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第118話 不本意にも

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「う、うーん……。」

目を覚ますラヴィ。
まずは状況確認。
自分はうつ伏せに寝ている。
周りに気配は……取り敢えず無し。
恐る恐る起き上がってみる。
すると横に、自分を突き飛ばした筈のソウヤが。
同じ様に、寝そべっている。
すぐに気が付き、サッと起き上がるソウヤ。
どうやらここは初めてでは無いらしい。
すかさず下を見るソウヤ。
そして『あーーーーーっ!』と大声を上げる。

「まただ!また、無くなってる!」

何故大声を上げたのか気になり、突き飛ばした事を後回しにして尋ねるラヴィ。

「ちょっと、何騒いでんのよ。」

『フフフ』と不気味に笑うソウヤ。

「お前も足元を見るが良い。気付かないのか?」

ん?
足元って言ったって……。

「何が?」

「お前、ほんっとに鈍感だな!無いだろ!影が!」

「え!」

再び足元を見る。
確かに。
無い!
影が無い!
上から光は差しているのに!

「どう言う事よ!あんた何か知ってるんでしょ!」

「俺が言わなくても、直に来るだろうよ。」

顎をくいっと上げて、『向こうを見ろ』と言わんばかりのソウヤ。
遠くから何か近付いて来る?
何だろう……。
……。
あ!

「またお前か。」

ソウヤが言う通り、本体から離れた影がやって来た。
今度はラヴィの影も一緒。

「え?え!」

ソウヤの身体と影を交互に見るラヴィ。
全く同じシルエット。
間違い無い、影だ。
となると、隣に立っているのは……。

「おい、どうせあいつの所に連れて来んだろ?さっさとしろよ。」

淡々と話すソウヤに、頭がこんがらがりながらも説明を求めるラヴィ。

「とにかく!説明して!でないと私は行かないわよ!」

「ふん。こいつ等が許してくれたらな。」

影を見やるソウヤ。
コクリと頷く。
許可は出た様だ。

「喋っても良い、とさ。なら言ってやる。お前は入り込んだのさ。何者かが作り出した空間にな。」

「く、空間?」

びっくりするラヴィ。
確かに、倒れ込む前に変な境界に触れた時、姿が消えて行くのを見た。
でも、景色は向こう側も見えていた。

「……異空間?」

ラヴィが絞り出した単語。
これしか思い付かない。

「だろうな。俺は2回目だけどな。ひでえもんだぜ。」

ソウヤが答える。
『もう良いだろ』と言うかの様に、影が歩き出す。

「付いて行くしか無いぜ。またあいつの顔を見る事になるなんて、全く……。」

「あいつ?」

ソウヤはここで何者かに会った。
それでこんな事をした。
何と無くストーリーが読めて来る。

「頭がタヌキの人間さ。気味が悪いったらありゃしない。」

ホトホト困った顔で話すソウヤ。
急な滑舌の良さに、少し不思議に思うラヴィ。

「どうしてそんなにペラペラ喋ってくれるの?」

「決まってるだろう?『話しても良い』ってんだ。ここから出す気は無いんだろう、俺もお前も。」

「えー、そんなの困るー!まだ途中だってのに……。」

「俺だってこんなとこ、来たくなかったんだ。あいつが突き飛ばしたから……。」

そう言って歯ぎしりするソウヤ。
そうか、クライスか。
『考えが有る』って、この事ね?
こいつを使って何とかしようと……。
で、肝心のクライスは?
辺りを見回すが、他に人の姿は無い。

「あいつか?あいつなら、笑って手を振ってたぜ。ふざけやがって。」

ソウヤの返事に、困惑するラヴィ。
私だけで何とかしろって?
冗談じゃないわ!
どうしろってのよ!
プンスカ怒り出すラヴィ。
ソウヤが嫌味ったらしく言う。

「あんたと2人だけなら、楽しかろうがな。」

「きもっ!近寄らないで!きもっ!」

『しっ!しっ!』と手でソウヤを遠ざけようとするラヴィ。
そうしている内に、歩いて行く影を見失いそうになる。

「冗談はそこまでだ。仕方無い、あれに付いてくぞ。」

ソウヤが指差すと、影は随分遠くまで進んでいた。

「ま、待ってよー。」

影を追い駆けるラヴィ。
急な環境の変化なのに、随分胆が据わった奴だな。
そう思いながら、ソウヤも走り出す。
敵同士で有りながら、半ば共闘の様に空間を進んで行く2人だった。
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