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第304話 夢の跡
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砂地に籠が落下した後。
それから数刻を、ラヴィは良く覚えていない。
気が付いたら、うつ伏せに倒れていた。
地面に。
砂地では無く、地面に倒れていたのだ。
落下する前には、辺り一帯が渦巻く砂地と化していた。
この目で確と、その様を見た。
なのに、目が覚めたら。
ジェーンを待ち受ける前と、同じ状態だった。
切り倒した木々の跡と、その周りを囲む鬱蒼とした森。
そしてそこら中に倒れている、兵士達。
騎士が乗って来た馬さえも、地面に横たわっている。
皆、一斉に目を覚ますと。
辺りを確認し、絶叫する。
それは、生きている喜び。
心の底から、ホッとしている感じ。
そこには敵味方の区別無く、お互いの顔を見合わせ。
抱き合いながら、歓声を上げる。
そして、何か悪い夢でも見ていたかの様に。
眉間に深いシワを刻んだまま。
各自、その場へペタリと座り込んだ。
何かが起こったが、何も無かった。
不思議な感覚が残ったまま、各地は平穏へと動き出す。
頭の中にだけ残っている、地獄の様な光景を。
或る者は『悪魔の悪戯』と言い。
また或る者は『神の戒め』と称した。
奢っていた者への、天からの忠告かも知れない。
富裕層から、貧乏人まで。
田舎暮らしから、都市部の人達まで。
その意識は共有された。
この世界には、上下無く。
左右無く。
人は皆、平等だと言う事を。
地位や職業は、ただの身分証明に過ぎない。
それを忘れ、自らの力を過信し。
己を見失った者には、相応の結末が待っている。
その教訓を胸に刻み、人々はこれからを生きて行く事となる。
それは、ラヴィ達も同様だった。
12貴族も、兵士達も。
ヘルメシア側は一斉に、故郷へ帰って行く。
それを見送る、グスターキュ側。
アギーとハヤヒを伴って、ユーメントもガティへと帰還する。
その別れ際、ユーメントはラヴィ達と約束した。
この地に、お互いの国の交流を図る都市を建設する。
ここを介して。
ワインデューとネシルは、晴れて交易が盛んとなり。
結果。
スコンティとセントリアに負けず劣らずの貿易領域へと、発展する事だろう。
そんな未来を。
もう大規模な紛争は、この世界で起こりそうに無い。
そう感じた傭兵達は、身の振り方を考える。
盗賊集団が、諜報組織へと鞍替えした様に。
彼等もまた、変わろうとしていた。
力仕事を求めて、〔ドグメロ〕を訪れる者。
〔キョウセン〕の町へ戻り、荷物運びを引き受ける者。
畑仕事に従事する者。
新しい都市建設に携わる者。
意地でも、傭兵家業を守ろうとする者。
皆、本当は清々していた。
人を傷付ける事を、好んでは居なかった。
ただ、自分の力を示すのに手っ取り早かっただけ。
他の方法で自分の価値を表す事が出来れば、それに越した事は無い。
だから、力有る者は。
誇示出来る場所を求めて、彷徨う。
幸いにも、この世界はまだ発展途中。
彼等を必要としている者は、未だ各地に居た。
それぞれの場所で、それぞれの役目を見出し。
生きて行く。
そう心に決めた。
ロッシェが国境へ駆け付けた時には、既に都市の構築が始まっていた。
道中、借りていた物を返しながら。
漸く、ここまで辿り着いたのだが。
まず、ヅオウからウォベリへと移動し。
〔ヒーケル〕の町で、町長の〔ペント〕の元を訪れ。
〔破魔の鎧〕を。
続いて、そこから南へ移動して。
コーレイに在る〔バーエル〕の町で。
一帯を治めている、〔ニーデュ家〕の屋敷を尋ね。
