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ーーフィアロン公爵邸に足を踏み入れたものは、二度と生きて帰ることができない。あそこに住む女公爵は恐ろしい悪魔だ。
そんな私の悪評は、公爵領はおろか王都にまで及んでいるらしい。
だから今回も、王室の調査団と異世界から召喚されたという聖女が屋敷にやってきた。
"抜き打ち"という体にはなっていたけれど、私はこれでも公爵だ。調査団が来る一日前に伝令を持った使者がやって来た。使者は調査団が来訪することに対する断りを入れに来たのだ。
私は彼らを拒否することなく、女公爵として屋敷へ迎え入れることにした。向こうから勝手に生贄がやってくるなんて、大歓迎だ。
一日もあれば、屋敷に私とエルドノア様以外の人が住んでいるかのように見せかけられる。
エルドノア様は魔法を使うと泥から人形を作った。泥人形たちはただの人にしか見えないほど精巧な作りだ。
泥人形たちを使用人に仕立て上げ、屋敷の隅々まで片付けさせた。そして、見られては困るもの(例えばフィアロン公爵が所有していた邪神を喚ぶための魔導書)は、焼いたり隠したりした。
だから、調査団が来た時には、屋敷はただの貴族の家となっていた。
「お待ちしておりました。我が屋敷へようこそ」
調査団の代表と名乗った若い男、ジブリデにそう挨拶をしたのだけれど、返事はなかった。
ジブリデはエルドノア様には劣るものの端正で美しい顔をした人だった。でも、きれいなのは顔だけで、身体はそんなによさそではなかった。鍛えられてはいない、いかにも文官という身体つきだ。
ジブリデは眉間に皺を寄せた。どうやら彼をまじまじと品評しすぎたみたいだ。
でも文句は言わせない。だって、ミオという聖女が私のつま先から頭の天辺までを舐め回すように見ていたのだから。
ミオは私の品評を終えると、赤毛のイレトという男に耳打ちをした。イレトは屈強でいかにも武人といった身体つきをしていた。顔も身体も悪くはないのだけれど、彼の身体にところどころ傷跡が見えるのが気になる。
「皆様のお気が済むまで屋敷をお調べください。また、僭越ながら皆様がお泊りするお部屋もご用意させていただきました」
私はそばにいた使用人もとい泥人形に、「後ほど部屋へと案内するように」と命令した。泥人形は「承知いたしました」と返事をした。
「では、私はこれで失礼します」
「待て」
立ち去ろうとした私をジブリデが引き止めた。
「お前はここにいろ」
「まあ? なぜです?」
「なぜだか分からんのか」
「ええ。私はあなたたちが言うような怪しいことは何もしていませんし、こう見えて仕事が忙しいのです。失礼させていただきますね」
「待て、行っていいとは一言も言っていないぞ」
ジブリデのそばにいた軍人たちが、私の周囲を取り囲んだ。
「証拠隠滅の可能性もある。王命によって与えられた権限であなたを拘束させてもらう」
ジブリデはそう言うと軍人たちに私を連れて行くように命令した。
私は屋敷の別館にある、使用人用の部屋の一つに拘束された。窓は外から塞がれ、部屋の外には常に見張りがいるようだった。
灯りとなるランタンは渡されたのだけど。この部屋には寝具と机と椅子以外なく、することがなかった。閉じ込められてからというもの、退屈で仕方なかった。
調査団はざっと数えて百人はいた。今直ぐにでも全てを捧げる準備はできているのだけれど、エルドノア様はまだ食べないそうだ。
「どうせなら彼らには次の贄を運んでもらうようにしよう」
使者からの伝令を受けた時、エルドノア様はそう言っていた。そして彼は私を置いてどこかに行ってしまった。
結局それからエルドノア様が現れることもなく、私は数日もの間、部屋に監禁された。
その間、調査団の兵士が定期的に食事を運んできた。食べては器を下げさせ、また新たな食事が来ては食べてを繰り返した。
でも、そんなことをしたって私の飢えは満たされない。
私の身体に必要なものはエルドノア様とする"食事"だ。
エルドノア様とはもう何日もしていないから。私の身体は少しずつ、けれど着実に重たくなっていった。気だるくて横になっていたら、ようやくエルドノア様は現れた。
私は重たい身体を起こして彼を抱きしめた。
「私の愛しい信徒。声を出してはいけないよ。外にいる見張りにバレてしまうからね」
エルドノア様が言い終わるや否や、私はその唇に食らいついていた。舌でエルドノア様の口の中の隅々まで舐めて唾液を貪った。
もっと口づけを交わしたかったけれど、エルドノア様は私の身体を突き放してきた。私達の口から銀の糸が垂れる。
「こんなにがっつくなんて余程お腹が空いていたんだね」
エルドノア様の言葉に私はコクリと頷いた。それから床に座ってエルドノア様を見上げた。エルドノア様はそんな私を見て、口に手を当てて小さく笑った。
「コレが欲しいんだね。いい子にしていたご褒美だ」
エルドノア様はズボンを緩めてまだ最大限でない彼のものを出した。
私はそれをすぐさま口に含んだ。口に入れた途端、甘美な味がして口の中がよだれでいっぱいになる。もっと味わいたくて、舌で優しく丹念に転がせば、それはあっという間に大きくなっていった。
じゅぼじゅぼと下品な音が出て、口の端からよだれが垂れる。でも、そんなことはどうでもいい。私は必死に口を動かしてそれを堪能する。
「うっ」
いつも涼しい顔をしているエルドノア様の顔が珍しいことに歪んだ。
エルドノア様は私の頭を押さえつけてものを取り出そうとする。私は取られるのが嫌で必死に足にしがみつき、それを食らい続けた。
じゅぼじゅぼという音が激しさを増すとエルドノア様の身体が少しだけ跳ねた。それと同時に口の中に温かくてまろやかなものが流れてくる。
私はそれを零さないように必死に飲んだ。口に含んだものを全てを飲み干したけれど、もっともっと欲しかった。もう一度エルドノア様のものに口をつけて、残ってるものを全て吸い尽くしたらようやく満足感が訪れた。
久しぶりに体が軽くなった。私は心地よい気分でベッドで横になる。お腹が満たされたせいか、少し眠くなってきた。
そのままうとうととしているとエルドノア様は私の頭を撫でた。
「私のかわいい信徒。いい夢を見るんだよ」
そう言って頬に口づけてエルドノア様は部屋を後にした。
そんな私の悪評は、公爵領はおろか王都にまで及んでいるらしい。
だから今回も、王室の調査団と異世界から召喚されたという聖女が屋敷にやってきた。
"抜き打ち"という体にはなっていたけれど、私はこれでも公爵だ。調査団が来る一日前に伝令を持った使者がやって来た。使者は調査団が来訪することに対する断りを入れに来たのだ。
私は彼らを拒否することなく、女公爵として屋敷へ迎え入れることにした。向こうから勝手に生贄がやってくるなんて、大歓迎だ。
一日もあれば、屋敷に私とエルドノア様以外の人が住んでいるかのように見せかけられる。
エルドノア様は魔法を使うと泥から人形を作った。泥人形たちはただの人にしか見えないほど精巧な作りだ。
泥人形たちを使用人に仕立て上げ、屋敷の隅々まで片付けさせた。そして、見られては困るもの(例えばフィアロン公爵が所有していた邪神を喚ぶための魔導書)は、焼いたり隠したりした。
だから、調査団が来た時には、屋敷はただの貴族の家となっていた。
「お待ちしておりました。我が屋敷へようこそ」
調査団の代表と名乗った若い男、ジブリデにそう挨拶をしたのだけれど、返事はなかった。
ジブリデはエルドノア様には劣るものの端正で美しい顔をした人だった。でも、きれいなのは顔だけで、身体はそんなによさそではなかった。鍛えられてはいない、いかにも文官という身体つきだ。
ジブリデは眉間に皺を寄せた。どうやら彼をまじまじと品評しすぎたみたいだ。
でも文句は言わせない。だって、ミオという聖女が私のつま先から頭の天辺までを舐め回すように見ていたのだから。
ミオは私の品評を終えると、赤毛のイレトという男に耳打ちをした。イレトは屈強でいかにも武人といった身体つきをしていた。顔も身体も悪くはないのだけれど、彼の身体にところどころ傷跡が見えるのが気になる。
「皆様のお気が済むまで屋敷をお調べください。また、僭越ながら皆様がお泊りするお部屋もご用意させていただきました」
