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レポート:《持たざる者》の正体
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【初めに】
この世界には、《持たざる者》(UnHold:UH)と呼ばれる者が居る。
魔法・超能力・科学に秀でた力を持たぬ者である。
しかし筆者は、或る光景に出会った。
『魔力で動く車の暴走』である。
これはUHが関与して起こった出来事であり、そこからUHの正体に繋がるヒントを得た。
そして実験により、それは確信に変わった。
これは、その実験結果及び考察である。
【実験内容】
被験者:UH 100人
内容:1.魔法・超能力を動力とする車へのUHの接触
2.発動させた魔法・超能力へのUHの接触
比較:同様の実験を、被験者として魔法使い・超能力者各10人で行う
【結果】
1.において。
まず普通に触って貰ったところ、変化無し。
次に好意的思考の下で触って貰ったところ、変化無し。
最後に嫌悪的思考の下で触って貰ったところ、動力が暴走した。
2.において。
普通の思考の場合、少量のダメージを受けた。
次に好意的思考の場合、普通の思考の場合と同じくダメージを受けた。
最後に嫌悪的思考の場合、魔法・超能力が著しく乱れてダメージは軽微となった。
尚、比較実験では。
動力の暴走及びダメージ軽減は見られなかった。
但し。
防衛意識を持って貰い実験を行ったところ、嫌悪的思考の場合と一致した。
【考察】
結果では。
UHは、〔力を持った者が防衛行動を起こした場合〕と同じ挙動が見られた。
これより。
UHは《力を持たない》のでは無く、《力を乱す力》を持っていると考えられる。
力を発揮出来無いのは、《自分で自分の力を無意識に抑えている》からであり。
必ずしも、《力を持っていない》とは限らないと思われる。
【原理】
人は考える時、脳内細胞に電気信号が流れている。
その時脳の周りには、微弱な電磁波が生じる。
力を持つ者は。
それを増幅して周りの物に干渉し、力を行使する。
魔法か超能力かは、この《干渉相手》が違うだけなのである。
干渉相手を、より明確にする為に。
魔法では呪文を唱えたり、超能力では結果をイメージしたりする。
UHは、自分を傷つけまいとする意識が脳内外に働き。
結果として、力を掻き消していると考えられる。
つまり、両者とも原理は一致する。
ただ〔方向性に違いが有るだけ〕なのである。
【終わりに】
今回の実験により、UHは《何も持っていない訳では無い》と言う事が立証された。
よって『《持たざる者》との呼び名は相応しく無い』と、筆者は考える。
寧ろ、力をけん制する新たな勢力と考えるべきである。
筆者は、その力をより現実的にする為。
尚も研究を続ける所存である。
このレポートが、UHにとって福音となる事を願って。
筆者:アイシャル=ヴェーンズ
──────────────────
「よく辿り着いたな。」
イオがアイを褒めている。
「お兄ちゃんのヒントが有ったお陰だよ。」
照れるアイは、こう続けた。
「『おかしいな』とは思ってたんだ。UHが、魔法使いや超能力者の子供にも現れるんだもん。」
「〔根っこが同じ〕とは、〔力を発揮する原理が同じだった〕と言う事か。」
リンネは直ぐに理解したが。
『うーん』と、エリカはまだ苦戦していた。
アイが導き出した結論に付いて、アーシェが不思議そうに言う。
「脳内の電磁パルスとやらが制御出来れば、〔誰にでも魔法や超能力が使える〕と言う事になりますね。」
「俺はそれを推奨しないがね。力を発揮した後、頭がかなり疲れるのは。〔脳に少なからずダメージが有る〕事を表しているからな。」
イオが付け加える。
『えへん』とした顔で、エリカは言う。
「それは分かるよ。だから普段は、超能力を使ってないんだもん。」
そこで、ふと思ったエリカは。
それをそのまま、口走ってしまう。
「イオは何とも無いの?凄い力を使ってるのに。」
エリカの問いに。
少し寂しそうな顔をしながら、イオは。
「俺はさ、ほら。【人間をやめてる】から。」
あ……!
