【R-18/番外編】この狂った世界で私達はささやかな幸せを求める

花草青依

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この想いは永遠

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 エルドノアは私が普通の人間でなくなり、彼と卑猥な行為をしないと生きていけないと言っていた。
 それが嘘だと思いたかったけど、それから丸2日経っても、私は食事をしたいと思わなかった。
 試しに、厨房にあったい食べ物や飲み物をいくつか口にしてみた。不思議な事にそれは何の味もしない上、お腹が満たされる感覚もなかった。
 
 ━━本当に普通の人間じゃないんだ・・・・・・。

 エルドノアが言っていた事が事実なんだと思い知らされて愕然とする。

 ━━でも、あんな卑猥な事はもう二度としたくないわ。

 彼を召喚した日の事を思い出して、私はそう思った。
 それなのに、あの日の行為を思い出すと口の中によだれが溢れてくる。
 私はぶんぶんと頭を振った。

 ━━お腹、すいたな。

 エルドノアから話を聞いてから3日目の今日、朝から妙な空腹感を覚えるようになった。食事を摂ってみても相変わらず私のお腹は満たされない。
 悶々と過ごしていると、その時、偶然居合わせたエルドノアに小馬鹿にされた。
「そろそろお腹が減ってきたんじゃない?」
 嘲り笑う彼に向かって、私は言ってやった。
「そうだとしても、あなたとはしないわ!」
 それから、逃げるように部屋を出て行ったけれど、エルドノアが追いかけて来ることはなかった。
「我慢できなくなったらいつでもおいで」
 彼は私の背中にそんな言葉を浴びせただけ。それ以降、彼は私と会っても特別、何もしてこなかった。

 ━━また、あの甘いやつが舐めたい。

 空腹を感じるようになってからというもの、気がつけば、私はそんな事を考えるようになっていた。
 頭の中に浮かぶのは、あの日、目が覚めた時に私の股から出ていた白くてねちゃねちゃしていたもの。それをまた口にしたい衝動に駆られて、私は股に手を伸ばした。

 ━━ダメ! そういうのは下品ではしたない事だもの。

 私はすんでの所で手を止めた。

 今までどんなに貧しくてお腹が空いていようとも、身体を売ることだけはしなかった。楽に稼げるからやりなよと、友達に勧められたこともあった。
 でも、私はそれを常に断った。友達はその度に「馬鹿なやつ」と言って私を嘲り笑ったけど・・・・・・。私は身体を売る事がどうしても受け入れられない。

 ━━欲しい。あれを口にしたい。

 それなのに、私の頭はあの白いもので頭がいっぱいになっていた。

 ━━あれは甘くてクリーミーで・・・・・・。だめ! もう、考えたらだめなの!! あれはきっと、エルドノアの・・・・・・。

 これ以上の事は考えたくなくて、もう一度頭をぶんぶんと振った。
「絶対にしないから!」
 誰にでもなく、自分自身に言い聞かせるために声に出して言った。







 ティアは思ったよりも強情だった。彼女が空腹を覚えてからもう5日の時が経ったというのに、未だに私の所に強請ってこない。
 私とのセックスが大好きで、必要以上にやりたがっていたあのティアと同じ人間だとは思えない。

 いい加減、そろそろ身体の限界が近いはずだ。
 だが、私からそれを与えてやる気はない。ティアが欲しいと懇願してくるまで体液を一滴たりとも渡すつもりはなかった。それが、生意気になったティアへのお仕置きだ。
 ティアは私の支配下にいて、私なしでは生きられない。それを身をもって教えてやらないと。そして、清純ぶっているが、自分がどれだけ淫靡な女なのかを思い知らせてやるんだ。

 だから、それまでの間はティアとの接触を極力避けているんだけど・・・・・・。

 ━━退屈だ。

 ティアと関わらないとなると、することが何もない。
 私はだらりとソファに寝転んで天井を見た。そして、そのまま天井に描かれた模様を目で追っていく。
 そうしていれば、今までのティアなら、私の下にやって来て、じゃれついてきた。あれは存外にも賢く、こういう時の私は暇を持て余していると理解していた。だから、「今なら構ってもらえる」と思って私に甘えに来ていたのだ。

 "好き"

 ティアはソファの前にぺたりと座り込むと、私の頬を撫でながら「好き」と呟くのが常だった。それが今は、遠い昔の事の様に感じる。

 彼女の唇から紡がれる何の捻りもない愛の言葉。それを恋しく思う日が来るだなんて思ってもみなかった。

 ━━嘘付き。

 ティアは純真な心で酷い嘘を吐いた。
 何が"この想いは永遠"だ。何もかも忘れて私に見向きもしなくなったくせに。神を惑わす酷い女だ。

 ━━これ以上、あれこれ考えたくない。

 私は目を閉じて、静かに時が過ぎるのを待った。
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