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第141話 紳士、葛藤す
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「し、仕組んだ?わざと?何で?」
クライスの発言にハテナマークのハリー。
わざわざ父を、皇帝の元へ行かせる理由が思い付かない。
それにクライスが答える。
「恐らく、もう嫌気が差したんじゃないかな?」
「嫌気?」
「そう。君は王族と婚約させられた。だよね?」
「お父様が是非にと言うから……。」
「本心だと思うかい?」
「え?」
クライスの問い掛けに詰まるハリー。
「大事な娘を政争の具にしようなんて、子供思いの親ならまず考えない。」
チラッとラヴィの方を見たが。
その発言時、クライスは顔を確認出来なかった。
なるべく避けて来た言い回しだが、事態が急を要するので仕方無い。
話を続ける。
「ずっと従ってきたが、娘の将来まで利用しようとする姿勢が親として許せなかったのだろう。その心を先読みして、向こうが仕掛けた。」
裏切られる前に、処分。
そう考えたのだろう。
多少急ぎ過ぎだが。
「君が逃げ出したのも想定内と言うのは、そう言う事さ。君が自ら逃げ出さなくても、破談させるつもりがあった。」
「そ、そんな……。」
崩れ落ちるハリー。
共に座り、抱きしめる力を緩めて包み込む様にするラヴィ。
その目にはうっすらと涙。
それは同情からか。
同じ境遇への共感からか。
クライスは口調を強めて、リンツに言う。
「さあ、返して貰おうか、優しき紳士を。」
「かっかっかっ!」
奇妙な笑い声を上げるリンツ。
「返す?どうやって?無理だね!」
「ほう。言い切るねえ。」
自信たっぷりのリンツに、冷ややかなクライス。
「簡単さ。こいつがそれを望んじゃあいない。」
右手親指で自分の胸を指すリンツ。
「こいつはなあ、自分から身を捧げたんだ。望んだ結果なんだよ!」
偉そうに御託を並べやがって。
てめえの思い通りに行くと思うなよ!
リンツに憑り付く魔物はそう思っていた。
しかし。
クライスは促す。
「今こそ、その本心を示す時ですよ!強く、強く!」
「無駄だって言ってんだろうが!この野郎!」
クライスに向かって拳を振り上げるリンツ。
庇おうと、クライスとリンツの間に割って入るロッシェ。
その時。
「うぐっ!うぐわああああぁぁぁぁ!」
突如苦しみ出すリンツ。
頭を抱えてしゃがみ、悶える。
ロッシェは防御体制のまま。
その後ろから様子を伺うクライス。
他の者は、状況をじっと見守る。
「頑張れ!ハイセムさん!」
再び声を掛けるクライス。
すると、少し反応が変わった。
か細い声で。
こう言った。
「私ごと、倒して下さい……早く!」
「何言ってんの!そんなの許さないわよ!」
叫ぶハリー。
尚もリンツは続ける。
「こいつは……私が……押さえます……から……早く……!」
「駄目!駄目よ!」
ハリーは叫び続ける。
殺すなんて最悪な結末、絶対嫌!
でもこのままだと、じいやは……。
どうしたら良いの?
どうする事も出来ないの?
縋る様な目でトクシーを見るハリー。
その視線はとても鋭く、トクシーの胸に突き刺さる。
無理を承知で、トクシーはクライスにお願いする。
「何とかならないでしょうか……お願い致します……。」
トクシーの懇願を受け、リンツに問うクライス。
「あなたが望むなら!開放しましょう!選択を!」
その答えは。
「フハ、フハハハ!」
「じいや……?」
唖然とするハリー。
「再び自由を奪ってやったぞ!もう離さん!」
身体の実権を奪い返したと誇示する魔物。
しかし、クライスは言った。
「承知!メイ、頼んだ!」
「任せて!えいっ!」
ドスッ!
メイがリンツに突進。
ベッドの上へ突き飛ばした。
ボスッと、尻からシーツの上に落ちる。
ニヤリと笑うリンツ。
「丁度良いわ!このままトンズラさせて貰おう!こいつは人質だ!」
そう言うと、体が光り出す。
次の瞬間。
「さらばだ!」
シュンッ!と。
消えた。
クライスの発言にハテナマークのハリー。
わざわざ父を、皇帝の元へ行かせる理由が思い付かない。
それにクライスが答える。
「恐らく、もう嫌気が差したんじゃないかな?」
「嫌気?」
「そう。君は王族と婚約させられた。だよね?」
「お父様が是非にと言うから……。」
「本心だと思うかい?」
「え?」
クライスの問い掛けに詰まるハリー。
「大事な娘を政争の具にしようなんて、子供思いの親ならまず考えない。」
チラッとラヴィの方を見たが。
その発言時、クライスは顔を確認出来なかった。
なるべく避けて来た言い回しだが、事態が急を要するので仕方無い。
話を続ける。
「ずっと従ってきたが、娘の将来まで利用しようとする姿勢が親として許せなかったのだろう。その心を先読みして、向こうが仕掛けた。」
裏切られる前に、処分。
そう考えたのだろう。
多少急ぎ過ぎだが。
「君が逃げ出したのも想定内と言うのは、そう言う事さ。君が自ら逃げ出さなくても、破談させるつもりがあった。」
「そ、そんな……。」
崩れ落ちるハリー。
共に座り、抱きしめる力を緩めて包み込む様にするラヴィ。
その目にはうっすらと涙。
それは同情からか。
同じ境遇への共感からか。
クライスは口調を強めて、リンツに言う。
「さあ、返して貰おうか、優しき紳士を。」
「かっかっかっ!」
奇妙な笑い声を上げるリンツ。
「返す?どうやって?無理だね!」
「ほう。言い切るねえ。」
自信たっぷりのリンツに、冷ややかなクライス。
「簡単さ。こいつがそれを望んじゃあいない。」
右手親指で自分の胸を指すリンツ。
「こいつはなあ、自分から身を捧げたんだ。望んだ結果なんだよ!」
偉そうに御託を並べやがって。
てめえの思い通りに行くと思うなよ!
リンツに憑り付く魔物はそう思っていた。
しかし。
クライスは促す。
「今こそ、その本心を示す時ですよ!強く、強く!」
「無駄だって言ってんだろうが!この野郎!」
クライスに向かって拳を振り上げるリンツ。
庇おうと、クライスとリンツの間に割って入るロッシェ。
その時。
「うぐっ!うぐわああああぁぁぁぁ!」
突如苦しみ出すリンツ。
頭を抱えてしゃがみ、悶える。
ロッシェは防御体制のまま。
その後ろから様子を伺うクライス。
他の者は、状況をじっと見守る。
「頑張れ!ハイセムさん!」
再び声を掛けるクライス。
すると、少し反応が変わった。
か細い声で。
こう言った。
「私ごと、倒して下さい……早く!」
「何言ってんの!そんなの許さないわよ!」
叫ぶハリー。
尚もリンツは続ける。
「こいつは……私が……押さえます……から……早く……!」
「駄目!駄目よ!」
ハリーは叫び続ける。
殺すなんて最悪な結末、絶対嫌!
でもこのままだと、じいやは……。
どうしたら良いの?
どうする事も出来ないの?
縋る様な目でトクシーを見るハリー。
その視線はとても鋭く、トクシーの胸に突き刺さる。
無理を承知で、トクシーはクライスにお願いする。
「何とかならないでしょうか……お願い致します……。」
トクシーの懇願を受け、リンツに問うクライス。
「あなたが望むなら!開放しましょう!選択を!」
その答えは。
「フハ、フハハハ!」
「じいや……?」
唖然とするハリー。
「再び自由を奪ってやったぞ!もう離さん!」
身体の実権を奪い返したと誇示する魔物。
しかし、クライスは言った。
「承知!メイ、頼んだ!」
「任せて!えいっ!」
ドスッ!
メイがリンツに突進。
ベッドの上へ突き飛ばした。
ボスッと、尻からシーツの上に落ちる。
ニヤリと笑うリンツ。
「丁度良いわ!このままトンズラさせて貰おう!こいつは人質だ!」
そう言うと、体が光り出す。
次の瞬間。
「さらばだ!」
シュンッ!と。
消えた。
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