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第30話 妖精に嘘は付けない

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アリュースが話し始める前。
エミルは首にぶら下げている金の鈴を握り締め、アリュースをジッと見つめる。
すると、鈴が一瞬虹色に光った。
それを確認すると、エミルはアリュースの声に耳を澄ませた。



「作戦は、《もっと仲良くなろう》と言う物なんだ。」

反応無し。

「昔、子供の頃。小人族の住む場所に迷い込んだ事が有ってね。」

反応無し。

「その時仲良くなったんだ。ホビイと。」

反応無し。

「それ以来、隠れて遊びに来る様になったんだ。」

反応無し。

「それから決めたんだ。この地域の人達とも仲良くなりたいって。その為の作戦なんだ。」

ジリン。
鈴が濁った音を出した。

「軍を率いて攻め込んだ振りをして、ここにずっと居座れば。セントリアはヘルメシア帝国の物になる。平和的に解決出来ると言う訳さ。」



チリーーーン!



テント内に、鈴の澄み渡った音が響く。
エミルはニヤッとして言う。

「嘘付き。駄目だよ、『正直に話す』って言ったのに。」

「い、いや。今の所、全て事実だが……。」

チリーーーン!
またしても鈴の音。

「また嘘かい?これじゃあ協力出来ないなあ。」

エミルは淡々とした口調。
これもクライスの真似。
人心掌握はクライスの十八番。
その内、相手の心を揺さぶるコツを前に教えて貰っていたのだ。
万が一捕まった時、逃げ易い様に。
それが役に立った。



もう1つ、秘策が有った。
それは、首に下げている金の鈴。
ラヴィ達はただのアクセサリーとしか見ていないが、実は珍品の1つ。
名を【真実の鈴】と言う。
昔クライスとひと悶着あった時、仲直りの印に贈られた。
クライスが生み出した金の鈴に、エフィリアが力を込めた代物。
これを握り締め、特定の人物の像を心に浮かべる。
すると。
指定した人物が嘘を付いた時、高らかに鈴の音が響くのだ。
簡単に言うと《嘘発見器》である。
虹色に光ったのは、ターゲットロックオンの印。
今はアリュースの言葉に反応する様になっている。
だから、嘘を付いていると断言出来るのだ。



そうとは知らず、焦るアリュース。
助け舟を出そうとするホビイ。
それをエミルは制止する。

「駄目!本人がちゃんと理由を言わないと!どうして嘘付くの?」

「いや、その……。」

「ここの人達に関係するけど、作戦の内容は違うよね?セントリアを奪う為じゃ無い。そうでしょ?」

「あ、あの……。」

「そうしないといけない理由が有るんでしょ?《アリュース自身》に。」

核心に近付く質問を、どんどん繰り出すエミル。
完全にノリノリ。
その勢いに押され、言葉を無くして行くアリュース。
沈黙して行くその姿を見かねて、ホビイは言う。

「もう全部話した方が良いんじゃねえか?きちんとさ。」

「そうだな、この状況では致し方が無い……。」

誤魔化しのかない相手を前に、とうとうアリュースは降参した。
改めて気を引き締め、低いトーンで語り出す。

「君の言う通り。セントリア奪取が目的じゃ無い。これは兄貴の発案なんだ。」

「兄貴って?」



「現ヘルメシア帝国皇帝、【シルベスタ3世】だよ。」



「こ、皇帝!」

鈴は鳴らない。
真実だ。

「俺の本当の名は、【アリューセント・G・シルベスタ】と言う。兄貴とは異母兄弟なんだ。」

「いぼ……?」

「『父親が同じで母親が違う』って事。」

「へえ。」

「色々有ってね。俺も兄貴も命を狙われている。これは兄貴が俺を国外へ逃がそうと言う、苦肉の策なんだ。」

「何で狙われてるの?」

「君もうっすらと気付いてるんじゃないか?ヘルメシアの中も、仲良しこよしじゃ無いんだ。」

「ふうん。そうなのかあ。」

ラヴィの一件を知っているので、何と無くは納得した。
王族って、大変なんだなあ。

「どちらかが生き残れば、一族の血が絶える事は無いからね。」

「そんなに大事なの?」

「ああ、民衆の希望の様な物だからな。」

なるほど、ラヴィに似ているな。
民思いな所が。
そうエミルは感じた。
でもじゃあ、あちこちで悪さをしているのは誰だろう?
アリュースには関係無さそうだけど。
一応聞いてみるか。

「じゃあ何で、メインダリーの周りで悪さしてる人達が居るの?」

その言葉を聞いて、アリュースは激しく反応。

「それは本当かい!」

「う、うん。あちこちの町で混乱させてるんだ。国の中が騒がしいってのは、そう言う事だよ。」

逆に圧倒されるエミル。
エミルの言葉で事態を確かめた、アリュースとホビイ。

「作戦と言うのは、正にそれなんだ。その為にホビイ達に協力して貰ってるんだ。」

意外な答えが返って来た。
どうやら、ラヴィの疑念の答えに近付いた様だ。
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