4 / 24
3 パーティの招待
しおりを挟む
「それでエリーはどうするつもりなの」
いつも明るいベッキーの顔が曇っている。最近、親友には心配をかけてばかりだ。
卒業パーティから三日経った今日、私はようやくベッキーの家に行くことができた。
ベッキーには、正式に婚約解消したことを報告した。そして、相談も兼ねて大公殿下からの求婚されていることを話した。
「エリー? 聞いてる?」
「ごめん。聞いてるよ」
「今日は顔色が悪いし、反応が鈍くて心配だわ」
「ここ数日の疲れが出てるんだと思う。家に帰ってゆっくり休めば治ると思うから気にしないで」
「そっか。大変だったもんね」
ベッキーは使用人にハーブティーを淹れるように告げた。
この二日目間は精神的にとても疲れた。第二王子派の筆頭である第一王妃殿下からの謝罪と撤回を断って、婚約破棄をする旨を国王陛下に申し上げた。たったそれだけのことしかしていないけど、ひどい緊張感と嫌悪感に苛まれ、ストレスが尋常じゃなかった。婚約解消がスムーズに行われたことが不幸中の幸いだったのかもしれない。
出されたハーブティーを飲むとその温かさに癒やされる。
「せめて大公殿下がどんなお方なのか実際にこの目で確かめられたらいいんだけど」
「会ってみる?」
ベッキーの言葉でお茶をこぼしそうになった。
「ベッキー、大公殿下と親しい間柄だったの?」
「そんなわけないじゃない。今度、王女殿下が主催するパーティに大公殿下もいらっしゃるのよ」
「ああ、そういうこと」
ベッキーは卒業してからケイン様の腹違いの姉であるローズ・ルトワール王女殿下の侍女となった。
ベッキーは学園に在籍中から王女殿下の侍女見習いとして王宮に出入りしていた。王女殿下のお話相手と社交活動に関することを任されることになったと聞いていたけど。まさか卒業をしてすぐにパーティの準備を任されているなんて思わなかった。ベッキーはなかなかのやり手なのかもしれない。
「それで、どうするの? 会ってみる?」
「お会いできるならそうしたいけど。ただ、王女殿下のパーティに私が行ってもいいものかしら」
「そこは私が取り付けておくわ! 明日までに招待状を届けてもらうわね」
「明日? 王女殿下は本当にお許しになるの?」
「大丈夫よ。実は、今回のパーティにエリーも招待する予定だったんだけど、ケイン様とあんなことがあったじゃない? 王女殿下はエリーが笑いものになったらいけないと気を遣って下さって招待を取りやめにしたのよ。招待状を送れば真面目なエリーが無理してくるかもしれないからって」
「そうだったんだ」
王女殿下は本当にお優しい方だ。今度お会いしたら何かお礼の品を渡そう。
「大公殿下、いい人だといいなあ」
そう言ったベッキーの顔はまるで夢見る乙女のように無垢だった。
「そうね」
「もう! エリー、自分の縁談の話なんだよ。ちょっとはドキドキしないの?」
「ドキドキより不安の方が大きいかな」
「そっか。不安かあ」
「うん。不安。でも、ドキドキできるならしてみたいかなっ」
そう言って頑張って笑ってみた。これ以上、親友に心配をかけたくなくなかった。ベッキーも、私の気持ちを察してくれたのか、「ドキドキの予感がするから大丈夫だよ」と言って笑ってくれた。
「神様、どうかエリーに新たな春が来ますように」
「お願いします」
暗い気持ちを吹き飛ばすように二人で神様に祈ってみた。冗談半分、本気半分で。
「次こそ、私の恋が上手くいきますように!」
いつも明るいベッキーの顔が曇っている。最近、親友には心配をかけてばかりだ。
卒業パーティから三日経った今日、私はようやくベッキーの家に行くことができた。
ベッキーには、正式に婚約解消したことを報告した。そして、相談も兼ねて大公殿下からの求婚されていることを話した。
「エリー? 聞いてる?」
「ごめん。聞いてるよ」
「今日は顔色が悪いし、反応が鈍くて心配だわ」
「ここ数日の疲れが出てるんだと思う。家に帰ってゆっくり休めば治ると思うから気にしないで」
「そっか。大変だったもんね」
ベッキーは使用人にハーブティーを淹れるように告げた。
この二日目間は精神的にとても疲れた。第二王子派の筆頭である第一王妃殿下からの謝罪と撤回を断って、婚約破棄をする旨を国王陛下に申し上げた。たったそれだけのことしかしていないけど、ひどい緊張感と嫌悪感に苛まれ、ストレスが尋常じゃなかった。婚約解消がスムーズに行われたことが不幸中の幸いだったのかもしれない。
出されたハーブティーを飲むとその温かさに癒やされる。
「せめて大公殿下がどんなお方なのか実際にこの目で確かめられたらいいんだけど」
「会ってみる?」
ベッキーの言葉でお茶をこぼしそうになった。
「ベッキー、大公殿下と親しい間柄だったの?」
