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 連日、長時間勉強していると流石に疲れてくる。勉強なんかやめて遊びたい。休みたい。
 でも、テストまで後2日だ。もう少しの辛抱でこの勉強漬けの日々から解放されるんだから気合を入れて頑張らないと。

「"勉強飽きた"って顔に書いてあるよ? 休んだら?」
 隣に座っているヴェルナーが言った。

 ヴェルナーはあれからほぼ毎日、私の部屋にやって来て勉強を見てくれている。彼の的確なアドバイスのおかげで、テストは何とかなりそうだ。

「もうすぐ解き終わるんで。後で休憩にします」
 そう言ってから最後の問題を解いた。5分も経たずに解けたのはよかったけれど、疲労困憊で思わずため息を吐いてしまった。
 ヴェルナーは黙ってノートを覗き込んだ。
「うん。合ってる。さあ、休憩だ」
 ヴェルナーの言葉を聞いてほっとした。私は思いっきり伸びをして固まった背中をほぐした。

「勉強を見るのも今日で最後にしておくよ」
 ヴェルナーはそう言うと不躾にも私のベッドに寝転んだ。ここ最近、口酸っぱく言い続けたおかげか靴は脱いでくれている。
「何? その嫌そうな顔。人のベッドに寝転ぶなっていう説教はもういいよ。聞き飽きた。それより、『ありがとうございました』とか、『もう見てもらえなくてさみしいです』とか言ってくれないわけ?」
 不満を口にしながらもヴェルナーはどこか楽し気だ。
「お礼はテストの結果が良ければしますよ」
 ヴェルナーにお礼をしたらつけあがりそうだけど。借りをそのままにしておく方がもっとよくない気がする。
「そ。期待しとく」
 ヴェルナーは笑うと天井を見上げた。

「そういえば、魔晶石を身に着けてくれてる?」
「ええ。持ち歩いていますよ」
 ヴェルナーはあの"瞳の魔物"についてどこまで知っているんだろう。
「瞳の魔物について、まだ教えてくれませんか」
「教えないよ。だって、まだ楽しいことが起こってないし?」
 ヴェルナーは意地悪く笑った。
 楽しいことって何? こっちは命の危機が訪れるかもしれないから聞いてるのに。

「もしかしてアイゼンに何か言われた?」
 この間、アイゼンと会っていたことは知っているのに、会話の内容は知らないなんて。ヴェルナーにしては珍しい。
「何のことでしょう」
 ヴェルナーは私の味方ではないから。アイゼンとのやり取りを教えてあげるつもりはない。
「お互い嫌な性格をしてるよね」
 あははとヴェルナーが笑った。そんなことを言うなら、ヴェルナーの方から瞳の魔物について教えてくれたらいいのに。

「まあ、何があっても俺は君を守るつもりだよ」
 人のベッドの上で寝転んで言われても全く格好よくない。
「まあ、とにかく、中間テストに集中することだね」
 ヴェルナーは起き上がると靴を履いて立ち上がった。
「今日はもう寝た方がいい。明日はもっと早く寝るんだよ。おやすみ」
 そう言うとヴェルナーは窓を開けて飛び降りた。
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