当主の〔イガ〕に、指輪の〔アクアライト〕を返却する。
ペントもイガも、『返さなくて良い』と言ってくれたが。
それよりも大事な物を手に入れた。
それが、これからの自分を守ってくれる。
そう話し、納得して貰って。
ロッシェは立ち去った。
そこから更に南下。
支配地域であるヅオウへ帰還途中の、パップと出くわし。
そのスッキリした顔付きを見て、全てが終わったと悟る。
パップに、『あんたの家族は皆無事だ』と告げると。
馬からわざわざ降りて、ロッシェに一礼するパップ。
それが彼なりの、誠意の表し方。
パップの好意を受け入れ、ロッシェは南下を続ける。
事が済んだのなら、姉の〔ルーシェ〕の元へ帰還しても良かったのだが。
一目、見ておきたかった。
戦場の有様を。
辿り着いた時は、余りに平和で拍子抜けしたが。
『それが今回、得られた結果だ』と思い直し。
建設現場に居合わせた錬金術師へ、ラヴィ達への伝言を残して。
姉の待つ〔ヘンドリ〕へと、戻って行った。
ロッシェに遅れる事、数日。
ロイスも国境へと到着した。
しかし、戦場の跡は最早消え失せ。
推測すら許されない程に、辺りの景色が変わっていた。
残念がるロイス。
心の拠り所としている、クライスの姿は見当たらない。
宗主家なら、その行方を知っている筈。
そう考え、騎士から行商人へと見掛けを変える。
これも、クライスの真似。
そうでもしないと、心の正常さが失われそうだったから。
一路、宗主家の住まう〔ケミスタ〕へと突き進む。
そこに、一縷の望みを託して。
ユーメントは、王宮へ戻り。
留守を預かる、影武者の〔リュース〕から報告を受ける。
ドグメロに避難していた〔シーレ〕達は、ただ今荷車に乗って帰路の途中。
運んでいるのは勿論、〔ブラウニー〕。
彼が大量に持って来たリンゴをかじりながら、のんびりと旅をしている。
王女達の顔には、笑顔が戻っていた。
〔ルビィ〕の娘達は、シーレの養女となる事を決意。
これからは3人では無く、4人姉妹。
手を取り合って、仲良くやって行こう。
シーレを交え、荷車の上で話し合う。
その姿を見ながら、満足な表情となるブラウニー。
しかし商人としては、まだ一歩踏み出したばかり。
先の見えない未来を、楽しみにしながら。
王都へと進む、ブラウニー達だった。
「以上でございます。」
グスターキュ帝国首都、〔アウラスタ〕で。
父親である〔アウラル2世〕に事の次第を報告する、ラヴィ。
その後ろには、セレナが控える。
実はラヴィ達は直帰では無く、一度シルフェニアへ寄っていた。
そこで、王女の〔エフィリア〕と息子?の〔エミル〕へ。
結末まで話した後。
セレナは妖精達に〔チャーミー〕を返す。
『人間には過ぎた物だから』と、悪用を恐れて。
その意図を汲み取り、大切に受け取る妖精達。
一言、『預かるだけだからね、これはもう君の物だから』と言われ。
『ありがとう』と、感謝の言葉を掛けるセレナ。
ラヴィも、老妖精の〔オッディ〕と面会。
『切り札を使わずに済みました』と、ネックレスを見せる。
『それは良かった』と、固い握手を交わすオッディ。
ネックレスに、複雑な感情を感じ取ると。
一言、ポツリ。
「探し人が、見つかると良いのう。」
黙って頷くラヴィ。
そうやって、一通り妖精達と触れ合った後。
アウラスタへと戻って来たのだ。
アンは、一連の報告をしにケミスタへ。
『大丈夫よ、きっと帰って来るから』とラヴィへ言い残し。
そこで一旦別れた。
そしてここからは、〔マリー〕と〔エリー〕に戻り。
堂々と、宮殿の中へと入る。
急に消えたので、女中達は心配していたが。
2人の姿を見て、漸くホッとする。
女中達は言い合っていた。
残された、あの手紙は本物だったと。
魔法使いからの招待状、そう言う事になっていた。
代わりに釈明するエリー。
そこへ、『国王がお待ちかねだ』と一報が入る。
アウラル2世も、父親として心配していたのだ。
どの子も皆、大切な者達。
それを代表して動いているマリーは、更に別格だった。
そして記した通り、無事に報告は終わる。
しかし、そこで終わりでは無い。
寧ろ、ここからがスタートなのだと。
実感する、マリーとエリー。
ただ今一、パッとしない表情のマリー。
父親が尋ねる。
「やはり、《彼》の事が気になるのか?」
押し黙ったままのマリー。
心中を察し、そのまま2人を下がらせる父親。
一礼した後、久し振りに。
自分の部屋でゆっくりとするマリー。
部屋のドアから、覗く者。
実の弟で9才の、【ジュリエル】。
『様子がおかしい』と心配になって、見に来たのだ。
ガバッと抱き付き、マリーに話し掛ける。
「姉様、大丈夫?」
「ごめんね、心配掛けて。」
そうだ。
ここでしっかりしないと。
あいつに笑われる。
『こんな小さな子にまで、気を遣わせるのか』って。
「ありがとう。もう大丈夫だよ。」
「良かったー。」
安心した顔で、姉に甘えるジュリエル。
その頭を優しく撫でながら。
弟の無邪気さに救われる、マリーだった。
結局、あれから音信不通。
宗主家の力を以ってしても、クライスの行方は掴めない。
『もう頼らない』と、ロイスはケミスタの町を出て行った。
今頃何処かで、路駐泊でもしているだろう。
ロイスとは違い、アンは心配していない。
今までもそうだったから。
たとえ離れていても、心は繋がっている。
そう信じている。
だから、何時帰って来ても良い様に。
兄様の居場所を用意しよう。
宮殿へと帰ったマリー達と、連絡を取りながら。
アンはじっと、クライスの帰りを待っていた。
そうしている内に、何か月か過ぎ去った。
それから数刻を、ラヴィは良く覚えていない。
気が付いたら、うつ伏せに倒れていた。
地面に。
砂地では無く、地面に倒れていたのだ。
落下する前には、辺り一帯が渦巻く砂地と化していた。
この目で確と、その様を見た。
なのに、目が覚めたら。
ジェーンを待ち受ける前と、同じ状態だった。
切り倒した木々の跡と、その周りを囲む鬱蒼とした森。
そしてそこら中に倒れている、兵士達。
騎士が乗って来た馬さえも、地面に横たわっている。
皆、一斉に目を覚ますと。
辺りを確認し、絶叫する。
それは、生きている喜び。
心の底から、ホッとしている感じ。
そこには敵味方の区別無く、お互いの顔を見合わせ。
抱き合いながら、歓声を上げる。
そして、何か悪い夢でも見ていたかの様に。
眉間に深いシワを刻んだまま。
各自、その場へペタリと座り込んだ。
何かが起こったが、何も無かった。
不思議な感覚が残ったまま、各地は平穏へと動き出す。
頭の中にだけ残っている、地獄の様な光景を。
或る者は『悪魔の悪戯』と言い。
また或る者は『神の戒め』と称した。
奢っていた者への、天からの忠告かも知れない。
富裕層から、貧乏人まで。
田舎暮らしから、都市部の人達まで。
その意識は共有された。
この世界には、上下無く。
左右無く。
人は皆、平等だと言う事を。
地位や職業は、ただの身分証明に過ぎない。
それを忘れ、自らの力を過信し。
己を見失った者には、相応の結末が待っている。
その教訓を胸に刻み、人々はこれからを生きて行く事となる。
それは、ラヴィ達も同様だった。
12貴族も、兵士達も。
ヘルメシア側は一斉に、故郷へ帰って行く。
それを見送る、グスターキュ側。
アギーとハヤヒを伴って、ユーメントもガティへと帰還する。
その別れ際、ユーメントはラヴィ達と約束した。
この地に、お互いの国の交流を図る都市を建設する。
ここを介して。
ワインデューとネシルは、晴れて交易が盛んとなり。
結果。
スコンティとセントリアに負けず劣らずの貿易領域へと、発展する事だろう。
そんな未来を。
もう大規模な紛争は、この世界で起こりそうに無い。
そう感じた傭兵達は、身の振り方を考える。
盗賊集団が、諜報組織へと鞍替えした様に。
彼等もまた、変わろうとしていた。
力仕事を求めて、〔ドグメロ〕を訪れる者。
〔キョウセン〕の町へ戻り、荷物運びを引き受ける者。
畑仕事に従事する者。
新しい都市建設に携わる者。
意地でも、傭兵家業を守ろうとする者。
皆、本当は清々していた。
人を傷付ける事を、好んでは居なかった。
ただ、自分の力を示すのに手っ取り早かっただけ。
他の方法で自分の価値を表す事が出来れば、それに越した事は無い。
だから、力有る者は。
誇示出来る場所を求めて、彷徨う。
幸いにも、この世界はまだ発展途中。
彼等を必要としている者は、未だ各地に居た。
それぞれの場所で、それぞれの役目を見出し。
生きて行く。
そう心に決めた。
ロッシェが国境へ駆け付けた時には、既に都市の構築が始まっていた。
道中、借りていた物を返しながら。
漸く、ここまで辿り着いたのだが。
まず、ヅオウからウォベリへと移動し。
〔ヒーケル〕の町で、町長の〔ペント〕の元を訪れ。
〔破魔の鎧〕を。
続いて、そこから南へ移動して。
コーレイに在る〔バーエル〕の町で。
一帯を治めている、〔ニーデュ家〕の屋敷を尋ね。
当主の〔イガ〕に、指輪の〔アクアライト〕を返却する。
ペントもイガも、『返さなくて良い』と言ってくれたが。
それよりも大事な物を手に入れた。
それが、これからの自分を守ってくれる。
そう話し、納得して貰って。
ロッシェは立ち去った。
そこから更に南下。
支配地域であるヅオウへ帰還途中の、パップと出くわし。
そのスッキリした顔付きを見て、全てが終わったと悟る。
パップに、『あんたの家族は皆無事だ』と告げると。
馬からわざわざ降りて、ロッシェに一礼するパップ。
それが彼なりの、誠意の表し方。
パップの好意を受け入れ、ロッシェは南下を続ける。
事が済んだのなら、姉の〔ルーシェ〕の元へ帰還しても良かったのだが。
一目、見ておきたかった。
戦場の有様を。
辿り着いた時は、余りに平和で拍子抜けしたが。
『それが今回、得られた結果だ』と思い直し。
建設現場に居合わせた錬金術師へ、ラヴィ達への伝言を残して。
姉の待つ〔ヘンドリ〕へと、戻って行った。
ロッシェに遅れる事、数日。
ロイスも国境へと到着した。
しかし、戦場の跡は最早消え失せ。
推測すら許されない程に、辺りの景色が変わっていた。
残念がるロイス。
心の拠り所としている、クライスの姿は見当たらない。
宗主家なら、その行方を知っている筈。
そう考え、騎士から行商人へと見掛けを変える。
これも、クライスの真似。
そうでもしないと、心の正常さが失われそうだったから。
一路、宗主家の住まう〔ケミスタ〕へと突き進む。
そこに、一縷の望みを託して。
ユーメントは、王宮へ戻り。
留守を預かる、影武者の〔リュース〕から報告を受ける。
ドグメロに避難していた〔シーレ〕達は、ただ今荷車に乗って帰路の途中。
運んでいるのは勿論、〔ブラウニー〕。
彼が大量に持って来たリンゴをかじりながら、のんびりと旅をしている。
王女達の顔には、笑顔が戻っていた。
〔ルビィ〕の娘達は、シーレの養女となる事を決意。
これからは3人では無く、4人姉妹。
手を取り合って、仲良くやって行こう。