聞いてはいけない事を、聞いてしまった気がした。
恐らく、イオが最も気にして欲しく無い部分。
それを無意識とは言え、触れてしまった。
「ごめんなさい!」
エリカが凄い勢いで謝る。
「馬鹿!謝ったら、余計に辛くなるだろうが!」
リンネが、怒り口調だった。
滅多にに怒らない、あのリンネが。
それで余計にショボーンとなるエリカ。
何故か本人以外が泣きそうだったので、イオは優しく言った。
「お前達が居てくれるから、俺は人間として生きられるんだ。感謝してるんだぞ、かなり。」
イオの気遣いに、やはり泣きそうになる。
そこを堪えて、アイが言った。
「これを早く知らせなくちゃ。全世界に。」
「ああ。UHの人達も、きっと喜ぶだろう。」
そしてイオは、こう付け加えた。
「これからも、彼らの力になってやってくれ。」
イオのその言葉を、胸に深く刻み込むアイだった。
この世界には、《持たざる者》(UnHold:UH)と呼ばれる者が居る。
魔法・超能力・科学に秀でた力を持たぬ者である。
しかし筆者は、或る光景に出会った。
『魔力で動く車の暴走』である。
これはUHが関与して起こった出来事であり、そこからUHの正体に繋がるヒントを得た。
そして実験により、それは確信に変わった。
これは、その実験結果及び考察である。
【実験内容】
被験者:UH 100人
内容:1.魔法・超能力を動力とする車へのUHの接触
2.発動させた魔法・超能力へのUHの接触
比較:同様の実験を、被験者として魔法使い・超能力者各10人で行う
【結果】
1.において。
まず普通に触って貰ったところ、変化無し。
次に好意的思考の下で触って貰ったところ、変化無し。
最後に嫌悪的思考の下で触って貰ったところ、動力が暴走した。
2.において。
普通の思考の場合、少量のダメージを受けた。
次に好意的思考の場合、普通の思考の場合と同じくダメージを受けた。
最後に嫌悪的思考の場合、魔法・超能力が著しく乱れてダメージは軽微となった。
尚、比較実験では。
動力の暴走及びダメージ軽減は見られなかった。
但し。
防衛意識を持って貰い実験を行ったところ、嫌悪的思考の場合と一致した。
【考察】
結果では。
UHは、〔力を持った者が防衛行動を起こした場合〕と同じ挙動が見られた。
これより。
UHは《力を持たない》のでは無く、《力を乱す力》を持っていると考えられる。
力を発揮出来無いのは、《自分で自分の力を無意識に抑えている》からであり。
必ずしも、《力を持っていない》とは限らないと思われる。
【原理】
人は考える時、脳内細胞に電気信号が流れている。
その時脳の周りには、微弱な電磁波が生じる。
力を持つ者は。
それを増幅して周りの物に干渉し、力を行使する。
魔法か超能力かは、この《干渉相手》が違うだけなのである。
干渉相手を、より明確にする為に。
魔法では呪文を唱えたり、超能力では結果をイメージしたりする。
UHは、自分を傷つけまいとする意識が脳内外に働き。
結果として、力を掻き消していると考えられる。
つまり、両者とも原理は一致する。
ただ〔方向性に違いが有るだけ〕なのである。
【終わりに】
今回の実験により、UHは《何も持っていない訳では無い》と言う事が立証された。
よって『《持たざる者》との呼び名は相応しく無い』と、筆者は考える。
寧ろ、力をけん制する新たな勢力と考えるべきである。
筆者は、その力をより現実的にする為。
尚も研究を続ける所存である。
このレポートが、UHにとって福音となる事を願って。
筆者:アイシャル=ヴェーンズ
──────────────────
「よく辿り着いたな。」
イオがアイを褒めている。
「お兄ちゃんのヒントが有ったお陰だよ。」
照れるアイは、こう続けた。
「『おかしいな』とは思ってたんだ。UHが、魔法使いや超能力者の子供にも現れるんだもん。」
「〔根っこが同じ〕とは、〔力を発揮する原理が同じだった〕と言う事か。」
リンネは直ぐに理解したが。
『うーん』と、エリカはまだ苦戦していた。
アイが導き出した結論に付いて、アーシェが不思議そうに言う。
「脳内の電磁パルスとやらが制御出来れば、〔誰にでも魔法や超能力が使える〕と言う事になりますね。」
「俺はそれを推奨しないがね。力を発揮した後、頭がかなり疲れるのは。〔脳に少なからずダメージが有る〕事を表しているからな。」
イオが付け加える。
『えへん』とした顔で、エリカは言う。
「それは分かるよ。だから普段は、超能力を使ってないんだもん。」
そこで、ふと思ったエリカは。
それをそのまま、口走ってしまう。
「イオは何とも無いの?凄い力を使ってるのに。」
エリカの問いに。
少し寂しそうな顔をしながら、イオは。
「俺はさ、ほら。【人間をやめてる】から。」
あ……!
聞いてはいけない事を、聞いてしまった気がした。
恐らく、イオが最も気にして欲しく無い部分。
それを無意識とは言え、触れてしまった。
「ごめんなさい!」
エリカが凄い勢いで謝る。
「馬鹿!謝ったら、余計に辛くなるだろうが!」
リンネが、怒り口調だった。
滅多にに怒らない、あのリンネが。
それで余計にショボーンとなるエリカ。
何故か本人以外が泣きそうだったので、イオは優しく言った。
「お前達が居てくれるから、俺は人間として生きられるんだ。感謝してるんだぞ、かなり。」
イオの気遣いに、やはり泣きそうになる。
そこを堪えて、アイが言った。
「これを早く知らせなくちゃ。全世界に。」
「ああ。UHの人達も、きっと喜ぶだろう。」
そしてイオは、こう付け加えた。
「これからも、彼らの力になってやってくれ。」
イオのその言葉を、胸に深く刻み込むアイだった。
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