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15-2 ボート遊び
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「私のことを知りたいと?」
「うん」
アーサー様はそう言ってくれているけど。でも・・・・・・。
「もし、ですよ。もし、私を知ることによって、嫌な部分を見つけてがっかりしてしまったら?」
アーサー様はまだ、私のいい部分しか見ていないのだろう。
魔導列車を絶賛した私は、偶然、アーサー様と同じ価値観をしていただけだ。今の私は、アーサー様に悪く思われたくなくて、取り繕っている部分があることを否定できない。この間のローズ王女殿下のパーティの時だってそうだ。
ケイン様に嫌われていたように、私の口うるさいところはアーサー様も好きになれないだろう。それに、他にも性格の合わない部分があるかもしれない。
「嫌いになると思った?」
アーサー様は困ったように笑った。
ーー違う。アーサー様を困らせたくないの。
「ごめんなさい。困らせるようなことを言ってしまって。今のは忘れて下さい」
話の流れを変えるために私は明るく笑った。でも、アーサー様は真剣な顔で私を見ていた。
「いや。困ってなんかいないよ。エレノア嬢の質問に答えさせてくれ」
アーサー様はそう言って優しく笑った。私の不安な気持ちを吹き飛ばすためにそうしてくれたと思うのは、私の都合の良い思い込みかしら?
「まず、さっきの質問からエレノア嬢も俺のことを真剣に考えて向き合ってくれていると思った。ありがとう」
そんな風に捉えてくれているなんて思いもしなかった。
ーーアーサー様はとても前向きな人なのね。
「もし、エレノア嬢の嫌な部分を見つけたって、嫌いにはならないと思うよ。・・・・・・それは、たまには腹が立つことだってあるかもしれない。でも、きっと、そんなのは全体から見れば些細なことで、一緒にいて楽しいことの方が多いと思うんだ」
「そうでしょうか?」
「うん。そうだよ」
アーサー様は断言をした。
「俺はライオネルのことは信頼してるし大好きな友人だと思ってる。だけど、嫌いな部分だって、あるんだよ」
「あのライオネル伯爵を?」
彼は明るくて親交のない私にも親しく接してくれる良い人に見えたけれど。
「あいつ、俺のことをからかって遊ぶ悪い癖があるんだ。今日もエレノア嬢と一緒にさせようと、何かとやっていただろう?」
そう言ってアーサー様は苦笑いをした。
「あはは、確かにそうですね」
私も思わず苦笑いを浮かべた。
「そういう行動に出るやつだって分かってはいても、今日一緒にピクニックに来たのはそれ以上にライオネルが良い友達だからだ」
「その良い部分は何となくわかります」
「そう? 良かった」
アーサー様はにこりと笑った。
「例えとしてライオネルを出したけど。人には良い部分と悪い部分があるから。だから、少し悪いところがあったとしても俺は気にしない。それはエレノア嬢の性格の一部だって受け入れるよ。倫理や法律に反することでなければね」
「そうですか。・・・・・・安心してください。倫理と法律に外れるようなことはしてきた覚えはありませんから」
少しおどけて言ってみたら、アーサー様は、「そうだろうね」と言って笑ってくれた。
「それに、これは俺の経験則なんだけど。俺が知りたいと、仲良くしたいと思った人で嫌いになった人は今まで一人もいなかった。・・・・・・それから、女性として気になったのはエレノア嬢が初めてだよ」
アーサー様の言葉に私は顔を赤くするほかなかった。
「うん」
アーサー様はそう言ってくれているけど。でも・・・・・・。
「もし、ですよ。もし、私を知ることによって、嫌な部分を見つけてがっかりしてしまったら?」
アーサー様はまだ、私のいい部分しか見ていないのだろう。
魔導列車を絶賛した私は、偶然、アーサー様と同じ価値観をしていただけだ。今の私は、アーサー様に悪く思われたくなくて、取り繕っている部分があることを否定できない。この間のローズ王女殿下のパーティの時だってそうだ。
ケイン様に嫌われていたように、私の口うるさいところはアーサー様も好きになれないだろう。それに、他にも性格の合わない部分があるかもしれない。
「嫌いになると思った?」
アーサー様は困ったように笑った。
ーー違う。アーサー様を困らせたくないの。
「ごめんなさい。困らせるようなことを言ってしまって。今のは忘れて下さい」
話の流れを変えるために私は明るく笑った。でも、アーサー様は真剣な顔で私を見ていた。
「いや。困ってなんかいないよ。エレノア嬢の質問に答えさせてくれ」
アーサー様はそう言って優しく笑った。私の不安な気持ちを吹き飛ばすためにそうしてくれたと思うのは、私の都合の良い思い込みかしら?
「まず、さっきの質問からエレノア嬢も俺のことを真剣に考えて向き合ってくれていると思った。ありがとう」
そんな風に捉えてくれているなんて思いもしなかった。
ーーアーサー様はとても前向きな人なのね。
「もし、エレノア嬢の嫌な部分を見つけたって、嫌いにはならないと思うよ。・・・・・・それは、たまには腹が立つことだってあるかもしれない。でも、きっと、そんなのは全体から見れば些細なことで、一緒にいて楽しいことの方が多いと思うんだ」
「そうでしょうか?」
「うん。そうだよ」
アーサー様は断言をした。
「俺はライオネルのことは信頼してるし大好きな友人だと思ってる。だけど、嫌いな部分だって、あるんだよ」
「あのライオネル伯爵を?」
彼は明るくて親交のない私にも親しく接してくれる良い人に見えたけれど。
「あいつ、俺のことをからかって遊ぶ悪い癖があるんだ。今日もエレノア嬢と一緒にさせようと、何かとやっていただろう?」
そう言ってアーサー様は苦笑いをした。
「あはは、確かにそうですね」
私も思わず苦笑いを浮かべた。
「そういう行動に出るやつだって分かってはいても、今日一緒にピクニックに来たのはそれ以上にライオネルが良い友達だからだ」
「その良い部分は何となくわかります」
「そう? 良かった」
アーサー様はにこりと笑った。
「例えとしてライオネルを出したけど。人には良い部分と悪い部分があるから。だから、少し悪いところがあったとしても俺は気にしない。それはエレノア嬢の性格の一部だって受け入れるよ。倫理や法律に反することでなければね」
「そうですか。・・・・・・安心してください。倫理と法律に外れるようなことはしてきた覚えはありませんから」
少しおどけて言ってみたら、アーサー様は、「そうだろうね」と言って笑ってくれた。
「それに、これは俺の経験則なんだけど。俺が知りたいと、仲良くしたいと思った人で嫌いになった人は今まで一人もいなかった。・・・・・・それから、女性として気になったのはエレノア嬢が初めてだよ」
アーサー様の言葉に私は顔を赤くするほかなかった。
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