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お人形に恋をした
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「ねえ、エルドノア。何で中に出してくれないの?」
行為の後、突然、聖女はそう言った。
「どうしたの、急に?」
笑って誤魔化して、聖女の腹に出した精を回収する。
私が精子として出すものは生命の力、魂の根幹とも呼べるものだ。それを異界の女に受け渡したら何が起こるか分からない。この世界に生きる生命のためにもこの女に中出しするわけにはいけない。
「ティアにはしてるのに、どうして私にはしてくれないの」
ああ、なるほど。そういうことか。
聖女は、ティアに対して劣等感と対抗意識を持っていた。彼女は何かにつけてティアと比べたがる。その上、"ティアよりもアカリが好きだ"と私が言わないと、わけのわからないことを喚き続ける。
━━ティアは私が誰と寝ようが何をしようが文句の一つも思わないのに。
こう比較してみると、私の操り人形は従順でお利口で可愛げがある。たまには褒めてやらないといけないな。
「ねえ、エルドノアったら! 聞いてるの?」
聖女がヒステリックに叫んだ。うるさいことこの上ない。
「君を傷付けたくないんだ」
そう言って聖女の身体を抱きしめた。
「私の身体はティアによって毒されているんだ。ティアは酷い子なんだよ? 私を独占するためにセックスを強要する契約を結んで。彼女以外に中出しできないようにされたんだ。もしアカリの中に出したらアカリの性器をズタボロにするって言ってた」
たかが人間のティアが私を理不尽に縛り付けるほどの契約など結べるはずがない。設定があり得なさすぎて、自分で言ったことなのに笑えてくる。
笑うのを必死に我慢して真面目な顔で聖女に向き合う。
「そんなに悪いやつだったのね。エルドノア、私があなたを救ってみせるわ」
聖女は大真面目な顔でそんなことを言う。あんな幼稚な嘘をこの女は信じたんだ。吹き出しそうになったから、慌てて彼女の胸に飛び込んだ。
「ありがとう。でも、ティアは私の方で何とかできると思うから大丈夫だよ。問題はシトレディスだ」
笑いをこらえていたせいで声が震えていた。でも、問題はない。今にも泣きそうな声に聞こえなくもないから。現に聖女はそう思っている。彼女はいたわるように私の頭を撫で始めた。
━━ちょうどいい。このまま泣き落とそう。
「シトレディスが邪魔をするから私は永遠に解放されない。彼女は今どうしてる? 何で自分でここに来ずに君たちを派遣したの?」
困った顔を作って聖女の目を見つめれば、彼女は目を泳がせた。
シトレディスはきつく口止めをしたのかな。もしかしたら、裏切り行為は許さないと釘を刺されたのかもしれない。
「私を救ってくれないの? 私が頼れるのはアカリしかいないのに」
懇願しても聖女は躊躇うばかりで、説明する気配はない。
━━ 一度突き放すか。私とヤれて図に乗っているみたいだし。
「もういい」
そう言って私は床に落としていた服を掴み取った。聖女に背を向けて服を着ていく。着替えの最中、聖女から声をかけられても無視をした。
服を着直して部屋から出ていこうとした時、後ろから聖女にしがみつかれた。
「待って。ちゃんと話すから」
━━引っかかった。
「シトレディス様は、王都から出られないの」
「どうして?」
「王都を守るためだって言ってたわ。シトレディス様がいなくなると維持が難しいって」
なるほど。彼女はあの男と彼が作った都を守るために私の下に現れないのか。
王都は昔と変わらず豊かな場所だと聞く。この狂った世界では不自然なほどに。きっとシトレディスが細工をしているのだろう。周辺地域のエネルギーを王都に集めて吸収しているのなら、辻褄が合う。そうなれば、彼女は王都から離れられないだろう。
「シトレディス様は、定期的にエルドノアのことを見ているみたいだけど。モロにやったらあなたを監視していることがバレるからって。だから、ここぞという時にしか覗き見しないと言っていたわ」
やっぱり私のことを監視していたか。私に感づかれることを警戒していただけあって、いつ見られていたのか全く分からない。
「ありがとう。とても助かるよ」
聖女を振り払って部屋を出た。あの女は何か喚いていたけど、気にしない。欲しい情報は得られた。あれはもう用済みだ。
━━少し休みたい。
私はティアの寝室に向かった。
寝室に来たものの、ティアはここにはいなかった。まだ日が高いから当然だ。いつもなら彼女の寝ている時間ではないし、仕事も言いつけてある。しばらく待たないとティアはここに来ないだろう。
