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第130話 つかの間の休みに

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自称、神。
その正体は。
普段は白髪の少年、素は白蛇。
少年姿の時は、蛇の時の威厳を保つ為に『神の使い』と名乗っている。
偉そうで冗長的な性格だが。
無邪気な面も有り、そこが子供と気が合う点だった。
少年姿で町中へ現れては、町の子供達と遊ぶ。
それが、退屈を紛らわす手段。
実は、『町を守護する』と言うよりは『ここのパワースポットを守護する』者。
そう託されたからだ。
誰に?
何時か、語る時も来よう。



休憩所に戻ると、ラヴィはクライスへ詰め寄る。

「さっきの!説明!宜しく!」

鬼気迫る迫力。
でも顔を背けるだけ。
さっきからクライスは、或る一言だけを繰り返している。

「何時か時が来れば、全て話すよ。」

本当はそんな発言を無視して、脅してでも聞き出したいラヴィだったが。
余りに悲しそうな顔をするので、それ以上踏み込めない。
まだクライスとの間に壁があるのだろうか?
何故そんなにかたくななのか?
アンの方を向くと、目を伏せるだけ。
そうか、アンも聞きたいのを我慢してるのか。
納得はしないが。
本人が話したがらない以上、詳しくは聞けないな。
ラヴィは、一旦この件から手を引いた。



「なあ、メイ。」

「なあに?珍しいわね、あんたから寄って来るなんて。」

休憩所から少し離れた木陰でくつろいでいるメイの隣に座って、ロッシェがボソッと話し掛ける。

「何処まで知ってるんだ?」

「何の事?」

とぼけるメイ。
ロッシェは続ける。

「『全部』と言ったら言い過ぎか?」

「そうね、言い過ぎね。あたいでも知らない事はあるわ。」

「例えば?」

「暗殺の黒幕とか。」

「他には?」

「そうやって喋らせて、思い当たる事を消去法で絞るつもりでしょ?何処でそんな知恵を付けたんだか。」

「そ、そんな事ねえよ。ただ……。」

「ただ?」

「クライスの姿が、見えなくなる事があるんだ。」

「何、その変な例え。」

「見かけじゃねえよ。あいつの心の中に、別の何かが居る様な気がしてならないんだ。」

「ふうん。」

「疑ってる訳じゃ無い。信じてるよ、あいつを。それでも時々不安になるんだ。」

「人間って、ややこしいのね。」

「そんなもんさ。『信頼と嫌疑は同義である』だっけか?昔聞いたんだ、ある人から。」

「大丈夫?」

「何だ急に?俺に気を使うなんて。」

「そりゃそうよ。哲学的な事を言い出すんだもの。」

「受け売りだっつうの。全く、そうやって話をはぐらかす……。」

「こっちの都合よ。悪いわね。」

そう言って、メイは起き上がってトコトコ歩き出す。
ロッシェは座ったまま。
メイの姿を見送った。
口止めされてるのか。
魔法使いに。
こりゃあ何としても、直接話を付けたいものだ。
ただの好奇心では無い。
真理に近付きたい。
ただそれだけ。
『自分にも真実を知る権利はある』と、ロッシェは考えている。
もし可能なら。
ただ。
メイが口を堅くする理由が、魔法使いを守る為では無く俺達を守る為だったら……。
そう考えると、心が後ろ向きになってしまう。
ええい、止めた止めた!
こんなの、俺の性分じゃ無い。
大体、クライスが話してくれれば楽になれるのに。
どうしてそんな頑なに……。
そこで思い付いたのが、アンの言っていた《黒歴史》。
錬金術師には、何か因縁めいたのが有るとか無いとか。
それでアンは、あの蛇野郎に話し掛けようと……。
おっと、また考えちまった。
最近は、こんな事が多いな。
今までの旅だと、何にも考えずに好き勝手やってたのに。
騎士道を意識し出してからだろうか。
『考えるのも修行』と先生に言われて、調子が狂っちゃったか?
まあ良い。
旅に同行していれば、分かって来るだろう。
そう考えている内に、ロッシェは木陰で居眠りを始めた。



「よーしよし、良い子ね。」

メークに水を掛けながら、優しくブラッシングしてあげるラヴィ。
本当の弟の様に感じていた。
それだけ、宮殿に残して来た本物の弟妹が恋しいのかも知れない。
今頃、どうしてるかなあ。
一応親書をお願いする手紙に、弟妹宛ての手紙も付けたんだけど。
返事を書く暇が無かったのかなあ。
それとも極秘事項な為に、私の事が伏せられてるのかも。
一目、会いたいなあ。
そう思うと、王宮のある方角を見やるラヴィ。
その姿を見かけて、セレナの胸は苦しくなる。
ずっと傍に居たので、考えている事は大体分かる。
空を見やる方角で、誰に対して思いを馳せているのかも。
世界統一と言う、野望の為とは言え。
年端の行かない娘が長旅をするのは、とても辛い事。
少しでも、その思いを分かち合えたら……。
セレナのラヴィを見る目線には、熱い物があった。



「デュレイよ。」

「何だ、ビンセンス?」

休憩所の隣にあるベンチで。
ヘルメシア側の騎士が語り合う。

「お前の知っている事、何処まで進んだら話せる様に?」

「そうさなあ……。」

考えるデュレイ。
ゴクリとその言葉を待つトクシー。
『うん』と頷いてデュレイは言った。

「ここでなら、陸の孤島だし。あの変な者も居るから少しは……。」

「本当か!」

デュレイの両肩をガシッと掴むトクシー。
その手には力が入っていた。
余程聞きたかったらしい。
それは、旅の仲間をある程度安心させたいと思うが余りの事。

「す、少しだけな。本当に少し。」

「ありがとう!皆を呼んで来る!」

そう言って、休憩所へ駆け出すトクシー。
後姿を見て、何処まで話そうか用意して待つ事にしたデュレイだった。



すぐにみんな、デュレイの元へ集合した。
その口から語られる事は?
少しは、見えない黒幕の背中でも掴める様になるのだろうか?
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