私はそばにいた使用人もとい泥人形に、「後ほど部屋へと案内するように」と命令した。泥人形は「承知いたしました」と返事をした。
「では、私はこれで失礼します」
「待て」
立ち去ろうとした私をジブリデが引き止めた。
「お前はここにいろ」
「まあ? なぜです?」
「なぜだか分からんのか」
「ええ。私はあなたたちが言うような怪しいことは何もしていませんし、こう見えて仕事が忙しいのです。失礼させていただきますね」
「待て、行っていいとは一言も言っていないぞ」
ジブリデのそばにいた軍人たちが、私の周囲を取り囲んだ。
「証拠隠滅の可能性もある。王命によって与えられた権限であなたを拘束させてもらう」
ジブリデはそう言うと軍人たちに私を連れて行くように命令した。
私は屋敷の別館にある、使用人用の部屋の一つに拘束された。窓は外から塞がれ、部屋の外には常に見張りがいるようだった。
灯りとなるランタンは渡されたのだけど。この部屋には寝具と机と椅子以外なく、することがなかった。閉じ込められてからというもの、退屈で仕方なかった。
調査団はざっと数えて百人はいた。今直ぐにでも全てを捧げる準備はできているのだけれど、エルドノア様はまだ食べないそうだ。
「どうせなら彼らには次の贄を運んでもらうようにしよう」
使者からの伝令を受けた時、エルドノア様はそう言っていた。そして彼は私を置いてどこかに行ってしまった。
結局それからエルドノア様が現れることもなく、私は数日もの間、部屋に監禁された。
その間、調査団の兵士が定期的に食事を運んできた。食べては器を下げさせ、また新たな食事が来ては食べてを繰り返した。
でも、そんなことをしたって私の飢えは満たされない。
私の身体に必要なものはエルドノア様とする"食事"だ。
エルドノア様とはもう何日もしていないから。私の身体は少しずつ、けれど着実に重たくなっていった。気だるくて横になっていたら、ようやくエルドノア様は現れた。
私は重たい身体を起こして彼を抱きしめた。
「私の愛しい信徒。声を出してはいけないよ。外にいる見張りにバレてしまうからね」
エルドノア様が言い終わるや否や、私はその唇に食らいついていた。舌でエルドノア様の口の中の隅々まで舐めて唾液を貪った。
もっと口づけを交わしたかったけれど、エルドノア様は私の身体を突き放してきた。私達の口から銀の糸が垂れる。
「こんなにがっつくなんて余程お腹が空いていたんだね」
エルドノア様の言葉に私はコクリと頷いた。それから床に座ってエルドノア様を見上げた。エルドノア様はそんな私を見て、口に手を当てて小さく笑った。
「コレが欲しいんだね。いい子にしていたご褒美だ」
エルドノア様はズボンを緩めてまだ最大限でない彼のものを出した。
私はそれをすぐさま口に含んだ。口に入れた途端、甘美な味がして口の中がよだれでいっぱいになる。もっと味わいたくて、舌で優しく丹念に転がせば、それはあっという間に大きくなっていった。
じゅぼじゅぼと下品な音が出て、口の端からよだれが垂れる。でも、そんなことはどうでもいい。私は必死に口を動かしてそれを堪能する。
「うっ」
いつも涼しい顔をしているエルドノア様の顔が珍しいことに歪んだ。
エルドノア様は私の頭を押さえつけてものを取り出そうとする。私は取られるのが嫌で必死に足にしがみつき、それを食らい続けた。
じゅぼじゅぼという音が激しさを増すとエルドノア様の身体が少しだけ跳ねた。それと同時に口の中に温かくてまろやかなものが流れてくる。
私はそれを零さないように必死に飲んだ。口に含んだものを全てを飲み干したけれど、もっともっと欲しかった。もう一度エルドノア様のものに口をつけて、残ってるものを全て吸い尽くしたらようやく満足感が訪れた。
久しぶりに体が軽くなった。私は心地よい気分でベッドで横になる。お腹が満たされたせいか、少し眠くなってきた。
そのままうとうととしているとエルドノア様は私の頭を撫でた。
「私のかわいい信徒。いい夢を見るんだよ」
そう言って頬に口づけてエルドノア様は部屋を後にした。
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