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13-1 昼食
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イアンと別れてから私達は馬車に乗った。ミランダは躊躇うことなく馬車を使ったらしく、私達が再び鉢合わせをすることはなかった。
「魔導列車に乗った後だと、いつも乗っている馬車がつまらないものに感じるわね」
「ベッキーったら、それは良くない発言ね。御者と馬に失礼よ」
私が注意するとベッキーは口を尖らせた。
「そんなことを言われたって遅いし狭いんですもの」
子どもみたいな言い草に私達は思わず笑ってしまった。
「魔導列車を気に入ってくれたのは嬉しいけど、近場を移動するなら、まだまだ馬車の方が便利で優秀だよ」
アーサー様は笑いながらも真面目に教えてくれた。
「そうそう。魔導列車は小回りが利かないし、騒音の問題もあるからね。馬車はその点では優れているよ」
ライオネル伯爵はそう付け加えた。
「馬車も良いけど、自分で馬に乗って移動するのも楽しいよ。レベッカ嬢は乗馬はするのかな?」
ライオネル伯爵に問われてベッキーは首を横に振った。
「学園の授業で一年前に数回だけ乗りました。でも、私には才能がなさそうなのでそれ以来乗っていません」
そういえば、ベッキーは乗馬の授業の後にひどい筋肉痛を起こして、痛い痛いと嘆いていたわ。
「ええ! それは勿体ないよ! 馬に乗って散策するのも楽しいんだから。シリナ湖には乗馬クラブも併設されていたはずだから、後で一緒に乗ってみようよ」
「えっ、でも・・・・・・。乗った後に筋肉痛がひどくなるんです」
「それは乗り方が悪いんだよ。大丈夫、ちゃんとした乗り方を教えてあげるから。それに・・・・・・」
伯爵はベッキーに耳打ちをした。ベッキーはうんうんと頷きにやりと笑った。
「いいですね。分かりました。乗ります」
大嫌いな乗馬をする気になるなんて、伯爵は何を言ったんだろう。
そんな話をしていたら、馬車はあっという間にシリナ湖に到着した。
「ひとまず、座る場所を決めようか」
馬車から降りるとアーサー様が言った。
「そうですね」
私達は湖に沿って良い場所がないか探し始めた。
「今日は天気が良いわね」
道中、ベッキーが空を見上げて言った。
今日は雲一つない晴天で、空がとても青かった。日差しは少し強い気もしないでもないけれど、風が涼しくて気持ちいい。
「そうね」
そんなことを言っていると、一本の大きな木を見つけた。木の下は影になっていて日除けにちょうどいい。私達はそこに座ることにした。
敷物を敷いて、私達はとりあえず持ってきた昼食を食べることにした。
サンドウィッチ、サラダ、ジビエ、フルーツ、クッキー。ベッキーと事前に相談して決めた甲斐があって、ピクニックの食事にしては豪華に見える。
「うわぁ、美味しそうなサンドウィッチ!」
ライオネル伯爵はレタスとベーコンのサンドウィッチを手に取るとすぐに口に入れた。続いてアーサー様は卵のサンドウィッチを手に取った。
「あら、アーサー様ったら、お目が高い。その卵のサンドウィッチはエリーが作ったんですよ」
「エレノア嬢が? 料理が上手なんだね!」
私は思わず笑ってしまった。
「お世辞は食べてからにしてください」
「お世辞だなんて。シェフが作ったのと同様、綺麗に作れているから言ったのに」
アーサー様はそう言いながらサンドウィッチを口にした。
「で、味の方はどうかな?」
ライオネル伯爵はにやにや笑いながらアーサー様を凝視して言った。
「美味しいよ。少し甘みがあって。卵の量も絶妙だ」
アーサー様はとても爽やかな笑顔で笑って言った。その笑顔がステキで何だか照れてしまう。
「・・・・・・今日は、卵にお砂糖を入れてみました」