「そんなわけないじゃない。今度、王女殿下が主催するパーティに大公殿下もいらっしゃるのよ」
「ああ、そういうこと」
ベッキーは卒業してからケイン様の腹違いの姉であるローズ・ルトワール王女殿下の侍女となった。
ベッキーは学園に在籍中から王女殿下の侍女見習いとして王宮に出入りしていた。王女殿下のお話相手と社交活動に関することを任されることになったと聞いていたけど。まさか卒業をしてすぐにパーティの準備を任されているなんて思わなかった。ベッキーはなかなかのやり手なのかもしれない。
「それで、どうするの? 会ってみる?」
「お会いできるならそうしたいけど。ただ、王女殿下のパーティに私が行ってもいいものかしら」
「そこは私が取り付けておくわ! 明日までに招待状を届けてもらうわね」
「明日? 王女殿下は本当にお許しになるの?」
「大丈夫よ。実は、今回のパーティにエリーも招待する予定だったんだけど、ケイン様とあんなことがあったじゃない? 王女殿下はエリーが笑いものになったらいけないと気を遣って下さって招待を取りやめにしたのよ。招待状を送れば真面目なエリーが無理してくるかもしれないからって」
「そうだったんだ」
王女殿下は本当にお優しい方だ。今度お会いしたら何かお礼の品を渡そう。
「大公殿下、いい人だといいなあ」
そう言ったベッキーの顔はまるで夢見る乙女のように無垢だった。
「そうね」
「もう! エリー、自分の縁談の話なんだよ。ちょっとはドキドキしないの?」
「ドキドキより不安の方が大きいかな」
「そっか。不安かあ」
「うん。不安。でも、ドキドキできるならしてみたいかなっ」
そう言って頑張って笑ってみた。これ以上、親友に心配をかけたくなくなかった。ベッキーも、私の気持ちを察してくれたのか、「ドキドキの予感がするから大丈夫だよ」と言って笑ってくれた。
「神様、どうかエリーに新たな春が来ますように」
「お願いします」
暗い気持ちを吹き飛ばすように二人で神様に祈ってみた。冗談半分、本気半分で。
「次こそ、私の恋が上手くいきますように!」
42
お気に入りに追加
856
あなたにおすすめの小説
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました!
なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!

悪役令嬢は楽しいな
kae
恋愛
気が弱い侯爵令嬢、エディット・アーノンは、第一王子ユリウスの婚約者候補として、教養を学びに王宮に通っていた。
でも大事な時に緊張してしまうエディットは、本当は王子と結婚なんてしてくない。実はユリウス王子には、他に結婚をしたい伯爵令嬢がいて、その子の家が反対勢力に潰されないように、目くらましとして婚約者候補のふりをしているのだ。
ある日いつものいじめっ子たちが、小さな少年をイジメているのを目撃したエディットが勇気を出して注意をすると、「悪役令嬢」と呼ばれるようになってしまった。流行りの小説に出てくる、曲がったことが大嫌いで、誰に批判されようと、自分の好きな事をする悪役の令嬢エリザベス。そのエリザベスに似ていると言われたエディットは、その日から、悪役令嬢になり切って生活するようになる。
「オーッホッホ。私はこの服が着たいから着ているの。流行なんて関係ないわ。あなたにはご自分の好みという物がないのかしら?」
悪役令嬢になり切って言いたいことを言うのは、思った以上に爽快で楽しくて……。
私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます
めぐめぐ
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。
気が付くと闇の世界にいた。
そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。
この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。
そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを――
全てを知った彼女は決意した。
「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」
※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪
※よくある悪役令嬢設定です。
※頭空っぽにして読んでね!
※ご都合主義です。
※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる