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10 ピクニック当日
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そして、数日を平穏無事に過ごした後、いよいよピクニックの日がやって来た。
ベッキーと選んだ服を着て彼女と同じ馬車に乗っているんだけど。
ーードキドキが止まらない。
昨日の夜までは全然大丈夫だったのに。今日になって、いざアーサー様に会うとなるとなぜかこうなってしまった。
ーーアーサー様が一目惚れだなんて言うから。だから、変に意識しちゃうんだ。
「ねえ、今日の服、変じゃないよね?」
「全然」
「アクセサリーは? このイヤリング、派手すぎる?」
「むしろ地味だと思うけど」
親友は窓の外を見るばかりで私に見向きもせずに言った。
「ねえ、真剣に答えてよぉ」
「エリー、さっきから同じ質問を何度もし過ぎ!! 何回聞いてもあなたの服装は変じゃないし似合ってる!」
いつも明るく優しいベッキーにしては珍しく怖い顔で言った。
「ごめん、しつこくて」
そう言っている間にも心臓がバクバクする。
「もう。どうしちゃったのよ。いつものエリーらしくない。少しは落ち着いたら?」
「そんなこと言われても・・・・・・」
「デートじゃなくて良かったわね。私がついてなきゃ心臓が口から飛び出してるんじゃない?」
「そうかも」
「もう。からかってるんだから、真面目に答えないでよ」
ベッキーは呆れ顔で笑った。
馬車を降りて、待ち合わせの駅に行くと、アーサー様は既に来ていた。
「すみません。おまたせしました」
ドキドキが止まらなくてろくに口も利けなくなった私の代わりにベッキーが言った。
「いえ。俺達も今来たところだから。ね?」
アーサー様はそう言って横にいた男性を見た。彼は私達に向かって微笑み頷いた。
「紹介するよ。こちらはライオネル・ニュルンデル伯爵。俺の乳母の息子、つまりは乳兄弟になる人だ」
ニュルンデル伯爵は短い黒髪のよく似合う好青年だった。
初対面なのに、どこかで会った気がするけど、気のせいかしら?
「はじめまして。公女様」
やっぱりはじめましてだ。
「はじめまして、ニュルンデル伯爵。お会いできて嬉しいですわ」
まだ心臓はドキドキしてるけど。ちゃんと挨拶ができた自分を褒めてあげたい。
「おいおい、嘘はいけないよ」
アーサー様が言った。
しまった! 以前会ったことのある人だったのね。それなのに、初対面のような挨拶をしてしまって恥ずかしい。
「エレノア嬢が困っているじゃないか。ちゃんとしてくれ」
アーサー様が言うと伯爵は後頭部に手を当てて謝ってきた。
「いや。失礼。実は、魔導列車が初めて運行した日に、挨拶をしたんです。アーサーと一緒に。ね?」
伯爵がアーサー様を見ると、アーサー様は「そうだね」と返事をした。
「ごめんなさい。魔導列車に乗れたことが嬉しくて。あの時、周りが見えていなかったんです」
「いえいえ。あれは俺達の最高傑作ですから。そんな風になるまで喜んでくれて嬉しいですよ」
伯爵は爽やかに笑った。
「俺達のってことはニュルンデル伯爵も魔導列車の開発に関わっているのですか?」
「エリー、知らないの? ニュルンデル伯爵が必要な資材を各地の商会から集めて来られたんだから。敏腕な商才をお持ちの伯爵がいなければ資材集めにもっと時間とお金がかかったのよ」
「ありがとう。ライネ伯爵令嬢。そんな風に褒められると何だか照れてしまいますよ」
伯爵とベッキーは知り合いだったのかしら。そう思っていたらベッキーが、「伯爵はローズ王女殿下のお友達でもあるの」と耳打ちしてくれた。
「さあ、話はこれくらいにして改札口に行こうか。列車はもうすぐ来るはずだから」
アーサー様の言葉で私達は歩き始めた。
ベッキーと選んだ服を着て彼女と同じ馬車に乗っているんだけど。
ーードキドキが止まらない。
昨日の夜までは全然大丈夫だったのに。今日になって、いざアーサー様に会うとなるとなぜかこうなってしまった。
ーーアーサー様が一目惚れだなんて言うから。だから、変に意識しちゃうんだ。
「ねえ、今日の服、変じゃないよね?」
「全然」
「アクセサリーは? このイヤリング、派手すぎる?」
「むしろ地味だと思うけど」
親友は窓の外を見るばかりで私に見向きもせずに言った。
「ねえ、真剣に答えてよぉ」
「エリー、さっきから同じ質問を何度もし過ぎ!! 何回聞いてもあなたの服装は変じゃないし似合ってる!」
いつも明るく優しいベッキーにしては珍しく怖い顔で言った。
「ごめん、しつこくて」
そう言っている間にも心臓がバクバクする。
「もう。どうしちゃったのよ。いつものエリーらしくない。少しは落ち着いたら?」
「そんなこと言われても・・・・・・」
「デートじゃなくて良かったわね。私がついてなきゃ心臓が口から飛び出してるんじゃない?」
「そうかも」
「もう。からかってるんだから、真面目に答えないでよ」
ベッキーは呆れ顔で笑った。
馬車を降りて、待ち合わせの駅に行くと、アーサー様は既に来ていた。
「すみません。おまたせしました」
ドキドキが止まらなくてろくに口も利けなくなった私の代わりにベッキーが言った。
「いえ。俺達も今来たところだから。ね?」
アーサー様はそう言って横にいた男性を見た。彼は私達に向かって微笑み頷いた。
「紹介するよ。こちらはライオネル・ニュルンデル伯爵。俺の乳母の息子、つまりは乳兄弟になる人だ」
ニュルンデル伯爵は短い黒髪のよく似合う好青年だった。
初対面なのに、どこかで会った気がするけど、気のせいかしら?
「はじめまして。公女様」
やっぱりはじめましてだ。
「はじめまして、ニュルンデル伯爵。お会いできて嬉しいですわ」
まだ心臓はドキドキしてるけど。ちゃんと挨拶ができた自分を褒めてあげたい。
「おいおい、嘘はいけないよ」
アーサー様が言った。
しまった! 以前会ったことのある人だったのね。それなのに、初対面のような挨拶をしてしまって恥ずかしい。
「エレノア嬢が困っているじゃないか。ちゃんとしてくれ」
アーサー様が言うと伯爵は後頭部に手を当てて謝ってきた。
「いや。失礼。実は、魔導列車が初めて運行した日に、挨拶をしたんです。アーサーと一緒に。ね?」
伯爵がアーサー様を見ると、アーサー様は「そうだね」と返事をした。
「ごめんなさい。魔導列車に乗れたことが嬉しくて。あの時、周りが見えていなかったんです」
「いえいえ。あれは俺達の最高傑作ですから。そんな風になるまで喜んでくれて嬉しいですよ」
伯爵は爽やかに笑った。
「俺達のってことはニュルンデル伯爵も魔導列車の開発に関わっているのですか?」
「エリー、知らないの? ニュルンデル伯爵が必要な資材を各地の商会から集めて来られたんだから。敏腕な商才をお持ちの伯爵がいなければ資材集めにもっと時間とお金がかかったのよ」
「ありがとう。ライネ伯爵令嬢。そんな風に褒められると何だか照れてしまいますよ」
伯爵とベッキーは知り合いだったのかしら。そう思っていたらベッキーが、「伯爵はローズ王女殿下のお友達でもあるの」と耳打ちしてくれた。
「さあ、話はこれくらいにして改札口に行こうか。列車はもうすぐ来るはずだから」
アーサー様の言葉で私達は歩き始めた。
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