折角褒めてもらったのに、出てきた言葉はそんなものだった。他の人になら、ちゃんと大人の女性として社交辞令の返答ができるのに。アーサー様の前だとうまくいかない。
「魔導列車に乗った後だと、いつも乗っている馬車がつまらないものに感じるわね」
「ベッキーったら、それは良くない発言ね。御者と馬に失礼よ」
私が注意するとベッキーは口を尖らせた。
「そんなことを言われたって遅いし狭いんですもの」
子どもみたいな言い草に私達は思わず笑ってしまった。
「魔導列車を気に入ってくれたのは嬉しいけど、近場を移動するなら、まだまだ馬車の方が便利で優秀だよ」
アーサー様は笑いながらも真面目に教えてくれた。
「そうそう。魔導列車は小回りが利かないし、騒音の問題もあるからね。馬車はその点では優れているよ」
ライオネル伯爵はそう付け加えた。
「馬車も良いけど、自分で馬に乗って移動するのも楽しいよ。レベッカ嬢は乗馬はするのかな?」
ライオネル伯爵に問われてベッキーは首を横に振った。
「学園の授業で一年前に数回だけ乗りました。でも、私には才能がなさそうなのでそれ以来乗っていません」
そういえば、ベッキーは乗馬の授業の後にひどい筋肉痛を起こして、痛い痛いと嘆いていたわ。
「ええ! それは勿体ないよ! 馬に乗って散策するのも楽しいんだから。シリナ湖には乗馬クラブも併設されていたはずだから、後で一緒に乗ってみようよ」
「えっ、でも・・・・・・。乗った後に筋肉痛がひどくなるんです」
「それは乗り方が悪いんだよ。大丈夫、ちゃんとした乗り方を教えてあげるから。それに・・・・・・」
伯爵はベッキーに耳打ちをした。ベッキーはうんうんと頷きにやりと笑った。
「いいですね。分かりました。乗ります」
大嫌いな乗馬をする気になるなんて、伯爵は何を言ったんだろう。
そんな話をしていたら、馬車はあっという間にシリナ湖に到着した。
「ひとまず、座る場所を決めようか」
馬車から降りるとアーサー様が言った。
「そうですね」
私達は湖に沿って良い場所がないか探し始めた。
「今日は天気が良いわね」
道中、ベッキーが空を見上げて言った。
今日は雲一つない晴天で、空がとても青かった。日差しは少し強い気もしないでもないけれど、風が涼しくて気持ちいい。
「そうね」
そんなことを言っていると、一本の大きな木を見つけた。木の下は影になっていて日除けにちょうどいい。私達はそこに座ることにした。
敷物を敷いて、私達はとりあえず持ってきた昼食を食べることにした。
サンドウィッチ、サラダ、ジビエ、フルーツ、クッキー。ベッキーと事前に相談して決めた甲斐があって、ピクニックの食事にしては豪華に見える。
「うわぁ、美味しそうなサンドウィッチ!」
ライオネル伯爵はレタスとベーコンのサンドウィッチを手に取るとすぐに口に入れた。続いてアーサー様は卵のサンドウィッチを手に取った。
「あら、アーサー様ったら、お目が高い。その卵のサンドウィッチはエリーが作ったんですよ」
「エレノア嬢が? 料理が上手なんだね!」
私は思わず笑ってしまった。
「お世辞は食べてからにしてください」
「お世辞だなんて。シェフが作ったのと同様、綺麗に作れているから言ったのに」
アーサー様はそう言いながらサンドウィッチを口にした。
「で、味の方はどうかな?」
ライオネル伯爵はにやにや笑いながらアーサー様を凝視して言った。
「美味しいよ。少し甘みがあって。卵の量も絶妙だ」
アーサー様はとても爽やかな笑顔で笑って言った。その笑顔がステキで何だか照れてしまう。
「・・・・・・今日は、卵にお砂糖を入れてみました」
折角褒めてもらったのに、出てきた言葉はそんなものだった。他の人になら、ちゃんと大人の女性として社交辞令の返答ができるのに。アーサー様の前だとうまくいかない。
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