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番外編2-4 氷の王子と呼ばれたお兄様に恋をした
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お兄様達と別れて自室に戻ると、どっと疲れが押し寄せてきた。一日中気を使っていたせいかもしれない。
疲れを癒すためにベッドで横になると、自然と眠気がやってきた。そのままうつらうつらしていると、不意にさっきの光景が頭の中に浮かんできて逆に目が冴えてしまった。
感情の揺れ幅が少なくて他人の気持ちが分からないお兄様。ヴィオお姉様はこれからどんどんお兄様に振り回される事になるのかしら。今日みたいにぞんざいに扱われて、いつかお姉様が怒りを爆発させてしまったらどうしよう。そもそも、お兄様は自分がヴィオお姉様をぞんざいに扱っている事を理解しているのかしら?
頭の中でぐるぐると思考が駆け巡り、終いにはこんな事を思ってしまった。
━━お兄様のせいでヴィオお姉様の人生が台無しになってしまったらどうしよう・・・・・・。
お母様の元婚約者の人は、お母様に振り回されて人生を棒に振った被害者だ。勿論、彼は完全な被害者とは言えない。彼に問題がなかったとは言えないからだ。
しかし、その元婚約者は、おそらく没落した事は間違いない。
私はその後の事は詳しく知らないけれど・・・・・・。でも、お母様は王太子であるお父様と結婚する事となったのだから、彼は嘲笑の的になった事だろう。なんなら、その元婚約者の人は中央政界や社交会から遠ざかっているのかもしれない。
何にせよ、彼が没落するきっかけになったのはお母様で間違いない。
そして、今、その元婚約者の人と同じ境遇に陥ってしまうかもしれないのが、ヴィオお姉様だった。端から見ていて、今のお兄様とヴィオお姉様はお世辞にも仲が良いとは言えず、恋愛感情を持ちそうには見えない。
でも、これから先、二人の感情が変わらないとは言い切れない。もし、何かをきっかけにヴィオお姉様がお兄様の事を好きになったら? それでヴィオお姉様がお母様の元婚約者と同じ運命を辿ることとなったら?
ヴィオお姉様は賢明な方だと思うから、お母様の元婚約者のように浮気をしてお兄様の気を引こうとはしないだろう。
でも、「恋は人を変えてしまう」って、メイドからこっそりと借りたちょっぴり大人な恋愛小説には書いてあった。
━━このままだと、ヴィオお姉様も恋愛小説の登場人物のように、破滅してしまうのかしら?
それは、良くない事だなと思った。ヴィオお姉様の家門はお兄様の最大の後ろ盾だから、二人には仲良くいてもらわなくては困る。
それに、私はヴィオお姉様の事が嫌いじゃなかった。お姉様とはまだそんなに一緒にいる機会が多くなかったけれど、それでも私には彼女が悪い人だとは思えなかったからだ。
だから、私は、ヴィオお姉様が不幸になってしまうかもしれないのに見て見ぬふりする事ができなかった。
━━二人の仲を取り持つなんていうのはおこがましい事だけれど、それでも困った事があればヴィオお姉様の手助けできるように備えておこう。
私はあの日、そんな事を確かに思ったのだ。
※
それから私は長い月日をかけて、ヴィオお姉様と仲良くなった。
ヴィオお姉様は私が知る中で最も警戒心の強い人だった。誘えば一緒にお茶やお手掛けはしてくれるけれど、礼儀的で社交辞令的なやり取りが多かった。同世代の女の子が喜ぶような雑談をしているだけでは、お姉様との仲が深まる事はなかった。
真面目で堅苦しいヴィオお姉様に、息が詰まりそうになっている時、一つの転機が訪れた。お姉様が私の話した植物の話に大変関心を示してくれたのだ。
花を美しいと思う令嬢は多くいたけれど、その生態や繁殖地、分布について知りたがる人は殆どいなかった。
「ヴィオお姉様も植物に興味があるのでしょうか」
聞けば彼女は微笑んで「将来、ルーシー殿下のお役に立てればと思って勉強致しましたの」と答えた。
「どうして、私が植物について勉強していると知っているのですか」
私が問えばヴィオお姉様はお兄様から教えられたのだと言った。
「国家の発展のために我が国初の女性の植物学者になるとおっしゃったのですよね? 立派ですわ」
そんな事を言った覚えはなかったのだけれど・・・・・・。いたく感心するお姉様を前にして本当の事を言えずに私はにこにこと笑っていた。
疲れを癒すためにベッドで横になると、自然と眠気がやってきた。そのままうつらうつらしていると、不意にさっきの光景が頭の中に浮かんできて逆に目が冴えてしまった。
感情の揺れ幅が少なくて他人の気持ちが分からないお兄様。ヴィオお姉様はこれからどんどんお兄様に振り回される事になるのかしら。今日みたいにぞんざいに扱われて、いつかお姉様が怒りを爆発させてしまったらどうしよう。そもそも、お兄様は自分がヴィオお姉様をぞんざいに扱っている事を理解しているのかしら?
