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第237話 ヅオウへの対策会議
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テューアの前から、エッジスへ戻る道中。
ロッシェは、明らかに息苦しさが改善していると実感する。
それは、テューアの閉じ具合がしっかりした事と。
クライスが門の補修の為に、辺り一帯の魔力を強制的に掻き集めた結果。
そう考えていた。
敵戦力も、余りのクライスの凄さに平伏している様だ。
チラチラッと、時々後ろを振り返っている。
あれが錬金術師の頂点に立つ者。
ケイシム様と互角か、それ以上……?
クライスとの比較対象では、セメリトとワルスしか思い浮かばないのだろう。
それ程の圧倒的光景。
捕らえられているにも係わらず、禁忌を間近に見られた満足感からか。
『もうどうなっても良い』とさえ思う奴が出る始末。
敵側は、完全に牙を抜かれていた。
「おお!良くぞ御無事で!」
長老を始め、町の皆がクライス達を出迎える。
巨大な魔力の渦は、エッジスからも見えたらしい。
テューアを守った英雄として。
『一目クライスを見たい』と願う者達で、道への入り口はごった返していた。
そんな町の姿をよそに、『まず捕らえた者の処遇を』と呼び掛けるクライス。
金の縄で縛られている連中を、群衆の前に突き出し。
『浮かれるのは後にしろよ』と、ロッシェも釘を刺す。
長老の前に、補修班リーダーのジェードとサブリーダーのミクリシアが進み出て。
色々と言葉を交わした後。
長老が群衆に命ずる。
「捕らえた者共を、連れて行け!」
すると熱狂的に盛り上がっていた群衆も、漸く落ち着く。
我に返ったかの様に、各自動き出す。
敵を連行する者、テューアが守られた事を知らせに走る者。
宴会の用意をしようとする、気の早い者も居た。
あれだけ騒がしかった入り口も、いつもの様に閑散として来る。
それも当然。
テューアへの道は本来、人の往来を目的とした物では無いのだから。
今後の事を話し合う為、主要な面々は長老の屋敷へと向かった。
「本当に、魔力の流れが弱まってるな。」
例の変な造りの部屋に入り。
左側に在る虹色の窓を覗き込むロッシェ。
最初に見た時より、見える流れの太さも早さも格段に落ちている。
テューアの隙間が、それだけキツく絞められたと言う事。
長老達もそれを確認し、安堵の表情を浮かべる。
結構な時間、奮戦していたらしい。
やっと肩の荷が下りる。
そう思いたかった。
しかしそれを邪魔する者が。
これから、それに付いて話し合われる。
出席者は長老とジェード、ミクリシア。
そしてクライスとロッシェ。
『門を何とかする』と言う、皇帝との約束は果たした。
ここから何をするかは、クライス達の自由。
だから敢えて、クライスは提案する。
「あれ程の魔力を保有した魔物を、敵が御する事が出来るとは考えられません。早急に乗り込むべきかと。」
「俺も賛成だ。故郷を滅茶苦茶にされたら、堪ったもんじゃ無い。」
ロッシェも声を上げる。
それに対して、慎重な態度の長老達。
「相手の戦力を量りかねる以上、無暗に乗り込んでも返り討ちに合うだけでは?」
「長老の仰る通りです。まず情報を集めた方が宜しいかと。」
もっともな意見が、長老とジェードから出る。
クライスは答える。
「武力としては、恐らくそれ程残っていません。」
「根拠は何ですかな?」
長老が問う。
まずロッシェが意見を言う。
「あんな事を仕掛けて来るんだ、かなり追い込まれてる筈だぜ?」
「それでは根拠が弱い。」
ミクリシアに、あっさりとあしらわれる。
それでも続けるロッシェ。
「魔物を憑依させた人間をあれだけ寄越して来たんだぞ?手薄になっていると考えるのが筋だと思うが?」
「それは一理有るな……。」
それには同意するミクリシア。
錬金術師はともかく、大規模侵攻の為に蓄えていた魔物の戦力は一気に減っただろう。
そこへ、クライスが付け足す。
「ヅオウは今、実質上ケミーヤ教の本体しか居ない筈です。陛下の招集によって。」
「あの飛んで行った、白いカラスの事ですかな?」
長老は、ヅオウの方へ飛んで行くのを目撃していた。
それも2羽。
それを話すと、クライスは頷く。
「何とかテューアをこじ開けようと、チンパレ家当主も集まって相談でもしていたんでしょう。でもその余裕が無くなった。」
「テノ、じゃ無かった。陛下の演説の件か?」
ロッシェは間近で見ていた。
テノが皇帝として、命を下す場面を。
あの時、情勢が大きく動いた。
魔法使いが王族側へ付いたのだ。
保身を図ろうとするのが、権力者として真っ当な行動。
だからポーズでも良いから、行動として示しておく必要がある。
そこまでして刃向うつもりは無い。
魔法使いを敵に回す程、愚かでは無いと。
あの連中も、腸が煮えくり返っているだろうが。
下げたくも無い頭を下げるのだ。
何か仕掛けて来るかも知れんが、その辺はラヴィ達に任せよう。
そうクライス達は考えていた。
こちらはこちらで、出来る事を。
クライスが続ける。
「陛下の演説によって、魔法使いの立ち位置が明確となった。それで敵側も、勢力を分断せざるを得なくなった。」
「ある程度の兵を連れて行かないと、命に従わないと思われるからな。」
ロッシェが応じる。
クライスが長老達に向かって言う。
「断言します。事態は、収束へ向かって進んでいます。と言うか、《進めて》います。」
「妙な言い回しですな?」
長老が反応する。
まるで、こうなる事が予め決まっているかの様に感じたのだ。
それについて、クライスが答える。
「魔法使いが直々に動いているのです。そうなる様に。」
「魔法使いが!そうでしたか。」
納得する長老達。
彼等は魔法使いが直接出張って来ている事に、勘違いを起こしている。
魔法使いがこの世界の歴史を、そう言う風に作り上げようとしていると思っているが。
あくまで歴史上に魔法使いの行動がそう刻まれているから、そうしているだけなのだ。
自然の成り行き。
偶然と言う名の必然。
ただそれだけ。
長老達の理解が得られた所で、クライスはゴソゴソと荷物の中を探る。
手ぶらで旅をしていた訳では無い。
ちゃんと持つべき物を持っていた。
それは袋の中で、下着等の中に埋もれていたが。
部屋の床にそれを広げる。
『おおーっ!』と驚きの声を上げる長老達。
それは。
「Pじゃねえか!いつの間に!」
ロッシェも、クライスが持っていたとは知らなかった。
てっきりテノに返したのかと思っていた。
クライスは呆れて、ロッシェに言う。
「成り行きだと必ず、ヅオウに在る〔妖精の暮らした跡〕に突入するだろう?これが無いと、正確な位置が分からないじゃないか。」
「あー、そうか。確かにな。」
適当な返事のロッシェ。
姉さん探しの事ばかり考えていて、その想定を忘れていた。
だから話を流そうとする。
都合良く、長老達がPに食い付いた。
「これは現物ですかな?」
「いや、それは流石に陛下がお許しにならないでしょう。」
「所々に在る赤丸の印、これがその場所ですか?」
思い思いに声を発する長老達。
少し興奮気味の様だ。
躱せたとホッとするロッシェ。
場を落ち着かせる様に、クライスは言う。
「問題の箇所は、ここです。」
Pのある部分を指差すクライス。
横にやたら長い、ヅオウの領土。
しかし町はそんなに無い。
辺境と言う事だからだろうか。
描かれているのは。
シキロの上に位置する、ヅオウの中では南に当たる〔ヘンドリ〕。
そのやや北西に位置する、首都の〔デンド〕。
ミースェから続く街道は、ヘンドリへと繋がっている。
それはヘンドリが、曽て帝都であった事の名残り。
ヘンドリから真西へ向かう位置に、エリントが在る。
本来は、ヘンドリとエリントが直結していたのだが。
防衛上、間を遮る様にミースェが造られた。
それを受けて、エリントを避ける様にデンドを造設。
両者の関係は、結構ややこしい為。
この様な位置取りとなった。
問題は、ヘンドリとデンドの間。
ミースェからヘンドリへは、或る程度距離がある。
ヘンドリからデンドも、それなりの距離が取られている。
つまり、デンドから真っ直ぐ南へ下った所は。
町は無く、街道と直接交わる事になる。
そのライン上に、赤丸が記されている。
赤丸へ繋がる細い道は、デンド側からしか引かれていない。
つまり、ミースェを経由して敵地と思われる場所へ到達するには。
街道の何処かで横道に逸れ、怪しい空間へと潜って行かなければならない。
流石に今のその辺りの状態は、ナラム家が情報をシャットアウトしているのか。
新規に書き直されていない。
森かも知れないし、岩がゴロゴロしているのかも知れない。
何が待ち受けているか分からない。
敵の本拠地の傍だ、これまでとは比べ物にならない程危険だろう。
それを承知で、ロッシェは向かう覚悟。
クライスも同じ。
かと言って。
ぞろぞろ錬金術師が付いて言ったところで、動きにくくなるだけ。
なので、エッジスに集まっていた者達は。
ミースェから敵を牽制し、意識をクライス達から逸らさせる役目を。
皆の意見は一致した。
どうやら役割分担は済んだ様だ。
ジェードとミクリシアは、作戦を伝える為仲間の元へと向かう。
準備が出来次第。
エリントからヒーケルを経由して、ミースェに入る。
一旦それに紛れ込む事にするクライス達。
敵の目を避け、行方を掴ませない様にする考え。
魔物の数が減っているから、敵もそう簡単に居場所を探れなくなっている筈。
敵側のテューアへの突入。
あれは相当な賭けに違いない。
戦力を大幅ダウンさせる事になろうとも。
欲しがった。
強力な魔物を。
戦況をひっくり返せる程の。
長老の屋敷を後にし、クライスは思う。
終わりは近い。
でもそれは、《俺にとっての》では無い。
まだ俺には先がある。
みんなは関係無い。
俺自身が、この手でけりを付けなければならない事が。
『巻き込みたく無い』と言ったら、何て言うだろうか。
困った顔をするだろうか。
まあ良い、考えるには少々早かったか……。
そう思い直し。
錬金術師達の旅支度を手伝いに行く、クライスだった。
ロッシェは、明らかに息苦しさが改善していると実感する。
それは、テューアの閉じ具合がしっかりした事と。
クライスが門の補修の為に、辺り一帯の魔力を強制的に掻き集めた結果。
そう考えていた。
敵戦力も、余りのクライスの凄さに平伏している様だ。
チラチラッと、時々後ろを振り返っている。
あれが錬金術師の頂点に立つ者。
ケイシム様と互角か、それ以上……?
クライスとの比較対象では、セメリトとワルスしか思い浮かばないのだろう。
それ程の圧倒的光景。
捕らえられているにも係わらず、禁忌を間近に見られた満足感からか。
『もうどうなっても良い』とさえ思う奴が出る始末。
敵側は、完全に牙を抜かれていた。
「おお!良くぞ御無事で!」
長老を始め、町の皆がクライス達を出迎える。
巨大な魔力の渦は、エッジスからも見えたらしい。
テューアを守った英雄として。
『一目クライスを見たい』と願う者達で、道への入り口はごった返していた。
そんな町の姿をよそに、『まず捕らえた者の処遇を』と呼び掛けるクライス。
金の縄で縛られている連中を、群衆の前に突き出し。
『浮かれるのは後にしろよ』と、ロッシェも釘を刺す。
長老の前に、補修班リーダーのジェードとサブリーダーのミクリシアが進み出て。
色々と言葉を交わした後。
長老が群衆に命ずる。
「捕らえた者共を、連れて行け!」
すると熱狂的に盛り上がっていた群衆も、漸く落ち着く。
我に返ったかの様に、各自動き出す。
敵を連行する者、テューアが守られた事を知らせに走る者。
宴会の用意をしようとする、気の早い者も居た。
あれだけ騒がしかった入り口も、いつもの様に閑散として来る。
それも当然。
テューアへの道は本来、人の往来を目的とした物では無いのだから。
今後の事を話し合う為、主要な面々は長老の屋敷へと向かった。
「本当に、魔力の流れが弱まってるな。」
例の変な造りの部屋に入り。
左側に在る虹色の窓を覗き込むロッシェ。
最初に見た時より、見える流れの太さも早さも格段に落ちている。
テューアの隙間が、それだけキツく絞められたと言う事。
長老達もそれを確認し、安堵の表情を浮かべる。
結構な時間、奮戦していたらしい。
やっと肩の荷が下りる。
そう思いたかった。
しかしそれを邪魔する者が。
これから、それに付いて話し合われる。
出席者は長老とジェード、ミクリシア。
そしてクライスとロッシェ。
『門を何とかする』と言う、皇帝との約束は果たした。
ここから何をするかは、クライス達の自由。
だから敢えて、クライスは提案する。
「あれ程の魔力を保有した魔物を、敵が御する事が出来るとは考えられません。早急に乗り込むべきかと。」
「俺も賛成だ。故郷を滅茶苦茶にされたら、堪ったもんじゃ無い。」
ロッシェも声を上げる。
それに対して、慎重な態度の長老達。
「相手の戦力を量りかねる以上、無暗に乗り込んでも返り討ちに合うだけでは?」
「長老の仰る通りです。まず情報を集めた方が宜しいかと。」
もっともな意見が、長老とジェードから出る。
クライスは答える。
「武力としては、恐らくそれ程残っていません。」
「根拠は何ですかな?」
長老が問う。
まずロッシェが意見を言う。
「あんな事を仕掛けて来るんだ、かなり追い込まれてる筈だぜ?」
「それでは根拠が弱い。」
ミクリシアに、あっさりとあしらわれる。
それでも続けるロッシェ。
「魔物を憑依させた人間をあれだけ寄越して来たんだぞ?手薄になっていると考えるのが筋だと思うが?」
「それは一理有るな……。」
それには同意するミクリシア。
錬金術師はともかく、大規模侵攻の為に蓄えていた魔物の戦力は一気に減っただろう。
そこへ、クライスが付け足す。
「ヅオウは今、実質上ケミーヤ教の本体しか居ない筈です。陛下の招集によって。」
「あの飛んで行った、白いカラスの事ですかな?」
長老は、ヅオウの方へ飛んで行くのを目撃していた。
それも2羽。
それを話すと、クライスは頷く。
「何とかテューアをこじ開けようと、チンパレ家当主も集まって相談でもしていたんでしょう。でもその余裕が無くなった。」
「テノ、じゃ無かった。陛下の演説の件か?」
ロッシェは間近で見ていた。
テノが皇帝として、命を下す場面を。
あの時、情勢が大きく動いた。
魔法使いが王族側へ付いたのだ。
保身を図ろうとするのが、権力者として真っ当な行動。
だからポーズでも良いから、行動として示しておく必要がある。
そこまでして刃向うつもりは無い。
魔法使いを敵に回す程、愚かでは無いと。
あの連中も、腸が煮えくり返っているだろうが。
下げたくも無い頭を下げるのだ。
何か仕掛けて来るかも知れんが、その辺はラヴィ達に任せよう。
そうクライス達は考えていた。
こちらはこちらで、出来る事を。
クライスが続ける。
「陛下の演説によって、魔法使いの立ち位置が明確となった。それで敵側も、勢力を分断せざるを得なくなった。」
「ある程度の兵を連れて行かないと、命に従わないと思われるからな。」
ロッシェが応じる。
クライスが長老達に向かって言う。
「断言します。事態は、収束へ向かって進んでいます。と言うか、《進めて》います。」
「妙な言い回しですな?」
長老が反応する。
まるで、こうなる事が予め決まっているかの様に感じたのだ。
それについて、クライスが答える。
「魔法使いが直々に動いているのです。そうなる様に。」
「魔法使いが!そうでしたか。」
納得する長老達。
彼等は魔法使いが直接出張って来ている事に、勘違いを起こしている。
魔法使いがこの世界の歴史を、そう言う風に作り上げようとしていると思っているが。
あくまで歴史上に魔法使いの行動がそう刻まれているから、そうしているだけなのだ。
自然の成り行き。
偶然と言う名の必然。
ただそれだけ。
長老達の理解が得られた所で、クライスはゴソゴソと荷物の中を探る。
手ぶらで旅をしていた訳では無い。
ちゃんと持つべき物を持っていた。
それは袋の中で、下着等の中に埋もれていたが。
部屋の床にそれを広げる。
『おおーっ!』と驚きの声を上げる長老達。
それは。
「Pじゃねえか!いつの間に!」
ロッシェも、クライスが持っていたとは知らなかった。
てっきりテノに返したのかと思っていた。
クライスは呆れて、ロッシェに言う。
「成り行きだと必ず、ヅオウに在る〔妖精の暮らした跡〕に突入するだろう?これが無いと、正確な位置が分からないじゃないか。」
「あー、そうか。確かにな。」
適当な返事のロッシェ。
姉さん探しの事ばかり考えていて、その想定を忘れていた。
だから話を流そうとする。
都合良く、長老達がPに食い付いた。
「これは現物ですかな?」
「いや、それは流石に陛下がお許しにならないでしょう。」
「所々に在る赤丸の印、これがその場所ですか?」
思い思いに声を発する長老達。
少し興奮気味の様だ。
躱せたとホッとするロッシェ。
場を落ち着かせる様に、クライスは言う。
「問題の箇所は、ここです。」
Pのある部分を指差すクライス。
横にやたら長い、ヅオウの領土。
しかし町はそんなに無い。
辺境と言う事だからだろうか。
描かれているのは。
シキロの上に位置する、ヅオウの中では南に当たる〔ヘンドリ〕。
そのやや北西に位置する、首都の〔デンド〕。
ミースェから続く街道は、ヘンドリへと繋がっている。
それはヘンドリが、曽て帝都であった事の名残り。
ヘンドリから真西へ向かう位置に、エリントが在る。
本来は、ヘンドリとエリントが直結していたのだが。
防衛上、間を遮る様にミースェが造られた。
それを受けて、エリントを避ける様にデンドを造設。
両者の関係は、結構ややこしい為。
この様な位置取りとなった。
問題は、ヘンドリとデンドの間。
ミースェからヘンドリへは、或る程度距離がある。
ヘンドリからデンドも、それなりの距離が取られている。
つまり、デンドから真っ直ぐ南へ下った所は。
町は無く、街道と直接交わる事になる。
そのライン上に、赤丸が記されている。
赤丸へ繋がる細い道は、デンド側からしか引かれていない。
つまり、ミースェを経由して敵地と思われる場所へ到達するには。
街道の何処かで横道に逸れ、怪しい空間へと潜って行かなければならない。
流石に今のその辺りの状態は、ナラム家が情報をシャットアウトしているのか。
新規に書き直されていない。
森かも知れないし、岩がゴロゴロしているのかも知れない。
何が待ち受けているか分からない。
敵の本拠地の傍だ、これまでとは比べ物にならない程危険だろう。
それを承知で、ロッシェは向かう覚悟。
クライスも同じ。
かと言って。
ぞろぞろ錬金術師が付いて言ったところで、動きにくくなるだけ。
なので、エッジスに集まっていた者達は。
ミースェから敵を牽制し、意識をクライス達から逸らさせる役目を。
皆の意見は一致した。
どうやら役割分担は済んだ様だ。
ジェードとミクリシアは、作戦を伝える為仲間の元へと向かう。
準備が出来次第。
エリントからヒーケルを経由して、ミースェに入る。
一旦それに紛れ込む事にするクライス達。
敵の目を避け、行方を掴ませない様にする考え。
魔物の数が減っているから、敵もそう簡単に居場所を探れなくなっている筈。
敵側のテューアへの突入。
あれは相当な賭けに違いない。
戦力を大幅ダウンさせる事になろうとも。
欲しがった。
強力な魔物を。
戦況をひっくり返せる程の。
長老の屋敷を後にし、クライスは思う。
終わりは近い。
でもそれは、《俺にとっての》では無い。
まだ俺には先がある。
みんなは関係無い。
俺自身が、この手でけりを付けなければならない事が。
『巻き込みたく無い』と言ったら、何て言うだろうか。
困った顔をするだろうか。
まあ良い、考えるには少々早かったか……。
そう思い直し。
錬金術師達の旅支度を手伝いに行く、クライスだった。
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日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
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