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25-2 聖女の正体
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フェイは私の額にデコピンをした。
「いったぁ!」
私は額を手で抑えた。
「大袈裟なんだから」
頬をぷくりと膨らませてフェイは怒る。
「本当に痛いんだから」
小さく可愛らしい指からは想像がつかない程の強い痛みがあった。現に今も額がズキズキと痛む。
「そう? 手加減を間違えちゃったかしら?」
フェイはそういうと額を突っついた。そうすると、不思議と痛みが引いていった。
首を傾げながら痛みのなくなった額を擦っていると、フェイが「今日は何に悩んでいるの?」と尋ねてきた。
「悩んでるってよくわかったわね」
「暗い顔をして溜息を吐いていれば誰でも分かるわよ」
フェイは呆れたと言わんばかりの表情を浮かべて腕を組んだ。
「アンドリューとはまだ上手くいってないの?」
「そうね」
「どうして? 今度は何があったの?」
心配そうに聞いてくるフェイに、私は今日、ジェシカから聞いたことを話した。
アンドリュー卿には、恋人がいてその人は聖女だということ。その聖女が私の名前を名乗ったこと。ジェシカは、アンドリュー卿が私を抹殺して恋人を私に成り代わらせようとしていると思い込んでいること。
そこまで話すと、真剣な顔で聞いていたフェイが口を開いた。
「それで、シアはアンドリューの事ををどこまで信じているの?」
「ジェシカから話を聞いた時は、そんなことないって思ったの」
「うん」
「アンドリュー卿は器用な人じゃないし、恋人がいる素振りもなかったから」
「そうね」
「でも、宝石商へ行ってから分からなくなっちゃった」
「何があったの?」
「このネックレスを買った後にね・・・・・・」
私は着けたままにしていたネックレスをフェイに見せる。
「まあ! 綺麗」
「そうね。フェイの瞳みたいで綺麗って、私も思った」
そう言うとフェイは嬉しそうに笑った。
「こんなに素敵な物をもらって、何が不満なのよ?」
「不満は、・・・・・・まあ、ないと言えば嘘になるけど・・・・・・。問題はこのネックレスじゃなくて、そっちの指輪なの」
私はベッドから降りるとテーブルに置いていた指輪のケースを手に取った。
「その中に何があるの?」
私はケースを開けて翡翠の指輪をフェイに見せた。
「シアの瞳とおんなじ色ね! これ、アンドリューが選んだの?」
「そうね」
「いいセンスしてるじゃない! 見直したわ」
フェイはにこにこと笑いながらそう言った。勘違いして喜んでいるフェイを見て私は首を振った。
「フェイ、違うの」
「ん? 何が?」
「これ、私への贈り物じゃないのよ。ほら」
指輪を嵌めてみせるとフェイは首を傾げた。
「私にはサイズが合わないでしょ? だからこれは私への贈り物じゃないわ」
私はそう言うと指輪をケースの中に戻した。
「お店でサイズを直そうと提案されたのに、アンドリュー卿が『別のやつに贈る物だから』って言ってことわったの」
「ふーん」
フェイは腕を組んで興味深げに指輪を見つめている。
「この指輪も、とても高価な物なのよ? それを贈る相手なんて、・・・・・・恋人以外にいるのかしら」
「違うわよ」
私が言葉を言い終わらないうちにフェイが口を挟んだ
「これ、恋人への贈り物なんかじゃないわ」
「え? 何でそう思うの?」
「だって、これ、私へのプレゼントだもの」
「え?」
思わぬ彼女の言葉に私の頭はこんがらがった。
「どういうこと?」
「シアが私の瞳と同じ宝石を着けるんでしょ? それなら、親友である私もあなたの瞳と同じ宝石を身に着けなきゃ」
そう言うとフェイは指輪をケースから奪い取った。
「ちょっと、フェイ!? 返して」
「なんで? これ、私のなんだからいいでしょう?」
「多分、違うと思うわ」
「そんなことないわ。アンドリューが気を利かせたのよ」
そう言うとフェイは指輪に息を吹きかけた。すると指輪はみるみるうちに小さくなり、彼女の指にぴったりのサイズになった。
「どう? 似合う?」
フェイは嬉しそうに指輪を見せびらかしてくる。
「そもそも、アンドリュー卿はフェイの事を知らないでしょ? それなのに、フェイに贈り物なんてするはずないじゃない」
そう言うと、フェイは困ったように笑った。
「知ってるわ」
「え?」
「アンドリューは私の事を知ってる。勿論、私だってね。・・・・・・私達、友達だもの」
フェイの言葉にあ然とする。私が一人でいる時にしか彼女は現れなかった。だから、てっきり、アンドリュー卿にその存在を知られたくないものとばかり思っていた。
「なら、どうして私一人の時にあなたは現れるの?」
私の疑問にフェイは難しい顔をして俯いた。
「フェイ?」
どうして黙るの? と聞こうとした時、フェイは顔を上げた。
「・・・・・・ごめんね。まだ、その理由は言えない、かな」
フェイは悲しんでいるのだろうか。とても暗い顔で言った。
どうして、そんな顔をするのか分からず戸惑っていると、フェイが「あっ!」と大きな声を上げた。
「悲しんでる場合じゃないわ! 大切なことを教えないといけないんだった」
「へ?」
さっきの悲しそうな雰囲気はどこにいったのか。突然の変わりように私が驚いている中、フェイはとんでもないことを言ってのけた。
「アンドリューの恋人と噂され、シアの名前を騙った聖女っていうのはね。私なの」
フェイはいたずらっぽく笑う。
突然のフェイの告白に、私は言葉を失った。
「いったぁ!」
私は額を手で抑えた。
「大袈裟なんだから」
頬をぷくりと膨らませてフェイは怒る。
「本当に痛いんだから」
小さく可愛らしい指からは想像がつかない程の強い痛みがあった。現に今も額がズキズキと痛む。
「そう? 手加減を間違えちゃったかしら?」
フェイはそういうと額を突っついた。そうすると、不思議と痛みが引いていった。
首を傾げながら痛みのなくなった額を擦っていると、フェイが「今日は何に悩んでいるの?」と尋ねてきた。
「悩んでるってよくわかったわね」
「暗い顔をして溜息を吐いていれば誰でも分かるわよ」
フェイは呆れたと言わんばかりの表情を浮かべて腕を組んだ。
「アンドリューとはまだ上手くいってないの?」
「そうね」
「どうして? 今度は何があったの?」
心配そうに聞いてくるフェイに、私は今日、ジェシカから聞いたことを話した。
アンドリュー卿には、恋人がいてその人は聖女だということ。その聖女が私の名前を名乗ったこと。ジェシカは、アンドリュー卿が私を抹殺して恋人を私に成り代わらせようとしていると思い込んでいること。
そこまで話すと、真剣な顔で聞いていたフェイが口を開いた。
「それで、シアはアンドリューの事ををどこまで信じているの?」
「ジェシカから話を聞いた時は、そんなことないって思ったの」
「うん」
「アンドリュー卿は器用な人じゃないし、恋人がいる素振りもなかったから」
「そうね」
「でも、宝石商へ行ってから分からなくなっちゃった」
「何があったの?」
「このネックレスを買った後にね・・・・・・」
私は着けたままにしていたネックレスをフェイに見せる。
「まあ! 綺麗」
「そうね。フェイの瞳みたいで綺麗って、私も思った」
そう言うとフェイは嬉しそうに笑った。
「こんなに素敵な物をもらって、何が不満なのよ?」
「不満は、・・・・・・まあ、ないと言えば嘘になるけど・・・・・・。問題はこのネックレスじゃなくて、そっちの指輪なの」
私はベッドから降りるとテーブルに置いていた指輪のケースを手に取った。
「その中に何があるの?」
私はケースを開けて翡翠の指輪をフェイに見せた。
「シアの瞳とおんなじ色ね! これ、アンドリューが選んだの?」
「そうね」
「いいセンスしてるじゃない! 見直したわ」
フェイはにこにこと笑いながらそう言った。勘違いして喜んでいるフェイを見て私は首を振った。
「フェイ、違うの」
「ん? 何が?」
「これ、私への贈り物じゃないのよ。ほら」
指輪を嵌めてみせるとフェイは首を傾げた。
「私にはサイズが合わないでしょ? だからこれは私への贈り物じゃないわ」
私はそう言うと指輪をケースの中に戻した。
「お店でサイズを直そうと提案されたのに、アンドリュー卿が『別のやつに贈る物だから』って言ってことわったの」
「ふーん」
フェイは腕を組んで興味深げに指輪を見つめている。
「この指輪も、とても高価な物なのよ? それを贈る相手なんて、・・・・・・恋人以外にいるのかしら」
「違うわよ」
私が言葉を言い終わらないうちにフェイが口を挟んだ
「これ、恋人への贈り物なんかじゃないわ」
「え? 何でそう思うの?」
「だって、これ、私へのプレゼントだもの」
「え?」
思わぬ彼女の言葉に私の頭はこんがらがった。
「どういうこと?」
「シアが私の瞳と同じ宝石を着けるんでしょ? それなら、親友である私もあなたの瞳と同じ宝石を身に着けなきゃ」
そう言うとフェイは指輪をケースから奪い取った。
「ちょっと、フェイ!? 返して」
「なんで? これ、私のなんだからいいでしょう?」
「多分、違うと思うわ」
「そんなことないわ。アンドリューが気を利かせたのよ」
そう言うとフェイは指輪に息を吹きかけた。すると指輪はみるみるうちに小さくなり、彼女の指にぴったりのサイズになった。
「どう? 似合う?」
フェイは嬉しそうに指輪を見せびらかしてくる。
「そもそも、アンドリュー卿はフェイの事を知らないでしょ? それなのに、フェイに贈り物なんてするはずないじゃない」
そう言うと、フェイは困ったように笑った。
「知ってるわ」
「え?」
「アンドリューは私の事を知ってる。勿論、私だってね。・・・・・・私達、友達だもの」
フェイの言葉にあ然とする。私が一人でいる時にしか彼女は現れなかった。だから、てっきり、アンドリュー卿にその存在を知られたくないものとばかり思っていた。
「なら、どうして私一人の時にあなたは現れるの?」
私の疑問にフェイは難しい顔をして俯いた。
「フェイ?」
どうして黙るの? と聞こうとした時、フェイは顔を上げた。
「・・・・・・ごめんね。まだ、その理由は言えない、かな」
フェイは悲しんでいるのだろうか。とても暗い顔で言った。
どうして、そんな顔をするのか分からず戸惑っていると、フェイが「あっ!」と大きな声を上げた。
「悲しんでる場合じゃないわ! 大切なことを教えないといけないんだった」
「へ?」
さっきの悲しそうな雰囲気はどこにいったのか。突然の変わりように私が驚いている中、フェイはとんでもないことを言ってのけた。
「アンドリューの恋人と噂され、シアの名前を騙った聖女っていうのはね。私なの」
フェイはいたずらっぽく笑う。
突然のフェイの告白に、私は言葉を失った。
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