私はベッドの真ん中で横になって昼寝をすることにした。
行為の後、突然、聖女はそう言った。
「どうしたの、急に?」
笑って誤魔化して、聖女の腹に出した精を回収する。
私が精子として出すものは生命の力、魂の根幹とも呼べるものだ。それを異界の女に受け渡したら何が起こるか分からない。この世界に生きる生命のためにもこの女に中出しするわけにはいけない。
「ティアにはしてるのに、どうして私にはしてくれないの」
ああ、なるほど。そういうことか。
聖女は、ティアに対して劣等感と対抗意識を持っていた。彼女は何かにつけてティアと比べたがる。その上、"ティアよりもアカリが好きだ"と私が言わないと、わけのわからないことを喚き続ける。
━━ティアは私が誰と寝ようが何をしようが文句の一つも思わないのに。
こう比較してみると、私の操り人形は従順でお利口で可愛げがある。たまには褒めてやらないといけないな。
「ねえ、エルドノアったら! 聞いてるの?」
聖女がヒステリックに叫んだ。うるさいことこの上ない。
「君を傷付けたくないんだ」
そう言って聖女の身体を抱きしめた。
「私の身体はティアによって毒されているんだ。ティアは酷い子なんだよ? 私を独占するためにセックスを強要する契約を結んで。彼女以外に中出しできないようにされたんだ。もしアカリの中に出したらアカリの性器をズタボロにするって言ってた」
たかが人間のティアが私を理不尽に縛り付けるほどの契約など結べるはずがない。設定があり得なさすぎて、自分で言ったことなのに笑えてくる。
笑うのを必死に我慢して真面目な顔で聖女に向き合う。
「そんなに悪いやつだったのね。エルドノア、私があなたを救ってみせるわ」
聖女は大真面目な顔でそんなことを言う。あんな幼稚な嘘をこの女は信じたんだ。吹き出しそうになったから、慌てて彼女の胸に飛び込んだ。
「ありがとう。でも、ティアは私の方で何とかできると思うから大丈夫だよ。問題はシトレディスだ」
笑いをこらえていたせいで声が震えていた。でも、問題はない。今にも泣きそうな声に聞こえなくもないから。現に聖女はそう思っている。彼女はいたわるように私の頭を撫で始めた。
━━ちょうどいい。このまま泣き落とそう。
「シトレディスが邪魔をするから私は永遠に解放されない。彼女は今どうしてる? 何で自分でここに来ずに君たちを派遣したの?」
困った顔を作って聖女の目を見つめれば、彼女は目を泳がせた。
シトレディスはきつく口止めをしたのかな。もしかしたら、裏切り行為は許さないと釘を刺されたのかもしれない。
「私を救ってくれないの? 私が頼れるのはアカリしかいないのに」
懇願しても聖女は躊躇うばかりで、説明する気配はない。
━━ 一度突き放すか。私とヤれて図に乗っているみたいだし。
「もういい」
そう言って私は床に落としていた服を掴み取った。聖女に背を向けて服を着ていく。着替えの最中、聖女から声をかけられても無視をした。
服を着直して部屋から出ていこうとした時、後ろから聖女にしがみつかれた。
「待って。ちゃんと話すから」
━━引っかかった。
「シトレディス様は、王都から出られないの」
「どうして?」
「王都を守るためだって言ってたわ。シトレディス様がいなくなると維持が難しいって」
なるほど。彼女はあの男と彼が作った都を守るために私の下に現れないのか。
王都は昔と変わらず豊かな場所だと聞く。この狂った世界では不自然なほどに。きっとシトレディスが細工をしているのだろう。周辺地域のエネルギーを王都に集めて吸収しているのなら、辻褄が合う。そうなれば、彼女は王都から離れられないだろう。
「シトレディス様は、定期的にエルドノアのことを見ているみたいだけど。モロにやったらあなたを監視していることがバレるからって。だから、ここぞという時にしか覗き見しないと言っていたわ」
やっぱり私のことを監視していたか。私に感づかれることを警戒していただけあって、いつ見られていたのか全く分からない。
「ありがとう。とても助かるよ」
聖女を振り払って部屋を出た。あの女は何か喚いていたけど、気にしない。欲しい情報は得られた。あれはもう用済みだ。
━━少し休みたい。
私はティアの寝室に向かった。
寝室に来たものの、ティアはここにはいなかった。まだ日が高いから当然だ。いつもなら彼女の寝ている時間ではないし、仕事も言いつけてある。しばらく待たないとティアはここに来ないだろう。
私はベッドの真ん中で横になって昼寝をすることにした。
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