6 / 10
6、君は君で、私は私
しおりを挟む
10分…程経っただろうか。
お互い何も話さず、ただ前を向いて座ったままだったところ、はるおが地面の先端に立ち上がった。もう足を踏み出せば落ちる。私も立って隣に並んだ。
「手、繋ぐ?」はるおが聞く。「そんな心中みたいなの嫌だよ」私は少し笑う。でも2人揃って落ちたら、普通に心中ぽいか。
違うんだけどね、私たちは別に愛し合ってないし、お互いそれぞれの気持ちで死ぬ訳で同志みたいなものというか。まぁ、誰に弁解する必要もないか。
カウントダウンする?それとももう「せーの」って言えばジャンプ、できる?私はいつもの思考ペースでいたから、もしも隣のはるおがぴょんと飛び降りたら、何も考えも覚悟もなく流れでぴょんとするだろう。
「ねぇ、はるお」私が口を開くと、前を向いたまま「なに」と答える。「私先に飛び降りようか?その後ではるおは飛び降りてもやっぱやめてもどっちでもいいよ。それとも一緒にカウントダウンする?」返事がなかった。
今度は1分、くらいの短さだったと思う。はるおは後ずさり、フェンスに背中をつけて座り込んだ。
私は立ったままでいた。そして座ったはるおは「ごめん」と言った。
何のごめんだろう。私は何も言わずにまだ先端に立ったまま前を向いている。
「奈々子も座って」と言われて腹が立った。「なんではるおに止められなきゃいけないわけ」と言い終わる前に手を強く引かれ、はるおの横に引き戻された。
「奈々子、死なないでよ」
何それ。ねぇ、死のうとしてる人間は周りが何を言ったってもう響かないんだから、私だってはるおが死なずに救われるといいなとは思っているよ、でもどうするかは本人が決める事だから周りは無力なんだよ、だから私の死ぬ勇気を邪魔しないでよ、死なないでってあんたのエゴを押し付けてこないでよ、
怒りなのか悲しさなのか悔しさなのか、ぐちゃぐちゃの感情が込み上げてきて私は泣いた。はるおは手は握ったままで、泣く私の隣でうなだれていた。
その後は、何かしゃべったのか、どんな気持ちだったのか、2人してフェンスをまたいで戻るというカッコ悪い絵ずらも思い出せないくらい、記憶がない。ただ私はそのまま大学に行って、ゼミの発表をしたはずだ。
そしてはるおとはその後1回だけ会った。いつものように、はるおの家で。
酔ったはるおは正気なのかふざけているのか、くだらない話をした後「この前はごめんね」と言った。
自殺に誘ってごめんね?それなのに死ぬ勇気が出なくてごめんね?何のごめんかはやっぱりわからなかったけれど、どれであっても腑に落ちない。
はるおとそこまで干渉しあっていないのに、これ以上相手の気持ちを考えたり想像したり気を遣ったりするのをめんどくさいと思った。そのまま私もはるおも連絡をしないままフェイドアウトしたのだ。
お互い何も話さず、ただ前を向いて座ったままだったところ、はるおが地面の先端に立ち上がった。もう足を踏み出せば落ちる。私も立って隣に並んだ。
「手、繋ぐ?」はるおが聞く。「そんな心中みたいなの嫌だよ」私は少し笑う。でも2人揃って落ちたら、普通に心中ぽいか。
違うんだけどね、私たちは別に愛し合ってないし、お互いそれぞれの気持ちで死ぬ訳で同志みたいなものというか。まぁ、誰に弁解する必要もないか。
カウントダウンする?それとももう「せーの」って言えばジャンプ、できる?私はいつもの思考ペースでいたから、もしも隣のはるおがぴょんと飛び降りたら、何も考えも覚悟もなく流れでぴょんとするだろう。
「ねぇ、はるお」私が口を開くと、前を向いたまま「なに」と答える。「私先に飛び降りようか?その後ではるおは飛び降りてもやっぱやめてもどっちでもいいよ。それとも一緒にカウントダウンする?」返事がなかった。
今度は1分、くらいの短さだったと思う。はるおは後ずさり、フェンスに背中をつけて座り込んだ。
私は立ったままでいた。そして座ったはるおは「ごめん」と言った。
何のごめんだろう。私は何も言わずにまだ先端に立ったまま前を向いている。
「奈々子も座って」と言われて腹が立った。「なんではるおに止められなきゃいけないわけ」と言い終わる前に手を強く引かれ、はるおの横に引き戻された。
「奈々子、死なないでよ」
何それ。ねぇ、死のうとしてる人間は周りが何を言ったってもう響かないんだから、私だってはるおが死なずに救われるといいなとは思っているよ、でもどうするかは本人が決める事だから周りは無力なんだよ、だから私の死ぬ勇気を邪魔しないでよ、死なないでってあんたのエゴを押し付けてこないでよ、
怒りなのか悲しさなのか悔しさなのか、ぐちゃぐちゃの感情が込み上げてきて私は泣いた。はるおは手は握ったままで、泣く私の隣でうなだれていた。
その後は、何かしゃべったのか、どんな気持ちだったのか、2人してフェンスをまたいで戻るというカッコ悪い絵ずらも思い出せないくらい、記憶がない。ただ私はそのまま大学に行って、ゼミの発表をしたはずだ。
そしてはるおとはその後1回だけ会った。いつものように、はるおの家で。
酔ったはるおは正気なのかふざけているのか、くだらない話をした後「この前はごめんね」と言った。
自殺に誘ってごめんね?それなのに死ぬ勇気が出なくてごめんね?何のごめんかはやっぱりわからなかったけれど、どれであっても腑に落ちない。
はるおとそこまで干渉しあっていないのに、これ以上相手の気持ちを考えたり想像したり気を遣ったりするのをめんどくさいと思った。そのまま私もはるおも連絡をしないままフェイドアウトしたのだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる