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自分らしさ 《Side:アイ》
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アイは、生まれつきの天才だった。
何でも思った事は実現出来た。
科学の範疇で。
しかしイオの家に来て、自分でも敵わない物に出くわした。
魔法や超能力の類では無い。
【人の心】である。
特に、イオの心だけは誰にも覗けない。
イオが、心中を探られたく無いからでは無い。
〔お兄ちゃんにはそもそも、心が無いのでは〕と感じるからだ。
外見上は人間、振る舞いも人間。
しかし、根本的に何かが違う。
だからこそアイは惹かれ、一緒に居たいと思っていた。
『自分が変われる切っ掛けになれば良い』と、心の何処かで考えているのかも知れない。
具体的にどうすれば良いか、アイにも分からないが。
「研究室に閉じこもってばっかいないでさぁ。偶には、外へ出たら?」
エリカがアイに、そう声を掛けるも。
口答えをする様に、アイは返事する。
「ここでも十分楽しいもんっ。」
「でも外に出たら、何か掴めるかもよ。切っ掛けが。」
何だかんだで、エリカも。
アイの事を気にしていたのだ。
エリカの言葉を軽くあしらう様に、アイは。
「はいはい、今度ね。」
「アイは口ばっかじゃん。行動で示せないの?」
「だって……。」
「だってじゃなくて!動かないと分からない事も有るんだよ!」
そうエリカに急かされて、渋々外へ出るアイだった。
「おや、珍しいね。お使い?」
商店街の人達に会う度、そう聞かれるアイ。
滅多に外出しないが、町での知名度は抜群。
何せ、町で使われている道具などは。
UH用に、新たにアイが作り出した物なのだから。
「アイちゃんのお陰げで助かってるよ。ありがとう。」
そうお礼を言われると、つい照れてしまうアイ。
その時。
「助けてくれー!」
遠くで叫び声がした。
と同時に、『ドーン!』と言う音。
何かが、アイ達の方へ向かって来る。
「車が暴走した!」
この町に来て、魔法や超能力で動く車も作ってみた。
試験走行もすんなり上手く行き、何事も無く使われていた。
その1つが、制御不能に陥ったらしい。
何で!?
私の設計は完璧な筈なのに!
困惑するアイ。
町の人達は力が使えないので、ただ避けるだけ。
力を持つ人も止めようとしたが、何故か効かない。
車は最早、ミサイルと化していた。
「何とか止めないと!」
そう言って、アイは。
近くの雑貨店から、あらゆる物を掻き集めて来た。
「ごめん!代金は後で払うから!」
慌てて、ショック吸収装置を組み立てる。
物自体は直ぐに出来たが、上手く作動する保証は無い。
「お願い!止まって!」
アイは道へ飛び出し、装置を盾にした。
「お嬢ちゃん!ダメだ!避けろ!」
店の人は叫んだが、アイは動こうとしない。
私のせいだから!私が守るんだ!
アイの決心は固かった、そして。
ドーーーーン!
車は何とか止まったが、アイが逆に吹っ飛ばされた。
宙を舞う間、アイは思っていた。
私、遣っちゃった……。
みんな、ごめんね……。
アイの身体が、地面へ叩き付けられようとしていた。
その時。
「大丈夫か!」
誰かがガシッと、アイの身体を受け止めた。
偶然通り掛かった、イオだった。
車は、装置のお陰で止まってはいるが。
タイヤはまだ回っている、また動き出すとも限らない。
イオはアイを、地面へそっと降ろすと。
スッと車に触れた。
すると車は、うんともすんとも言わなくなった。
「あ、ありがとう……。」
顔を真っ赤にしながら、アイはイオに礼を言った。
対して、イオは。
「その言葉を、お前に言いたがってる人達が居るぞ。」
イオに促されてアイは、周りを見ると。
大勢の人達が、何時の間にか群がっていた。
『大丈夫か!』『怪我は無い?』と、皆自分の事の様に心配してくれている。
〔必要とされてる〕、そう感じたアイは。
素直に嬉しかった。
「ごめんなさい、不完全な物を作り出してしまって。」
アイが、町の人達へ謝るも。
皆口々に、こう答えた。
「誰だって失敗位するさ。間違ったら、修正すれば良いんだから。」
「今度何か作ったら、俺達にもテストさせてくれよ。」
「協力するよ。」
町の人達はアイへ、そう申し出てくれた。
イオがアイに、優しく言い聞かせる。
「それもこれも、お前が《行動した》からなんだぞ?」
「エリカとの会話、聞いてたの!」
驚くアイ、『聞くつもりは無かったんだけどな……』と謝るイオ。
お兄ちゃんはやっぱり優しいな。
アイは思った、そこで気付く。
そうか!
行動しないと分からない事。
それが、《心》。
思うだけじゃ無い、行動も心に含まれるんだ。
実際にお兄ちゃんは、行動で示している。
だから、人間よりも人間らしいんだ。
それに比べて私は……。
アイは急に恥ずかしくなった。
みんなが持ってて、私が持って無かった物。
《私らしさ》って、こう言う事なんだ。
ならこれからは、《行動する私》でいよう。
そう決意したアイは、早速。
車が暴走した原因を調査する事にした。
その横で、雑貨店の店主が。
ちゃっかり、店の宣伝をしていた。
「車を止めたのは、うちの店で売ってる物を組み合わせて出来た奴だよ!どうだい!」
調査する内に、アイは妙な事に気が付いた。
魔法で動かしていた運転手が、車から離れた時は。
動き出さない様、魔法でブレーキを掛けていた。
それが。
誤ってよろけたUHの人が、車に手を付いてから。
途端に暴走したと言うのだ。
何故……?
イオは、その原因を知っているらしい。
でも敢えて言わないのは、『自分で確かめろ』との無言の訴え。
どうしてこんな事が……?
その時。
曽てイオから発せられた、とある言葉が。
アイの脳裏を過ぎった。
《まあ、3つの力も。根っこは同じだけどな。》
……まさか!
背中にビリッと電流が走ったアイは、速攻で家に帰ると。
慌てて調査プランを作成し始めた。
「漸く気が付いたか。この世界の【隠された秘密】を。」
アイの行動を見て、イオはポツッと呟いた。
こうして、この世界は。
より激しく回り出したのだった。
何でも思った事は実現出来た。
科学の範疇で。
しかしイオの家に来て、自分でも敵わない物に出くわした。
魔法や超能力の類では無い。
【人の心】である。
特に、イオの心だけは誰にも覗けない。
イオが、心中を探られたく無いからでは無い。
〔お兄ちゃんにはそもそも、心が無いのでは〕と感じるからだ。
外見上は人間、振る舞いも人間。
しかし、根本的に何かが違う。
だからこそアイは惹かれ、一緒に居たいと思っていた。
『自分が変われる切っ掛けになれば良い』と、心の何処かで考えているのかも知れない。
具体的にどうすれば良いか、アイにも分からないが。
「研究室に閉じこもってばっかいないでさぁ。偶には、外へ出たら?」
エリカがアイに、そう声を掛けるも。
口答えをする様に、アイは返事する。
「ここでも十分楽しいもんっ。」
「でも外に出たら、何か掴めるかもよ。切っ掛けが。」
何だかんだで、エリカも。
アイの事を気にしていたのだ。
エリカの言葉を軽くあしらう様に、アイは。
「はいはい、今度ね。」
「アイは口ばっかじゃん。行動で示せないの?」
「だって……。」
「だってじゃなくて!動かないと分からない事も有るんだよ!」
そうエリカに急かされて、渋々外へ出るアイだった。
「おや、珍しいね。お使い?」
商店街の人達に会う度、そう聞かれるアイ。
滅多に外出しないが、町での知名度は抜群。
何せ、町で使われている道具などは。
UH用に、新たにアイが作り出した物なのだから。
「アイちゃんのお陰げで助かってるよ。ありがとう。」
そうお礼を言われると、つい照れてしまうアイ。
その時。
「助けてくれー!」
遠くで叫び声がした。
と同時に、『ドーン!』と言う音。
何かが、アイ達の方へ向かって来る。
「車が暴走した!」
この町に来て、魔法や超能力で動く車も作ってみた。
試験走行もすんなり上手く行き、何事も無く使われていた。
その1つが、制御不能に陥ったらしい。
何で!?
