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 旅は順調に進んだ。ナーシャという火の女神を祀る村を出て三日後、私達は相変わらず馬車に乗って移動していた。エルドノア様は、時折、通り過ぎていく村から神に祈る声が聞こえることを教えてくれた。
 この国では"邪神"の崇拝は禁じられているけれど、人々は彼らに祈らずにはいられないようだ。

「この村では土の神、アレスとイリスを信仰している人がいるね。作った作物を自分たちで腹いっぱいになるまで食べたいんだって。かわいい願いだ」
 カーテンを開けて通り過ぎていく村の様子を見る。
 その村は、農村なのだろうけど、畑が荒れ果てていてよい作物ができるようには見えなかった。
 きっと祈っている人は苦労しているのだろう。

 それにしても、お腹が空いてきた。この間、生命力を分け与えられたばかりだというのに。燃費の悪い身体だとつくづく思う。

「お腹が空いたのなら、ここでするかい?」
「嫌です。まだ、我慢できますから」
「そう? でも、我慢は身体に毒だよ?」

 向かいあう形で座っていたエルドノア様が、いきなり私の膝に座ってきた。抵抗する間もなく、唇を重ねられる。
「んふっ、ふあっ」
 深い口づけをされて頭がぼーっとする。
 こんなところでするのが嫌で、彼から逃げたかった。でも、膝に乗られているせいで、動くことができない。

「はぁっ、はぁ、ふぁ」
 エルドノア様は口づけをやめると、何事もなかったかのように元の場所へと座った。
「我慢できるって、言ったじゃないですか」
「うん。だから、とりあえずの応急処置だよ」
 意味が分からない。

 ーーキスだけでおしまいだなんて、物足りない。

 もっとして欲しいという思いが込み上げてくる。私はそれを振り払うために頭を振った。

「かわいい私の信徒。そんなに怖い顔をしないで」
 憎らしい人だ。散々人をからかって、おもちゃにして。
「疲れました。少し眠ってもいいですか」
「いいよ」
 そう言って、エルドノア様はなぜか私の隣に座った。
「膝を貸してあげる。窮屈だろうけど、横になるといい」
 彼の提案をありがたく受け入れて膝を枕代わりにした。足は伸ばせず、座ったままの形に近いけど、しょうがない。

 エルドノア様に優しく頭を撫でられる。その感触が気持ちよくて、私はすぐに眠りについた。







 目が覚めたら馬車の中ではなかった。見知らぬ部屋のベッドの上に横たわっていた。
 起き上がろうとして、違和感に気づく。私は全裸にされた上、拘束されていた。
 手を頭の上でひとまとめにされた上、ベッドの柵にくくりつけられている。

 ーーどうしてこんな状況に?

 部屋の扉が開き、エルドノア様が入ってきた。
「おはよう、かわいい私の信徒」
「どういうことです? なんでこんなことをしたんですか」
「眠っている君を脱がせて縛りつけたのは私じゃないよ」
「じゃあ誰なんです!?」
「そんなに怒らないで。ちゃんと説明するから」

 エルドノア様によると、私達の乗っていた馬車の御者は、裏組織と繋がりのある男だったそうだ。
 だから、私達の乗った馬車は、闇商人が滞在している山村へと辿り着いた。
 御者はエルドノア様を闇商人に売り飛ばし、私を自分の慰み者にする予定だったらしい。眠っていて起きない私は好都合ということで、服を脱がされ、縄で縛られたそうだ。

「でも、愛しい私の信徒が誰かに汚されるなんて我慢ならないことだからね。行為を始めようとしたところで御者と闇商人を私の糧にしたよ」
 エルドノア様はそう言って笑った。

 説明している間、彼はずっと私の胸をいじって遊んでいる。
「やめてっ、縄を解いて下さい」
「拘束されている姿を見たら、何だかいじめたくなってね」
「拘束ならいつもしてるじゃないですか」

 行為の最中、エルドノア様に命令されたら、その命令の通りに身体が動かなくなってしまう。今みたいに手を頭の上で重ねてじっとしていたことだってあるのに。

「分かってないなあ。縄で縛られてるから視覚的にくるものがあるんだよ」
「そんなのっ、知らなっ、ひゃっ」

 ぺろりと胸の先を舐められた。

「村の人から聞いたんだけど、この村から本来の目的地に向かう馬車は明日の朝にならないと来ないんだって。だから、今日はここで過ごそう」

 ーーああ、何だか嫌な予感がする。

「ついでにこのままお前の食事をしようね。そういえばさっき、こんなもの見つけたんだ」
 エルドノア様は黒い布を取り出した。
「何ですか、それ」
「目隠しだよ。今日はこれを使って遊ぼう」
 嫌だという声を無視してエルドノア様は私に目隠しをした。視界が真っ暗になり、何も見えなくなった。

「人は目が見えなくなると別の感覚が鋭くなるって聞いたことがあるんだけど本当なの?」
 そんなことを言われながら下っ腹にキスされた。ぴくりと反応してしまったらくすくすと笑う声が聞こえた。

「ひゃっ」
 いきなり胸を揉まれて身体がびくりと跳ねる。胸の先を弄られている感覚がして彼の手から逃れようと身体をよじる。

 ーー怖い。

 急に触れられて、どこをどういう風に触られているのかわからなくて怖かった。

「大丈夫。怖いことなんかしないから」
 唇に柔らかい感触がして、ぬめりとしたものが入り込んでくる。この少しざらついた感触は舌だった。

 ーーああ、甘い。いつも通りの、よく知っている甘さだ。

 チロチロと彼の舌を舐めると頭がぼんやりしてくる。それと同時に目が見えない恐怖心も薄れていった。今日くらいは、この感覚に身を任せてもいいかもしれない。

「ほら、怖いことなんか何もないでしょ?」
「ひゃうっ」

 股の割れ目をすっとなぞられた。まさかもう触ってくるなんて思わなかったからすごく驚いた。
 割れ目に触れられる度にびくびくと身体が反応する。

「かわいいなあ」
 そんなことを言いながらエルドノア様は私の太ももを持って足を広げた。
 挿入されるのかと思って身構えたら何かが這う感触がした。

 ーー何、これ?

 最初は何をされているのか分からなかった。でも、びちゃびちゃという音で分かってしまった。下の口を舐められているんだ。

「やっ、ひゃ、んんぅ」
 途端に恥ずかしくなって身を捩った。でも、足をエルドノア様の腕によってしっかりと固定されていて動けない。
 エルドノア様はその間もべちゃべちゃと下の口を舐め回し、吸い付ついてくる。
「やだっ、やっ、汚いからやめて」
「汚くないよ」
 恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がないのに、下の口とお腹はどんどん熱くなっていく。

「お前のここはこんなに喜んでいるのに、どうしてそんなに嫌がるんだ」
「恥ずかしいからっ、それにきたな、い。んぅぅ、いやぁっ」
「汚くないって言っているだろう」

 下の口に舌が入り込んでくる感触がする。指や彼の物とは違う感覚に戸惑うほかなかった。それと同時に意識がいつも以上にぼんやりする。

「やだっ、何かへんっ、だから。やめっ。あんっ」

 足をジタバタさせて抗った。でもエルドノア様は舌を入れるのをやめてくれない。

 ーーこれじゃない。欲しいのはこれじゃない。私が欲しいのは・・・・・・。

 足をバタつかせながら、いつの間にかそんなことを考えていた。
「エルドノア、さまのが、いい」

 ーー私、何を言ってるんだろう。

「舌じゃなくて、エルドノアさまの。早く、ちょうだい」
 ぼんやりとする意識の中で私はたしかにそう言っていた。

「ティア?」
 名前を呼んでもらえてうれしい。でも、欲しいものはくれない。
「ああ、そうか。下から私の唾液を吸収したからか。酔っているんだね」
「はやく、ちょうだい」
 急かしたら、太ももから腕が離れていった。それから腰を引き寄せられて固いものが割れ目に当った。ぐりぐりと押し当てられて、ゆっくりと入ってくる。

