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17 久しぶりのデート
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「こうしてデートをするのは久しぶりだね」
庭園を歩いているとエドが言った。確かに、二人きりで会うのは久しぶりだった。
「元気にしていた?」
おかしな質問をする。1週間前にパーティで会ったばかりなのに。それに、手紙のやり取りだってしていた。
「はい。1週間家に籠もりっぱなしで退屈していたくらいです」
「そう」
不審者に襲われかけたということで、私は全ての予定をキャンセルして、家に閉じこもっていた。
「王子宮に移ってきたら二人で一緒にどこかへ出かけよう」
「そんな時間はあるのでしょうか」
私は今まで妃教育を一度も受けていない。一応、家で自主的に近隣諸国の歴史や外交について改めて勉強をしているけれど。それでも、王太子妃としての教養はまだまだ備わっていないように思う。
「妃教育のことを気にしているの?」
「はい」
「ベラなら大丈夫だよ。マナーは完璧で、教養も十分にあるから」
「お世辞が過ぎますわ」
「お世辞じゃないよ」
エドは困ったように笑った。
「ベラは自分を過小評価する癖があるね」
私は首を傾げた。私は事実を言っているだけなのに。
「まあ、人間誰しも自分のことはよく分からないものか」
エドは困ったことを隠すかのように笑った。
「ベラの思っている以上に自由な時間はあるから。それだけは理解してね」
「はい」
本当にそうなのかしら。疑問に思うことはあるけれど、そのことを口にしてしまえば、エドを困らせてしまう。だから、私は何も言わなかった。
それから私達は花を見ながら他愛のない話をした。
「そういえば、乗馬のことなんだけど、いい馬が見つかったよ」
エドは屈託のない笑みで言った。
そういえば、そんな約束をしていた。自分から言い出したことなのに、すっかり忘れていた。
「どうしたの? もしかして、忘れてた?」
「はい」
正直に返事をしたら、エドは苦笑した。
「自然公園に行ったのがずっと前のことのように思えるんです」
「最近、色々と嫌なことが続いていたからしょうがないよ」
エドは私の手を握った。
「でも、それももうすぐ終わる」
「そうでしょうか?」
私は首を傾げた。
「下卑たゴシップ紙に王室のあることないことを書かせるわけがないだろう」
「そうですね」
そんなことをする者は不敬罪で裁かれかねない。
「それに、ベラを襲おうとした輩ももうそろそろ捕まるはずだ」
「そうなるといいですね」
「そうなるんだよ」
エドの言葉は確信に満ち溢れていた。
「ああ、話が逸れたね。馬のことだった。良かったら今から見に行かない?」
「ええぜひ」
「じゃあ、馬小屋に行こう」
エドはそう言って私の手を引いて歩き始めた。
※
馬小屋の側まで行くと、使用人の男が栗毛の馬を引いてやって来た。
「この子だよ」
エドはそう言うと馬の頭を撫でた。
「ベラも撫でてあげて」
促されるまま私は馬の首筋を撫でた。
「いい子。名前は何というのでしょうか?」
「マーガレットです」
使用人の男が返事をした。
「マーガレット、いい名前ね。女の子かしら?」
「左様でございます」
「マーガレットは大人しくて優しい性格をしているから、きっとベラの良いパートナーになれるよ」
私はエドの言葉に頷いて再びマーガレットの身体を撫でた。
「よろしくね、マーガレット」
「乗馬の練習はもう少し先になるだろうけど、たまに会ってあげるといい」
「ええ。そうします」
私がそう言うとなぜかエドは嬉しそうな顔をした。
「どうしました?」
「やっと笑ってくれたから」
私は自分の顔を触った。
━━笑っていたのかしら?