頭の中でぐるぐると思考が駆け巡り、終いにはこんな事を思ってしまった。
━━お兄様のせいでヴィオお姉様の人生が台無しになってしまったらどうしよう・・・・・・。
お母様の元婚約者の人は、お母様に振り回されて人生を棒に振った被害者だ。勿論、彼は完全な被害者とは言えない。彼に問題がなかったとは言えないからだ。
しかし、その元婚約者は、おそらく没落した事は間違いない。
私はその後の事は詳しく知らないけれど・・・・・・。でも、お母様は王太子であるお父様と結婚する事となったのだから、彼は嘲笑の的になった事だろう。なんなら、その元婚約者の人は中央政界や社交会から遠ざかっているのかもしれない。
何にせよ、彼が没落するきっかけになったのはお母様で間違いない。
そして、今、その元婚約者の人と同じ境遇に陥ってしまうかもしれないのが、ヴィオお姉様だった。端から見ていて、今のお兄様とヴィオお姉様はお世辞にも仲が良いとは言えず、恋愛感情を持ちそうには見えない。
でも、これから先、二人の感情が変わらないとは言い切れない。もし、何かをきっかけにヴィオお姉様がお兄様の事を好きになったら? それでヴィオお姉様がお母様の元婚約者と同じ運命を辿ることとなったら?
ヴィオお姉様は賢明な方だと思うから、お母様の元婚約者のように浮気をしてお兄様の気を引こうとはしないだろう。
でも、「恋は人を変えてしまう」って、メイドからこっそりと借りたちょっぴり大人な恋愛小説には書いてあった。
━━このままだと、ヴィオお姉様も恋愛小説の登場人物のように、破滅してしまうのかしら?
それは、良くない事だなと思った。ヴィオお姉様の家門はお兄様の最大の後ろ盾だから、二人には仲良くいてもらわなくては困る。
それに、私はヴィオお姉様の事が嫌いじゃなかった。お姉様とはまだそんなに一緒にいる機会が多くなかったけれど、それでも私には彼女が悪い人だとは思えなかったからだ。
だから、私は、ヴィオお姉様が不幸になってしまうかもしれないのに見て見ぬふりする事ができなかった。
━━二人の仲を取り持つなんていうのはおこがましい事だけれど、それでも困った事があればヴィオお姉様の手助けできるように備えておこう。
私はあの日、そんな事を確かに思ったのだ。
※
それから私は長い月日をかけて、ヴィオお姉様と仲良くなった。
ヴィオお姉様は私が知る中で最も警戒心の強い人だった。誘えば一緒にお茶やお手掛けはしてくれるけれど、礼儀的で社交辞令的なやり取りが多かった。同世代の女の子が喜ぶような雑談をしているだけでは、お姉様との仲が深まる事はなかった。
真面目で堅苦しいヴィオお姉様に、息が詰まりそうになっている時、一つの転機が訪れた。お姉様が私の話した植物の話に大変関心を示してくれたのだ。
花を美しいと思う令嬢は多くいたけれど、その生態や繁殖地、分布について知りたがる人は殆どいなかった。
「ヴィオお姉様も植物に興味があるのでしょうか」
聞けば彼女は微笑んで「将来、ルーシー殿下のお役に立てればと思って勉強致しましたの」と答えた。
「どうして、私が植物について勉強していると知っているのですか」
私が問えばヴィオお姉様はお兄様から教えられたのだと言った。
「国家の発展のために我が国初の女性の植物学者になるとおっしゃったのですよね? 立派ですわ」
そんな事を言った覚えはなかったのだけれど・・・・・・。いたく感心するお姉様を前にして本当の事を言えずに私はにこにこと笑っていた。
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