私の設計は完璧な筈なのに!
困惑するアイ。
町の人達は力が使えないので、ただ避けるだけ。
力を持つ人も止めようとしたが、何故か効かない。
車は最早、ミサイルと化していた。
「何とか止めないと!」
そう言って、アイは。
近くの雑貨店から、あらゆる物を掻き集めて来た。
「ごめん!代金は後で払うから!」
慌てて、ショック吸収装置を組み立てる。
物自体は直ぐに出来たが、上手く作動する保証は無い。
「お願い!止まって!」
アイは道へ飛び出し、装置を盾にした。
「お嬢ちゃん!ダメだ!避けろ!」
店の人は叫んだが、アイは動こうとしない。
私のせいだから!私が守るんだ!
アイの決心は固かった、そして。
ドーーーーン!
車は何とか止まったが、アイが逆に吹っ飛ばされた。
宙を舞う間、アイは思っていた。
私、遣っちゃった……。
みんな、ごめんね……。
アイの身体が、地面へ叩き付けられようとしていた。
その時。
「大丈夫か!」
誰かがガシッと、アイの身体を受け止めた。
偶然通り掛かった、イオだった。
車は、装置のお陰で止まってはいるが。
タイヤはまだ回っている、また動き出すとも限らない。
イオはアイを、地面へそっと降ろすと。
スッと車に触れた。
すると車は、うんともすんとも言わなくなった。
「あ、ありがとう……。」
顔を真っ赤にしながら、アイはイオに礼を言った。
対して、イオは。
「その言葉を、お前に言いたがってる人達が居るぞ。」
イオに促されてアイは、周りを見ると。
大勢の人達が、何時の間にか群がっていた。
『大丈夫か!』『怪我は無い?』と、皆自分の事の様に心配してくれている。
〔必要とされてる〕、そう感じたアイは。
素直に嬉しかった。
「ごめんなさい、不完全な物を作り出してしまって。」
アイが、町の人達へ謝るも。
皆口々に、こう答えた。
「誰だって失敗位するさ。間違ったら、修正すれば良いんだから。」
「今度何か作ったら、俺達にもテストさせてくれよ。」
「協力するよ。」
町の人達はアイへ、そう申し出てくれた。
イオがアイに、優しく言い聞かせる。
「それもこれも、お前が《行動した》からなんだぞ?」
「エリカとの会話、聞いてたの!」
驚くアイ、『聞くつもりは無かったんだけどな……』と謝るイオ。
お兄ちゃんはやっぱり優しいな。
アイは思った、そこで気付く。
そうか!
行動しないと分からない事。
それが、《心》。
思うだけじゃ無い、行動も心に含まれるんだ。
実際にお兄ちゃんは、行動で示している。
だから、人間よりも人間らしいんだ。
それに比べて私は……。
アイは急に恥ずかしくなった。
みんなが持ってて、私が持って無かった物。
《私らしさ》って、こう言う事なんだ。
ならこれからは、《行動する私》でいよう。
そう決意したアイは、早速。
車が暴走した原因を調査する事にした。
その横で、雑貨店の店主が。
ちゃっかり、店の宣伝をしていた。
「車を止めたのは、うちの店で売ってる物を組み合わせて出来た奴だよ!どうだい!」
調査する内に、アイは妙な事に気が付いた。
魔法で動かしていた運転手が、車から離れた時は。
動き出さない様、魔法でブレーキを掛けていた。
それが。
誤ってよろけたUHの人が、車に手を付いてから。
途端に暴走したと言うのだ。
何故……?
イオは、その原因を知っているらしい。
でも敢えて言わないのは、『自分で確かめろ』との無言の訴え。
どうしてこんな事が……?
その時。
曽てイオから発せられた、とある言葉が。
アイの脳裏を過ぎった。
《まあ、3つの力も。根っこは同じだけどな。》
……まさか!
背中にビリッと電流が走ったアイは、速攻で家に帰ると。
慌てて調査プランを作成し始めた。
「漸く気が付いたか。この世界の【隠された秘密】を。」
アイの行動を見て、イオはポツッと呟いた。
こうして、この世界は。
より激しく回り出したのだった。
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