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13-3 パーティでのハプニング

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「エドも来るのなら教えて欲しかったです」
 会えて嬉しいはずなのに、私の口からは不満の声が漏れた。
「ごめん。俺もベラがパーティに参加するってことをここに着いてから知ったから。事前に知っていたら最初から君をエスコートして一緒に来ていたよ」
 エドはそう言って手を差し出してきた。私をエスコートするつもりらしい。

「ごめんなさい。今日はもう帰るつもりです」
「何で?」
 私達のやり取りを見ていたローズマリー嬢は顔を曇らせた。
「フィリップ様がいらっしゃるから」
「ああ。そのことか」
「ごめんなさい。こちらのミスで彼を呼んでしまって」
「マリーは気にしなくていいよ」
 エドは気遣うローズマリー嬢に優しく微笑みかけた。そして、先に会場に戻るように伝えた。ローズマリー嬢は頷くと立ち去った。

「ベラ、帰らないでくれ。アンドレ公爵夫人は君が来てくれたことをとても喜んでいたんだ」
 そう言われると帰りにくい。
「でも」
「大丈夫。君は俺のパートナーだ。俺のパートナーに失礼なことをする馬鹿な人間はいないはずだよ? それに、俺は君と踊りたい」
「踊り?」
「卒業パーティの時に踊ってくれなかっただろう?」
 エドはいたずらっぽく笑った。彼が何で私と踊りたがるのか理解できないけれど、その笑顔を見ていたら何だか彼の願いを叶えたくなってきた。
「分かりました。もう少しだけいます」
「ありがとう」
 彼はもう一度手を差し出してきた。私は彼の手を取って会場に戻った。

 会場に戻ると、人々はさっきよりも私に注目していた。エドに連れられて戻ってきたのだから当然なのだけれど、こんなに見られては落ち着かない。
「パーティを、台無しにしてません?」
 エドに聞いてみたら彼は「そんなことないよ」と言った。
「社交の場なんて噂になりそうなことが一つや二つあるものだ。そして、今回はそれがたまたま自分達だっただけさ。だから、気にしたら負けだ。堂々として?」
 彼の言葉に私は頷いた。意識しなくたって、何事もないかのように振る舞うことは簡単にできる。今日この瞬間だけは、"氷の令嬢"で良かったと思う。

 エドとともにいると、挨拶に来る人が何人もいた。同伴している私を無視するわけにもいかないのだろう。彼らは私にも声をかけてきた。
 彼らは遠回しに、私とエドの関係を聞いてきた。巷を騒がせている噂は本当なのか気になって仕方がないのだろう。その度にエドは、「近いうちに分かりますよ」と言って笑っていた。

 話をしている最中、ふと視線を感じた。その方向を見てみたら、フィリップ様が私を睨んでいた。前々から、私に対して優しい表情を見せてくれる人ではなかったけれど。あんな風に憎しみのこもった目で睨まれることは流石になかった。

 ━━そんなに私が嫌なら帰ればいいのに。

 そう思っていたらエドに肩を寄せられた。
「大丈夫。気にしなくていいから」
 彼は挨拶に来た人が離れたタイミングで、そう耳打ちしてきた。エドもフィリップ様の視線に気づいていたらしい。
「今のフィリップにはもう何もできないから」

 ━━どういう意味だろう?

 その意味を尋ねようとした時、また挨拶に来た人がいた。挨拶の時間は長く、結局、私はエドからその真意を聞くことはできなかった。
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