【R-18/番外編】この狂った世界で私達はささやかな幸せを求める

花草青依

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お人形に恋をした

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 ━━3人じゃなくて、4人じゃないか。

 ティアの記憶は混濁して曖昧だった。かろうじて読み取れたのがこの程度だ。ティア自身、どこまでを覚えていて理解しているのだろう。
 きっと、3人と言ったのもわざとではない。本当に3人しか相手にした覚えがないのだろう。私のお人形は嘘を吐けるほどの能が無いから。

「お前は愚かなお人形だよ」
 私はティア背中を押した。バスタブにしがみつかせる。
「お尻を突き出して」
 ティアは言われるがままお尻を突き出すと目を閉じた。きつく閉ざされた目から涙が滴り落ちてくる。

「大丈夫、怖いことは何もしないよ」
 シャワーヘッドをティアのあそこに押し付けると水圧を最大にした。
「んあっ」
 ティアは身体をがくがくと震わせた。腰を落としそうになったから彼女の腹に腕を回した。おかげで袖がびしょびしょになった。
「きれいにしてあげるからじっとして?」
「あっ、ああっ」
 耳元で囁いて彼女から手を離す。ティアは身体を震わせながらも、そのままの姿勢を保とうとしている。

「ごめんなさいっ、ごめんなさい、んあっ」
「謝ったって、だめだよ? きれいになるまでやめてあげないから」
「んあっ、やっ、ごめんなさいっ」
 ティアはしゃくりあげながら何度も謝罪の言葉を口にした。

「ごめんなさいっ」
「何に対して謝ってるの?」
「んあっ、エルドノア、さまを、怒らせたから。だから、ごめん、な、さい」
「ふぅん。じゃあ、私が何で怒っているのか分かる?」

 ━━私はなぜ、こんなにも腹を立てているのだろう。

 ティアに質問をしておいてその答えは私自身、分からなかった。
「エルドノアさまの役に立たなかったから」
 ティアの鼻をすする音が嫌に響く。

 ━━お前は十分に仕事をしたよ。

 シトレディスの信徒を誑かして寝たんだ。記憶で見た限り、名前を知らない2人の男は普通の人間と大差ない身体に戻ったようだ。
 それに、ティアの記憶で垣間見たイレトという男は随分とティアに入れ込んでいた。あの男を利用すれば、シトレディスの勢力についてもっと知ることができるだろう。
 イレトはティアに失望したようだが、まだ弁解の余地はある。全てを私のせいにして、泣いて縋らせればいいのだ。「エルドノアに無理やりやらされたの。私の意思じゃない」って。そして、「愛しているのはあなただけ」と囁き、「命の危機を感じて仕方なく他の男と寝たの」と言い訳をしたらどうにかなるだろう。

 ━━でも、どうしてだろう。そうさせる気になれない。

 ティアの身体が激しく痙攣した。どうやらイッたらしい。それなのにティアは泣いていた。いつもなら気持ちよさそうにして、キスをねだってくるのに。

「ごめんなさいっ、ごめんなさい」
「もう聞き飽きたよ。黙って」
 ティアは口を固く結んだ。彼女のあそこに押し当てていたシャワーヘッドを離す。ティアのあそこを指で広げてみても、汚らしい精液はもう出てこなかった。
「んあっ」
 クリトリスを撫であげるとティアは甘い声をあげた。しつこいくらい擦ってあげるとティアの下の口からはたっぷりと蜜が溢れ出てきた。

 ━━挿れたい。

 でも、ティアは"食べすぎ"ている。彼女の記憶にあるだけで、4人も相手にしたんだ。それに加えて私の精まで与えたらティアの身体が壊れてしまう。

 "━━挿れてほしい"

 ティアが心の中で小さくつぶやいたことを聞き逃さなかった。
 罰にはちょうどいいか。いやらしく男達のものを受け入れたんだから・・・・・・。

 ━━おかしい。

 命じたのは私だ。ティアは私の命令通りに行動しただけなのに、罰を与えようだなんて。私はさっきから何に怒っている? どうして、他の男としたことがこんなにも腹立たしいのだろう。

 ━━おかしい。私は、・・・・・・狂っている?

 自分が自分でないような気がして、気持ち悪かった。
 ティアの身体から手を離して立ち上がる。今はティアのそばにいたくなかった。私を狂わせる彼女から一刻も早く離れたかった。

「まって」
 立ち去ろうとする私の脚にティアがしがみついてきた。
「ごめんなさい。ちゃんとエルドノアさまの役に立つようにしますから」

 "━━だから、私を捨てないで"

 ティアのすすり泣く声が部屋の中に響き渡った。

 ━━哀れだ。

 私に守られていると思い込んでいる馬鹿で哀れなお人形。私がどんな性格をしているのかまるで理解していない。
 操るにはちょうどいい間抜けな人間。利用できる間は一緒にいる。それだけの存在だ。それなのに。

 ━━それなのに、なぜ私はティアを抱きしめたいと思っている?

「もう泣くな」
 私はいつの間にかまたしゃがみこんでいて、ティアの涙を拭っていた。
 ティアは私の顔を見ると、「ごめんなさい」と言って抱きついてきた。濡れたティアの身体に密着したせいで服はびしょびしょになった。
 でも、そんなことはどうでもいい。私はティアの背中を撫でてやった。少しでも、彼女が安心できるように。

 "━━好き"

 ティアはそう思うと同時に、意識を失った。
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