「今日はずっと表情が硬かったから」
「緊張していたせいかもしれません」
「そうだね」
庭園の中でも、頭の片隅で今後のことや不審者のこと、ゴシップ紙のことを考えていた。だから、難しい顔をしていたのかもしれない。
それにしても、エドはどうして私が笑っていると分かったのだろう。
「エドはすごいですね」
「何が?」
「私が笑っていることに気づいたことです」
「そんなこと、全然すごくないよ。好きな人の顔をよく見ない男なんていないから」
エドの言葉に何と返していいのか分からない。
「そうなんですね」
戸惑った末に出てきた言葉は、自分でも素っ気ないと思えるものだった。
庭園を歩いているとエドが言った。確かに、二人きりで会うのは久しぶりだった。
「元気にしていた?」
おかしな質問をする。1週間前にパーティで会ったばかりなのに。それに、手紙のやり取りだってしていた。
「はい。1週間家に籠もりっぱなしで退屈していたくらいです」
「そう」
不審者に襲われかけたということで、私は全ての予定をキャンセルして、家に閉じこもっていた。
「王子宮に移ってきたら二人で一緒にどこかへ出かけよう」
「そんな時間はあるのでしょうか」
私は今まで妃教育を一度も受けていない。一応、家で自主的に近隣諸国の歴史や外交について改めて勉強をしているけれど。それでも、王太子妃としての教養はまだまだ備わっていないように思う。
「妃教育のことを気にしているの?」
「はい」
「ベラなら大丈夫だよ。マナーは完璧で、教養も十分にあるから」
「お世辞が過ぎますわ」
「お世辞じゃないよ」
エドは困ったように笑った。
「ベラは自分を過小評価する癖があるね」
私は首を傾げた。私は事実を言っているだけなのに。
「まあ、人間誰しも自分のことはよく分からないものか」
エドは困ったことを隠すかのように笑った。
「ベラの思っている以上に自由な時間はあるから。それだけは理解してね」
「はい」
本当にそうなのかしら。疑問に思うことはあるけれど、そのことを口にしてしまえば、エドを困らせてしまう。だから、私は何も言わなかった。
それから私達は花を見ながら他愛のない話をした。
「そういえば、乗馬のことなんだけど、いい馬が見つかったよ」
エドは屈託のない笑みで言った。
そういえば、そんな約束をしていた。自分から言い出したことなのに、すっかり忘れていた。
「どうしたの? もしかして、忘れてた?」
「はい」
正直に返事をしたら、エドは苦笑した。
「自然公園に行ったのがずっと前のことのように思えるんです」
「最近、色々と嫌なことが続いていたからしょうがないよ」
エドは私の手を握った。
「でも、それももうすぐ終わる」
「そうでしょうか?」
私は首を傾げた。
「下卑たゴシップ紙に王室のあることないことを書かせるわけがないだろう」
「そうですね」
そんなことをする者は不敬罪で裁かれかねない。
「それに、ベラを襲おうとした輩ももうそろそろ捕まるはずだ」
「そうなるといいですね」
「そうなるんだよ」
エドの言葉は確信に満ち溢れていた。
「ああ、話が逸れたね。馬のことだった。良かったら今から見に行かない?」
「ええぜひ」
「じゃあ、馬小屋に行こう」
エドはそう言って私の手を引いて歩き始めた。
※
馬小屋の側まで行くと、使用人の男が栗毛の馬を引いてやって来た。
「この子だよ」
エドはそう言うと馬の頭を撫でた。
「ベラも撫でてあげて」
促されるまま私は馬の首筋を撫でた。
「いい子。名前は何というのでしょうか?」
「マーガレットです」
使用人の男が返事をした。
「マーガレット、いい名前ね。女の子かしら?」
「左様でございます」
「マーガレットは大人しくて優しい性格をしているから、きっとベラの良いパートナーになれるよ」
私はエドの言葉に頷いて再びマーガレットの身体を撫でた。
「よろしくね、マーガレット」
「乗馬の練習はもう少し先になるだろうけど、たまに会ってあげるといい」
「ええ。そうします」
私がそう言うとなぜかエドは嬉しそうな顔をした。
「どうしました?」
「やっと笑ってくれたから」
私は自分の顔を触った。
━━笑っていたのかしら?
「今日はずっと表情が硬かったから」
「緊張していたせいかもしれません」
「そうだね」
庭園の中でも、頭の片隅で今後のことや不審者のこと、ゴシップ紙のことを考えていた。だから、難しい顔をしていたのかもしれない。
それにしても、エドはどうして私が笑っていると分かったのだろう。
「エドはすごいですね」
「何が?」
「私が笑っていることに気づいたことです」
「そんなこと、全然すごくないよ。好きな人の顔をよく見ない男なんていないから」
エドの言葉に何と返していいのか分からない。
「そうなんですね」
戸惑った末に出てきた言葉は、自分でも素っ気ないと思えるものだった。
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