「あんっ、エルドノアさまの、ものだわ」
 目は見えないけど、これは確かに彼のものだった。嬉しくて嬉しくて、締めつけが止まらない。
「う、あんっ、すきっ」
「好きってどっちのこと? 私? それとも私のもののことかな?」
 おかしなことを聞いてくる。どうして分かりきったことを聞いてくるんだろう。
「エルドノア、さま、だよ」
 彼のものがぴくりと動いた。少し大きくなった気がする。
 そんな彼が愛おしくて抱きしめたかったけど、腕が拘束されていてできなかった。

「キスして?」
 おねだりをしたらエルドノア様は応えてくれた。口の中を舌が這うのと同時に腰を突かれる。

「ふぁっ、あんっ、あん」
 目が見えないせいもあって下に与えられる甘い痺れがいつも以上に気持ちよかった。
 ずっとその感覚を味わっていたかったけど、エルドノア様は彼の物を引き抜いてしまった。

「やだっ、まだシたいの」
「かわいい子」
 そう言いながら彼は割れ目を指でなぞった。
「ちょっと挿れただけでもうぐちゅぐちゅだ」
 指が下の口に入ってくる感覚がした。二本三本と増やせされて、中をかき回すように動かされる。

「やっ、はやく挿れてっ」
「夜は長いんだよ? そんなに急がなくてもいいじゃないか」
「やだ、はやく欲しいのっ」
「我儘なお姫様だ」
 エルドノア様は指を引き抜くと私をうつ伏せにした。
 そして望んでいたものが挿れられる。彼は私の胸とベッドの隙間に手を入れると腰を振り始めた。

「あんっ、あっ、はぁ、あっ」
 腰を突かれる度に胸の下に置かれた手に乳首が擦られた。軽い刺激なのにそれがかえって気持ちよかった。 
「んっ、あん、あっ」

 彼のものがより奥まで届くように少しだけ腰を浮かせた。そうしたら狙った通り、深いところまで届く。

 ーーこのままイキたい。

「ティア、してほしいことがあるならちゃんと口で言ってごらん」
「あんっ、イキたいですっ、イカせてください、あっ、あん。エルドノアさまといっしょが、いいっ。いっしょに、あっ」
「いいよ、一緒にいこうね」

 私は嬉しくて笑った。

 ーーああ、エルドノア様は今どんな顔をしているのかな。

 彼の顔を見たくても目隠しとこの体勢のせいで見ることができない。
 エルドノア様も私と同じ気持ちだったらいいのに。

 私の気持ちを知ってか知らずか、エルドノア様は激しく腰を振った。
「あんっ、あっ、あっ」
 奥まで快楽の波が押し寄せてくる。気持ち良すぎて苦しかった。

「やっ、いくっ、ん"ん、あっ、あっ、いっちゃうっ」
 
 全身に快感が走り抜けた瞬間、エルドノアの動きが止まった。お腹の中が熱くなっていく。そして、エルドノア様の荒い息遣いが聞こえた。

「だいすき」
 そう言ったら、エルドノア様は私の身体に覆いかぶさるように抱きしめてきた。耳がくすぐったい。きっとキスをしてくれている。

 エルドノア様は下の口から彼のものを引き抜くと手を縛っていた縄と目隠しをはずしてくれた。

「痕になってる」
 エルドノア様はまだ感覚の戻らない私の手を取って言った。見てみればそこは赤紫色に変色している。
 フィアロン公爵に飼われていた時のことを思い出して気持ち悪さが込み上げてきた。慌てて手を引っ込めようとしたら、エルドノア様に強く掴まれた。

「大丈夫」
 彼はそう言って縄の痕に口づけた。醜く変色した箇所がみるみるうちに元に戻っていく。
「ありがとう」
 エルドノア様は優しく笑って頭を撫でてくれた。
「寝よう」
 彼は私を抱きしめて横になった。そしてそのままトントンと優しく背中を叩かれる。それが気持ちよくて私は彼の胸に顔を埋めて目を閉じた。

「おやすみ。いい夢を見てね」
 優しい彼の声に私は軽く頷いた。
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