【R-18/番外編】この狂った世界で私達はささやかな幸せを求める

花草青依

文字の大きさ
上 下
41 / 44
私の知らないティア

1

しおりを挟む
 知性を取り戻したティアは人が変わってしまった。相変わらず性的な事が嫌いで、彼女はセックスをできるだけしないようにと画策していた。

「そろそろした方がいいんじゃない?」
 今日もティアは腹を空かせている癖に、ムキになって我慢している。性欲を抑えようとベッドに横たわり、シーツを掴んでいるのが何とも可愛らしい抵抗だと思った。
「まだ、大丈夫・・・・・・です」
 我慢すればする程、淫靡な女になる事に彼女は気づいていない。私に奉仕することに喜びを感じ、激しく乱れるいやらしい女。
 それは、ティアが最も忌避するものの筈なのに、自らそのように堕ちていくなんて、皮肉なものだ。
 でも、私はそれを彼女に教えてやるつもりはなかった。それがティアのあるべき姿であり、私の望む彼女だったからだ。

「エルドノア様」
 ティアに呼ばれて私は彼女の髪を撫でた。
「どうしたの?」
「血じゃ、だめなんですか」
 ティアは懇願するかのような目で私を見てきた。

 ━━なるほど。このティアは馬鹿ではないらしい。

 彼女は「私のが必要だ」と言っていた事を覚えていたようだ。
 ティアの考えている通り、体液というのは、何も精液に限られるものではない。勿論私の血を与えても彼女の腹は満たされるのだ。
 だが、私はそれをティアに飲ませるつもりはなかった。

「エルドノア様、どうなんですか?」
 回答を急かす彼女に向かって私は笑いかけた。
「そうだね。でも、それだと私がつまらないから」
 そう言うとティアは顔を顰めた。それから彼女は頭の中で「それだけの理由で?」と呟いた。
「私は退屈なんだ。分かるだろう?」
 そう言って頬を撫でてやると、ティアは生意気にも私を憐れんだ。

 少し前、体感で言えば約3日前に時間が過去へと遡った。日差しの強い真夏の日が、凍てつく真冬の日になってしまった事にティアは酷くパニックを起こした。
 本来であれば私達にとってそれは慣れきった事象なのだけど。今の彼女にとってそれは初めての出来事で、それを理解できなかったのだ。
 私はティアにこの世界の時間は狂っている事だけを伝えた。時間は一定の段階まで進むと元に戻り、その進んだ未来がなかったことになるという事実を教えたのだ。
 ティアは時間が巻き戻る理由を知りたがっていたが、私はそれを「知らない」と頑なに否定した。ティアはその答えに納得しなかったが、私が正直に話す気がないことを悟ると、やがて質問する事をやめた。
 しかし、諦めた訳ではないようで、この狂った時間の中で私がいつか口を割ると思っているようだ。

「やっぱり、長く同じ時を過ごすと、日々がつまらなくなっていくものですか」
 ティアの質問に私は「まあね」と答えた。
「お前とまぐわる事は私の貴重な楽しみの一つなんだよ」
 私は彼女の額にキスを落とすと、ティアはやめろと言わんばかりに私の胸を押した。
「もっと別の楽しみを見つけるべきです」
 ティアは生意気にも私に意見をする。
「例えば?」
「屋敷の中の探索、とか?」
「それなら随分と昔にやったね」
 ティアは知らないだろうが、遠い昔に私はこの屋敷の中をひっくり返す勢いで調べた事がある。私がこの世界を離れてからどれくらい世界が変様したのかを知るために。そして、世界を少しでも良い方向へと導く手がかりを探すためにだ。
 あの時の私はこの世界を創造した神の一人としてのやる気がまだあったのだと思うと、つい自嘲してしまう。

 ━━ティアのせいで私は随分と自堕落になってしまったよ。

「この屋敷にあるのはくだらないおもちゃやがらくたばかりだ」
 私は言い終わるとティアの胸を服の上から撫でた。ほんの少し優しく触れただけなのに、ティアは甘い声を漏らした。

 "━━やっぱりこの人、私をおもちゃだと思っているわね!"

 ティアの怒りに満ちた声が頭の中に響いた。
「そんなに怒らないで? これはお前のためでもあるんだから」
 胸元のリボンを解くとティアの胸が露わになる。
「やだっ! まだいい!」
 ティアは顔を赤くして胸を隠した。
 前まではそんな彼女の行動が面倒だと思っていたけれど、最近は不思議と可愛らしく思えるようになった。
「だめ。いい加減"食事"を摂らないと」
 私は胸を隠すティアの手を取って彼女を押し倒した。再び胸が露わになるとティアは羞恥心のあまり目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...