シーレを交え、荷車の上で話し合う。
その姿を見ながら、満足な表情となるブラウニー。
しかし商人としては、まだ一歩踏み出したばかり。
先の見えない未来を、楽しみにしながら。
王都へと進む、ブラウニー達だった。
「以上でございます。」
グスターキュ帝国首都、〔アウラスタ〕で。
父親である〔アウラル2世〕に事の次第を報告する、ラヴィ。
その後ろには、セレナが控える。
実はラヴィ達は直帰では無く、一度シルフェニアへ寄っていた。
そこで、王女の〔エフィリア〕と息子?の〔エミル〕へ。
結末まで話した後。
セレナは妖精達に〔チャーミー〕を返す。
『人間には過ぎた物だから』と、悪用を恐れて。
その意図を汲み取り、大切に受け取る妖精達。
一言、『預かるだけだからね、これはもう君の物だから』と言われ。
『ありがとう』と、感謝の言葉を掛けるセレナ。
ラヴィも、老妖精の〔オッディ〕と面会。
『切り札を使わずに済みました』と、ネックレスを見せる。
『それは良かった』と、固い握手を交わすオッディ。
ネックレスに、複雑な感情を感じ取ると。
一言、ポツリ。
「探し人が、見つかると良いのう。」
黙って頷くラヴィ。
そうやって、一通り妖精達と触れ合った後。
アウラスタへと戻って来たのだ。
アンは、一連の報告をしにケミスタへ。
『大丈夫よ、きっと帰って来るから』とラヴィへ言い残し。
そこで一旦別れた。
そしてここからは、〔マリー〕と〔エリー〕に戻り。
堂々と、宮殿の中へと入る。
急に消えたので、女中達は心配していたが。
2人の姿を見て、漸くホッとする。
女中達は言い合っていた。
残された、あの手紙は本物だったと。
魔法使いからの招待状、そう言う事になっていた。
代わりに釈明するエリー。
そこへ、『国王がお待ちかねだ』と一報が入る。
アウラル2世も、父親として心配していたのだ。
どの子も皆、大切な者達。
それを代表して動いているマリーは、更に別格だった。
そして記した通り、無事に報告は終わる。
しかし、そこで終わりでは無い。
寧ろ、ここからがスタートなのだと。
実感する、マリーとエリー。
ただ今一、パッとしない表情のマリー。
父親が尋ねる。
「やはり、《彼》の事が気になるのか?」
押し黙ったままのマリー。
心中を察し、そのまま2人を下がらせる父親。
一礼した後、久し振りに。
自分の部屋でゆっくりとするマリー。
部屋のドアから、覗く者。
実の弟で9才の、【ジュリエル】。
『様子がおかしい』と心配になって、見に来たのだ。
ガバッと抱き付き、マリーに話し掛ける。
「姉様、大丈夫?」
「ごめんね、心配掛けて。」
そうだ。
ここでしっかりしないと。
あいつに笑われる。
『こんな小さな子にまで、気を遣わせるのか』って。
「ありがとう。もう大丈夫だよ。」
「良かったー。」
安心した顔で、姉に甘えるジュリエル。
その頭を優しく撫でながら。
弟の無邪気さに救われる、マリーだった。
結局、あれから音信不通。
宗主家の力を以ってしても、クライスの行方は掴めない。
『もう頼らない』と、ロイスはケミスタの町を出て行った。
今頃何処かで、路駐泊でもしているだろう。
ロイスとは違い、アンは心配していない。
今までもそうだったから。
たとえ離れていても、心は繋がっている。
そう信じている。
だから、何時帰って来ても良い様に。
兄様の居場所を用意しよう。
宮殿へと帰ったマリー達と、連絡を取りながら。
アンはじっと、クライスの帰りを待っていた。
そうしている内に、何か月か過ぎ去った。
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