ついでだから旅に必要な装備と物資を入れておいたよ」
ベルトルドによると、この魔法鞄は五立方メートルの容量が入るらしい。
「え……っ?! そんな貴重な物を?!」
かつてS級冒険者として活躍し、現役を退いていても王都本部の長として荒くれ者をまとめ上げているベルトルドは、その人柄もあって多くの冒険者に慕われており、ベルトルドの熱烈な信奉者も多く存在するという。
そんなベルトルドが愛用していた装備で、しかも魔法鞄という貴重な品であれば欲しがる者は沢山いるだろう。競売にかければいくらまで値が上がるのか、想像もできない。
まだ早い時間ではあったが、すでにトールは到着していて、ティナの姿を見つけると嬉しそうに近づいてきた。
「おはようティナ。ほら、カードを受け取ったよ」
「おめでとう! トールも冒険者の仲間入りだね! 改めてよろしく!」
「こちらこそ、よろしく!」
二人は笑顔で握手を交わす。その場にいた冒険者達も、新人で後輩となるティナ達に温かい眼差しを送っている。
つい先日まで学院に通いながら、聖女としての役目に加え王妃教育に勤しんでいた自分が、自由の象徴となっている職業である冒険者になれる日が来るとは……ティナは考えもしていなかった。
そういう意味では、フレードリクに感謝しても良いかもしれない。
「まずは装備を買い揃えないとね。やっぱりトールは魔法使いの装備かな?」
「そうだなぁ。俺、魔法使いより剣士をやってみたいな」
「あ、そっか。トールは戦闘演習が得意だったもんね。トールが剣士……うん、格好良い!」
「……っ! か、格好良いかどうかはわからないけど、魔法と併用しようと思ってるんだ」
「なるほど! 魔法剣士ね! トールの戦闘スタイルにピッタリだね!」
ティナはトールが剣を持っている姿を想像する。長身でスタイルが良いトールにはツヴァイハンダーが似合うかもしれない。
ちなみにツヴァイハンダーとは、ロングソードより更に長い剣で、重量もあるので腰ではなく背中に背負って持ち運ぶ。長剣を背負ったトールの姿はさぞや格好良いだろう。
「武器屋に気に入ったものがあればいいけどね。ティナはどうする?」
「そうだなぁ。私はいつも魔法を使っていたんだけど……この機会に護身用の武器でも新調しようかな」
二人が装備について話し合っていると、受付の職員に声を掛けられた。ギルド長が呼んでいるから執務室へ行って欲しいのだそうだ。
ベルトルドに出発の挨拶をしたかったティナは丁度良かったと、トールと一緒に執務室へ向かう。
「ギルド長、ティナとトールが参りました」
「どうぞ入って」
ティナとトールは「失礼します」と声を掛け執務室の中に入る。
「ご苦労さま。出発前にすまないね。君達を呼んだのは渡したいものがあるからなんだ」
ベルトルドはそう言うと、ティナ達の前に鞄を置いた。
その鞄は冒険者達が使っている物と似ていたが、それよりも良い材質で作られているように見えた。
「ギルド長、この鞄は?」
「これは空間拡張の魔法が掛けられた鞄だよ。中には食料に水やテント、調理器具が入れてあるんだ」
「魔法鞄……?! これってすごく高価なんじゃ……!」
見た目以上に物が入る魔法鞄は希少な空間魔法が施されており、二立方メートルの容量で白金貨二枚となる。およそティナの生活費二十年分だ。
「ふふふ。私のお下がりだけどね、ティナに使って貰おうと思って。ついでだから旅に必要な装備と物資を入れておいたよ」
ベルトルドによると、この魔法鞄は五立方メートルの容量が入るらしい。
「え……っ?! そんな貴重な物を?!」
かつてS級冒険者として活躍し、現役を退いていても王都本部の長として荒くれ者をまとめ上げているベルトルドは、その人柄もあって多くの冒険者に慕われており、ベルトルドの熱烈な信奉者も多く存在するという。
そんなベルトルドが愛用していた装備で、しかも魔法鞄という貴重な品であれば欲しがる者は沢山いるだろう。競売にかければいくらまで値が上がるのか、想像もできない。
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