22 / 24
17-2 その後の顛末
しおりを挟む
「そう。それなら、あなたの心はもう決まったのね」
王女殿下はとても美しい笑みを浮かべた。
「はい」
私は持っていたティーカップを下ろした。
「私はアーサー様と婚約いたします」
改めて言ってみると少し気恥ずかしい。
「ちなみにお兄様のどこを気に入ったのかしら?」
「優しいところです」
そう言った途端、王女殿下は口を尖らせた。
「私、エレノア嬢とは仲良くなれたと思っていたのに。また煙に巻こうとしているのね」
「そんなことないです。本心からそう思っていますから」
アーサー様は本当に優しい人だった。私に対してだけではなく、ありとあらゆる人に対して気配りをしてくれる。友達のライオネル伯爵は勿論のこと、私の親友のベッキーに対しても。それに、イアンに対してもそうだった。
些細な気遣いのできるアーサー様のことを好きにならないはずがなかった。
そのことを王女殿下に対して伝えていると、ベッキーがやって来た。
「遅れてごめんなさい」
「遅いわ。危うく大事な話を聞きそびれるところだったのよ?」
王女殿下はいたずらっぽく言って笑ってみせた。
「大事なことって、まさか!?」
「ベッキー、その前に、席について? お行儀が悪いよ」
「はぁい」
ベッキーはすぐに席に着くと私に向き合った。
「それで、どうなの?」
「アーサー様との婚約をするわ」
「おめでとう!」
ベッキーは私の手を取って言った。
「あら?」
ベッキーは私の左手の薬指を撫でる。そこにつけている指輪に気がついたようだ。
「もしかして、婚約指輪?」
「うん」
「よく見せてよ」
ベッキーは私の手を引き寄せた。
「あら、ステキなダイヤ」
王女殿下は私の手を見て言った。
「すごい! こんな大きなダイヤのついた指輪を見たことないわ!」
ベッキーは目を輝かせている。王女殿下なら一つくらい持っていそうと思ったのは内緒だ。
「大きさよりも、カット技術の方が気になるわ。こんなに綺麗に細工できるなんて・・・・・・。どこの職人かしら」
王女殿下は興味深げに指輪を見つめていた。
「エリーは大公殿下に愛されているのね」
「そうね。そうじゃなければこんな高価な指輪を贈らないでしょうし」
物の値段で愛を推し量るなんて下品なことかもしれない。でも、アーサー様は他の誰でもなく、私のためにこのダイヤを選んで最高の加工を施してくれた。その事実が愛の深さを物語っていると思ってしまう。
「エリーのその顔、久しぶりに見た!」
ベッキーがいきなりそんなことを言ったけれど。何のことだがさっぱり分からない。
「エリーは今、幸せいっぱいで"夢見る乙女"の顔をしてるんだよ!」
その言葉を聞いて私は思わず吹き出した。
ーー"夢見る乙女"か。この世界の元になっているゲームのタイトルは『夢見る乙女のメモリアル』だったわね。
「ちょっと、エリーったら。私は真剣に言ってるんだから!」
「ごめんごめん」
笑った理由を言うわけにもいかないから適当に謝っておいた。
でも、ベッキーのいうことはあながち間違いではないのかもしれない。私はアーサー様との恋に夢を見ている。これかの人生、二人で幸せに暮らしていく夢を。
王女殿下はとても美しい笑みを浮かべた。
「はい」
私は持っていたティーカップを下ろした。
「私はアーサー様と婚約いたします」
改めて言ってみると少し気恥ずかしい。
「ちなみにお兄様のどこを気に入ったのかしら?」
「優しいところです」
そう言った途端、王女殿下は口を尖らせた。
「私、エレノア嬢とは仲良くなれたと思っていたのに。また煙に巻こうとしているのね」
「そんなことないです。本心からそう思っていますから」
アーサー様は本当に優しい人だった。私に対してだけではなく、ありとあらゆる人に対して気配りをしてくれる。友達のライオネル伯爵は勿論のこと、私の親友のベッキーに対しても。それに、イアンに対してもそうだった。
些細な気遣いのできるアーサー様のことを好きにならないはずがなかった。
そのことを王女殿下に対して伝えていると、ベッキーがやって来た。
「遅れてごめんなさい」
「遅いわ。危うく大事な話を聞きそびれるところだったのよ?」
王女殿下はいたずらっぽく言って笑ってみせた。
「大事なことって、まさか!?」
「ベッキー、その前に、席について? お行儀が悪いよ」
「はぁい」
ベッキーはすぐに席に着くと私に向き合った。
「それで、どうなの?」
「アーサー様との婚約をするわ」
「おめでとう!」
ベッキーは私の手を取って言った。
「あら?」
ベッキーは私の左手の薬指を撫でる。そこにつけている指輪に気がついたようだ。
「もしかして、婚約指輪?」
「うん」
「よく見せてよ」
ベッキーは私の手を引き寄せた。
「あら、ステキなダイヤ」
王女殿下は私の手を見て言った。
「すごい! こんな大きなダイヤのついた指輪を見たことないわ!」
ベッキーは目を輝かせている。王女殿下なら一つくらい持っていそうと思ったのは内緒だ。
「大きさよりも、カット技術の方が気になるわ。こんなに綺麗に細工できるなんて・・・・・・。どこの職人かしら」
王女殿下は興味深げに指輪を見つめていた。
「エリーは大公殿下に愛されているのね」
「そうね。そうじゃなければこんな高価な指輪を贈らないでしょうし」
物の値段で愛を推し量るなんて下品なことかもしれない。でも、アーサー様は他の誰でもなく、私のためにこのダイヤを選んで最高の加工を施してくれた。その事実が愛の深さを物語っていると思ってしまう。
「エリーのその顔、久しぶりに見た!」
ベッキーがいきなりそんなことを言ったけれど。何のことだがさっぱり分からない。
「エリーは今、幸せいっぱいで"夢見る乙女"の顔をしてるんだよ!」
その言葉を聞いて私は思わず吹き出した。
ーー"夢見る乙女"か。この世界の元になっているゲームのタイトルは『夢見る乙女のメモリアル』だったわね。
「ちょっと、エリーったら。私は真剣に言ってるんだから!」
「ごめんごめん」
笑った理由を言うわけにもいかないから適当に謝っておいた。
でも、ベッキーのいうことはあながち間違いではないのかもしれない。私はアーサー様との恋に夢を見ている。これかの人生、二人で幸せに暮らしていく夢を。
29
お気に入りに追加
855
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。


愛せないですか。それなら別れましょう
黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」
婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。
バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。
そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。
王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。
「愛せないですか。それなら別れましょう」
この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。


【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです
珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。
そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた
。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる