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11-3 夫婦の義務
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アンドリュー卿は私の中から物を引き抜くと、早々に服を着て部屋から出て行った。
━━用が済んだから別の部屋で眠るのね。
初めての経験をした身体は熱っぽいのに、心はどんどん冷え込んでいく。
私は重い身体を起こしてベッドの脇に脱ぎ捨てられた服を回収した。
下着を履こうと足首にパンツを通していると、扉がノックもなしに開いた。
「やっ!」
私は叫び声を上げて扉に背を向ける。
「おい、さっきまでしてたのにその態度はないだろう」
「別の部屋で寝るんじゃないんですか?」
「そんなわけないじゃないか」
彼はベッドまで水の入った器を持って来た。器をベッドの脇に置くと水にタオルを浸けて絞る。
「ほら、こっち向いて」
彼は私を引き寄せるとあろうことか太ももを開かせた。
「いやっ!」
「拭くだけだ。まさかそのまま寝るつもりなのか?」
確かに私の股や太ももはどちらのものとも分からない体液に塗れている。べちゃべちゃして気持ち悪いから拭いた方がいいのは間違いない。
「自分でできるから」
私はアンドリュー卿の手からタオルをひったくると彼に背を向けて汚れた部分を丁寧に拭いた。
拭き終わってから服を着ると私は水の入った容器を片づけに行こうとした。でも、アンドリュー卿はもう夜も遅いから明日にしようと言って、私をベッドの中に押し込めた。そして彼は当然のように私の隣に寝転んだ。
※
目が覚めると、私はアンドリュー卿の腕の中にいた。目の前に彼の顔があってぎょっとする。
━━そうだ。昨日の夜、私達・・・・・・。
昨夜の行為を思い出して思わず顔が熱くなる。はしたない声を大きな声でたくさん上げてしまった。初めての行為は痛くて辛いものだから我慢が必要だと聞いていたのに、全然そんなことはないじゃない。
━━むしろとても気持ちが良くて・・・・・・。
できることならまたあの気持ちよさを味わいたい。そんな下品な考えが頭に浮かんできて、私は恥ずかしくて消えたくなった。
━━そんなことより、あんな姿を見られて、これからアンドリュー卿とどんな風に接すればいいんだろう。
私が羞恥と不安に苛まれている中、アンドリュー卿は穏やかに眠っていた。彼に抱きしめられて身動が取れないから、私は必然的に彼の顔を見ることになる。
━━まつ毛がとっても長い。羨ましいわ。
彼のまつ毛が長いことを今更ながら知った。私はアンドリュー卿のことを何も知らない。結婚して1年半が経ち、本当の夫婦になってから、やっと顔をまともに見たくらいだ。
━━私、酷い女なのかも。アンドリュー卿を騙して結婚して、役立たずで、夫のことを何も知らないし知ろうともしない酷い女。
そんなことを思っていたら、彼の眉間に皺が寄った。
「ん・・・・・・、うんっ」
アンドリュー卿の目がゆっくりと開いて、私を見た。私は気まずくて彼から目を逸らす。
「もう起きたのか」
「は、はい」
アンドリュー卿は突然、私を強く抱きしめてきた。
━━苦しい。
私は彼の胸を押して彼の腕から逃れた。
「もう朝だから。そろそろ起きないと」
「まだ日も昇っていない。もう少しくらい、ゆっくり寝ていてもいいだろう」
彼は不満気な声を上げながらそれでも起き上がった。そのまま支度を始めるかと思ったら、彼は私を背後から抱きしめてきた。
「アンドリュー卿?」
彼の手が胸に触れる。
「ちょっと!」
私は慌ててそれを払い除けた。
「させてくれ」
アンドリュー卿は耳元で囁いた。
「だめ!」
私は身を捩って彼から離れようとしたけれどびくともしない。
「なぜそんなに嫌がる? あんなに気持ちよさそうにしていたのに」
アンドリュー卿には昨夜の私はどんな風に見えていたんだろう。恥ずかしくて顔から火が出そうになる。
「朝からあんなはしたない真似をしたくないの」
もう日が昇っていて部屋の中は明るい。今、服を脱いだら裸を見られてしまう。それに、喘いでいる時の顔を見られるなんて絶対に嫌だ。
「はしたないって・・・・・・。あれは夫婦の義務だからそんな風に言わないでくれ」
"夫婦の義務"
そう言われた瞬間、気持ちがスーッと冷めていった。
━━ああ、そうだった。
私はどうして思い違いをしていたんだろう。
あの行為は私にとって必要不可欠なものだった。そして、幸いなことに、アンドリュー卿も"義務"と感じてくれて私を相手にしてくれた。あの行為は私達が夫婦としてやっていくための必要な行為に過ぎない。
━━ただ、それだけのことだ。
私はネグリジェを脱いでアンドリュー卿に向き直った。
「シア? どうしたんだ、急に」
したいと言った当の本人は私の行動に戸惑っている。
「"夫婦の義務"というのなら、仕方ないことだから」
そう言った途端、アンドリュー卿は顔を強張らせた。
「・・・・・・いい」
彼はネグリジェを拾い上げると私に押し付けた。
「アンドリュー卿?」
「もういい! さっさと着替えて準備をしてくれ」
━━また怒らせた。
「ごめんなさい」
背中を向けて着替えを始めた彼に言葉を投げかけても返事はなかった。
━━用が済んだから別の部屋で眠るのね。
初めての経験をした身体は熱っぽいのに、心はどんどん冷え込んでいく。
私は重い身体を起こしてベッドの脇に脱ぎ捨てられた服を回収した。
下着を履こうと足首にパンツを通していると、扉がノックもなしに開いた。
「やっ!」
私は叫び声を上げて扉に背を向ける。
「おい、さっきまでしてたのにその態度はないだろう」
「別の部屋で寝るんじゃないんですか?」
「そんなわけないじゃないか」
彼はベッドまで水の入った器を持って来た。器をベッドの脇に置くと水にタオルを浸けて絞る。
「ほら、こっち向いて」
彼は私を引き寄せるとあろうことか太ももを開かせた。
「いやっ!」
「拭くだけだ。まさかそのまま寝るつもりなのか?」
確かに私の股や太ももはどちらのものとも分からない体液に塗れている。べちゃべちゃして気持ち悪いから拭いた方がいいのは間違いない。
「自分でできるから」
私はアンドリュー卿の手からタオルをひったくると彼に背を向けて汚れた部分を丁寧に拭いた。
拭き終わってから服を着ると私は水の入った容器を片づけに行こうとした。でも、アンドリュー卿はもう夜も遅いから明日にしようと言って、私をベッドの中に押し込めた。そして彼は当然のように私の隣に寝転んだ。
※
目が覚めると、私はアンドリュー卿の腕の中にいた。目の前に彼の顔があってぎょっとする。
━━そうだ。昨日の夜、私達・・・・・・。
昨夜の行為を思い出して思わず顔が熱くなる。はしたない声を大きな声でたくさん上げてしまった。初めての行為は痛くて辛いものだから我慢が必要だと聞いていたのに、全然そんなことはないじゃない。
━━むしろとても気持ちが良くて・・・・・・。
できることならまたあの気持ちよさを味わいたい。そんな下品な考えが頭に浮かんできて、私は恥ずかしくて消えたくなった。
━━そんなことより、あんな姿を見られて、これからアンドリュー卿とどんな風に接すればいいんだろう。
私が羞恥と不安に苛まれている中、アンドリュー卿は穏やかに眠っていた。彼に抱きしめられて身動が取れないから、私は必然的に彼の顔を見ることになる。
━━まつ毛がとっても長い。羨ましいわ。
彼のまつ毛が長いことを今更ながら知った。私はアンドリュー卿のことを何も知らない。結婚して1年半が経ち、本当の夫婦になってから、やっと顔をまともに見たくらいだ。
━━私、酷い女なのかも。アンドリュー卿を騙して結婚して、役立たずで、夫のことを何も知らないし知ろうともしない酷い女。
そんなことを思っていたら、彼の眉間に皺が寄った。
「ん・・・・・・、うんっ」
アンドリュー卿の目がゆっくりと開いて、私を見た。私は気まずくて彼から目を逸らす。
「もう起きたのか」
「は、はい」
アンドリュー卿は突然、私を強く抱きしめてきた。
━━苦しい。
私は彼の胸を押して彼の腕から逃れた。
「もう朝だから。そろそろ起きないと」
「まだ日も昇っていない。もう少しくらい、ゆっくり寝ていてもいいだろう」
彼は不満気な声を上げながらそれでも起き上がった。そのまま支度を始めるかと思ったら、彼は私を背後から抱きしめてきた。
「アンドリュー卿?」
彼の手が胸に触れる。
「ちょっと!」
私は慌ててそれを払い除けた。
「させてくれ」
アンドリュー卿は耳元で囁いた。
「だめ!」
私は身を捩って彼から離れようとしたけれどびくともしない。
「なぜそんなに嫌がる? あんなに気持ちよさそうにしていたのに」
アンドリュー卿には昨夜の私はどんな風に見えていたんだろう。恥ずかしくて顔から火が出そうになる。
「朝からあんなはしたない真似をしたくないの」
もう日が昇っていて部屋の中は明るい。今、服を脱いだら裸を見られてしまう。それに、喘いでいる時の顔を見られるなんて絶対に嫌だ。
「はしたないって・・・・・・。あれは夫婦の義務だからそんな風に言わないでくれ」
"夫婦の義務"
そう言われた瞬間、気持ちがスーッと冷めていった。
━━ああ、そうだった。
私はどうして思い違いをしていたんだろう。
あの行為は私にとって必要不可欠なものだった。そして、幸いなことに、アンドリュー卿も"義務"と感じてくれて私を相手にしてくれた。あの行為は私達が夫婦としてやっていくための必要な行為に過ぎない。
━━ただ、それだけのことだ。
私はネグリジェを脱いでアンドリュー卿に向き直った。
「シア? どうしたんだ、急に」
したいと言った当の本人は私の行動に戸惑っている。
「"夫婦の義務"というのなら、仕方ないことだから」
そう言った途端、アンドリュー卿は顔を強張らせた。
「・・・・・・いい」
彼はネグリジェを拾い上げると私に押し付けた。
「アンドリュー卿?」
「もういい! さっさと着替えて準備をしてくれ」
━━また怒らせた。
「ごめんなさい」
背中を向けて着替えを始めた彼に言葉を投げかけても返事はなかった。
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