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3 パーティの招待
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「それでエリーはどうするつもりなの」
いつも明るいベッキーの顔が曇っている。最近、親友には心配をかけてばかりだ。
卒業パーティから三日経った今日、私はようやくベッキーの家に行くことができた。
ベッキーには、正式に婚約解消したことを報告した。そして、相談も兼ねて大公殿下からの求婚されていることを話した。
「エリー? 聞いてる?」
「ごめん。聞いてるよ」
「今日は顔色が悪いし、反応が鈍くて心配だわ」
「ここ数日の疲れが出てるんだと思う。家に帰ってゆっくり休めば治ると思うから気にしないで」
「そっか。大変だったもんね」
ベッキーは使用人にハーブティーを淹れるように告げた。
この二日目間は精神的にとても疲れた。第二王子派の筆頭である第一王妃殿下からの謝罪と撤回を断って、婚約破棄をする旨を国王陛下に申し上げた。たったそれだけのことしかしていないけど、ひどい緊張感と嫌悪感に苛まれ、ストレスが尋常じゃなかった。婚約解消がスムーズに行われたことが不幸中の幸いだったのかもしれない。
出されたハーブティーを飲むとその温かさに癒やされる。
「せめて大公殿下がどんなお方なのか実際にこの目で確かめられたらいいんだけど」
「会ってみる?」
ベッキーの言葉でお茶をこぼしそうになった。
「ベッキー、大公殿下と親しい間柄だったの?」
「そんなわけないじゃない。今度、王女殿下が主催するパーティに大公殿下もいらっしゃるのよ」
「ああ、そういうこと」
ベッキーは卒業してからケイン様の腹違いの姉であるローズ・ルトワール王女殿下の侍女となった。
ベッキーは学園に在籍中から王女殿下の侍女見習いとして王宮に出入りしていた。王女殿下のお話相手と社交活動に関することを任されることになったと聞いていたけど。まさか卒業をしてすぐにパーティの準備を任されているなんて思わなかった。ベッキーはなかなかのやり手なのかもしれない。
「それで、どうするの? 会ってみる?」
「お会いできるならそうしたいけど。ただ、王女殿下のパーティに私が行ってもいいものかしら」
「そこは私が取り付けておくわ! 明日までに招待状を届けてもらうわね」
「明日? 王女殿下は本当にお許しになるの?」
「大丈夫よ。実は、今回のパーティにエリーも招待する予定だったんだけど、ケイン様とあんなことがあったじゃない? 王女殿下はエリーが笑いものになったらいけないと気を遣って下さって招待を取りやめにしたのよ。招待状を送れば真面目なエリーが無理してくるかもしれないからって」
「そうだったんだ」
王女殿下は本当にお優しい方だ。今度お会いしたら何かお礼の品を渡そう。
「大公殿下、いい人だといいなあ」
そう言ったベッキーの顔はまるで夢見る乙女のように無垢だった。
「そうね」
「もう! エリー、自分の縁談の話なんだよ。ちょっとはドキドキしないの?」
「ドキドキより不安の方が大きいかな」
「そっか。不安かあ」
「うん。不安。でも、ドキドキできるならしてみたいかなっ」
そう言って頑張って笑ってみた。これ以上、親友に心配をかけたくなくなかった。ベッキーも、私の気持ちを察してくれたのか、「ドキドキの予感がするから大丈夫だよ」と言って笑ってくれた。
「神様、どうかエリーに新たな春が来ますように」
「お願いします」
暗い気持ちを吹き飛ばすように二人で神様に祈ってみた。冗談半分、本気半分で。
「次こそ、私の恋が上手くいきますように!」
いつも明るいベッキーの顔が曇っている。最近、親友には心配をかけてばかりだ。
卒業パーティから三日経った今日、私はようやくベッキーの家に行くことができた。
ベッキーには、正式に婚約解消したことを報告した。そして、相談も兼ねて大公殿下からの求婚されていることを話した。
「エリー? 聞いてる?」
「ごめん。聞いてるよ」
「今日は顔色が悪いし、反応が鈍くて心配だわ」
「ここ数日の疲れが出てるんだと思う。家に帰ってゆっくり休めば治ると思うから気にしないで」
「そっか。大変だったもんね」
ベッキーは使用人にハーブティーを淹れるように告げた。
この二日目間は精神的にとても疲れた。第二王子派の筆頭である第一王妃殿下からの謝罪と撤回を断って、婚約破棄をする旨を国王陛下に申し上げた。たったそれだけのことしかしていないけど、ひどい緊張感と嫌悪感に苛まれ、ストレスが尋常じゃなかった。婚約解消がスムーズに行われたことが不幸中の幸いだったのかもしれない。
出されたハーブティーを飲むとその温かさに癒やされる。
「せめて大公殿下がどんなお方なのか実際にこの目で確かめられたらいいんだけど」
「会ってみる?」
ベッキーの言葉でお茶をこぼしそうになった。
「ベッキー、大公殿下と親しい間柄だったの?」
「そんなわけないじゃない。今度、王女殿下が主催するパーティに大公殿下もいらっしゃるのよ」
「ああ、そういうこと」
ベッキーは卒業してからケイン様の腹違いの姉であるローズ・ルトワール王女殿下の侍女となった。
ベッキーは学園に在籍中から王女殿下の侍女見習いとして王宮に出入りしていた。王女殿下のお話相手と社交活動に関することを任されることになったと聞いていたけど。まさか卒業をしてすぐにパーティの準備を任されているなんて思わなかった。ベッキーはなかなかのやり手なのかもしれない。
「それで、どうするの? 会ってみる?」
「お会いできるならそうしたいけど。ただ、王女殿下のパーティに私が行ってもいいものかしら」
「そこは私が取り付けておくわ! 明日までに招待状を届けてもらうわね」
「明日? 王女殿下は本当にお許しになるの?」
「大丈夫よ。実は、今回のパーティにエリーも招待する予定だったんだけど、ケイン様とあんなことがあったじゃない? 王女殿下はエリーが笑いものになったらいけないと気を遣って下さって招待を取りやめにしたのよ。招待状を送れば真面目なエリーが無理してくるかもしれないからって」
「そうだったんだ」
王女殿下は本当にお優しい方だ。今度お会いしたら何かお礼の品を渡そう。
「大公殿下、いい人だといいなあ」
そう言ったベッキーの顔はまるで夢見る乙女のように無垢だった。
「そうね」
「もう! エリー、自分の縁談の話なんだよ。ちょっとはドキドキしないの?」
「ドキドキより不安の方が大きいかな」
「そっか。不安かあ」
「うん。不安。でも、ドキドキできるならしてみたいかなっ」
そう言って頑張って笑ってみた。これ以上、親友に心配をかけたくなくなかった。ベッキーも、私の気持ちを察してくれたのか、「ドキドキの予感がするから大丈夫だよ」と言って笑ってくれた。
「神様、どうかエリーに新たな春が来ますように」
「お願いします」
暗い気持ちを吹き飛ばすように二人で神様に祈ってみた。冗談半分、本気半分で。
「次こそ、私の恋が上手くいきますように!」
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