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6 一目惚れの真相
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私達は再びテラスに戻るとお菓子を食べながら他愛のない話をした。好きな音楽や演劇について。休日の過ごし方や、最近、関心のあるニュースなんかも。
少しぎこちなくはあったけど、それでも思った以上に私達の話は弾んだ。
様々な話をしていく中で、話題は魔導列車のことについて移った。
「エレノア嬢はあの日以来、魔導列車に乗られたことがありましたか」
「いいえ。この間まで学生の身でしたから遠出をする機会がなくて。でも、また乗れる機会があれば乗りたいと思っています」
「そうか。なら、乗る?」
「へ?」
急な誘いに思わず返事にまごついてしまった。そんな私を見て、アーサー様は「説明が足りなかったね」と苦笑した。
「来月、改良された魔導列車を走らす予定なんだよ。前よりも少ない燃料で速く走れるんだ」
「まあ! それならより交通の便がよくなりますね」
「そうだね」
にこりとアーサー様は笑った。
「それで、改良版の初めのお客様として、またエレノア嬢に来ていただきたいなって」
「どうして、私に?」
「物の価値が分かる人だから。それに・・・・・・」
アーサー様は言い淀んだ。どうしたんだろう。あまり聞かれたくないことだったのかしら?
「あの日、魔導列車の中で喜んでいたエレノア嬢のことが忘れられないんだ」
私は思わず飲んでいたジュースをこぼしそうになった。
「ごめんよ。こんなことを言うなんて気持ち悪いよね」
「いえ。驚いただけで、気持ち悪いなんてそんなこと」
気持ち悪いというより、気恥ずかしい。
「あの、こんなことをお聞きするのは失礼だと思いますが」
「何だい?」
「"一目惚れ"というのは、本当だったんですか」
「う、うん」
アーサー様は顔を真っ赤にした。
「エレノア嬢には黙っていてくれって、モニャーク公爵には言ったんだけど。あなたは聞いたんだね」
「ええ、はい」
お父様ったら、口止めをされていたのなら、どうしてそのことを教えてくれないのかしら!
「こんな話をしてから言うのもあれだけど、一緒に魔導列車に乗って日帰りの旅行でもどうかな? 列車と馬車で1時間くらいの場所にピクニックにちょうどいい湖があるんだ」
「シリナ湖ですか」
アーサー様は頷いた。
シリナ湖は美しい景観とボート遊びができるスポットとして、貴族の中で密かな人気があった。学生時代、ベッキーと「いつか一緒に行きたいね」と話していた記憶がある。
「ベッキーと。ライネ伯爵令嬢と一緒でもいいですか」
「勿論だよ。ピクニックは仲のいい友人がいた方が楽しいからね。せっかくだから俺も友人を誘ってもいいかな」
ある程度人がいた方が緊張しなくて済みそうだ。
「ええ。ぜひ」
私が微笑むとアーサー様もにこりと笑った。
「それにしても、ピクニックなんて何年ぶりだろう」
「私もです」
学園生活は勉強や試験の他、サロンでの人脈作りに追われていた。貴族的で大人な付き合い(とは言ってもこの時はまだ子供だったのだけれど)ではない交流をするのも久しぶりだった。
「今からとても楽しみですわ」
「俺もだよ」
アーサー様はとても嬉しそうに笑った。
少しぎこちなくはあったけど、それでも思った以上に私達の話は弾んだ。
様々な話をしていく中で、話題は魔導列車のことについて移った。
「エレノア嬢はあの日以来、魔導列車に乗られたことがありましたか」
「いいえ。この間まで学生の身でしたから遠出をする機会がなくて。でも、また乗れる機会があれば乗りたいと思っています」
「そうか。なら、乗る?」
「へ?」
急な誘いに思わず返事にまごついてしまった。そんな私を見て、アーサー様は「説明が足りなかったね」と苦笑した。
「来月、改良された魔導列車を走らす予定なんだよ。前よりも少ない燃料で速く走れるんだ」
「まあ! それならより交通の便がよくなりますね」
「そうだね」
にこりとアーサー様は笑った。
「それで、改良版の初めのお客様として、またエレノア嬢に来ていただきたいなって」
「どうして、私に?」
「物の価値が分かる人だから。それに・・・・・・」
アーサー様は言い淀んだ。どうしたんだろう。あまり聞かれたくないことだったのかしら?
「あの日、魔導列車の中で喜んでいたエレノア嬢のことが忘れられないんだ」
私は思わず飲んでいたジュースをこぼしそうになった。
「ごめんよ。こんなことを言うなんて気持ち悪いよね」
「いえ。驚いただけで、気持ち悪いなんてそんなこと」
気持ち悪いというより、気恥ずかしい。
「あの、こんなことをお聞きするのは失礼だと思いますが」
「何だい?」
「"一目惚れ"というのは、本当だったんですか」
「う、うん」
アーサー様は顔を真っ赤にした。
「エレノア嬢には黙っていてくれって、モニャーク公爵には言ったんだけど。あなたは聞いたんだね」
「ええ、はい」
お父様ったら、口止めをされていたのなら、どうしてそのことを教えてくれないのかしら!
「こんな話をしてから言うのもあれだけど、一緒に魔導列車に乗って日帰りの旅行でもどうかな? 列車と馬車で1時間くらいの場所にピクニックにちょうどいい湖があるんだ」
「シリナ湖ですか」
アーサー様は頷いた。
シリナ湖は美しい景観とボート遊びができるスポットとして、貴族の中で密かな人気があった。学生時代、ベッキーと「いつか一緒に行きたいね」と話していた記憶がある。
「ベッキーと。ライネ伯爵令嬢と一緒でもいいですか」
「勿論だよ。ピクニックは仲のいい友人がいた方が楽しいからね。せっかくだから俺も友人を誘ってもいいかな」
ある程度人がいた方が緊張しなくて済みそうだ。
「ええ。ぜひ」
私が微笑むとアーサー様もにこりと笑った。
「それにしても、ピクニックなんて何年ぶりだろう」
「私もです」
学園生活は勉強や試験の他、サロンでの人脈作りに追われていた。貴族的で大人な付き合い(とは言ってもこの時はまだ子供だったのだけれど)ではない交流をするのも久しぶりだった。
「今からとても楽しみですわ」
「俺もだよ」
アーサー様はとても嬉しそうに笑った。
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