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1、はるおに会いにいく
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今日こそ、はるおに会えるかな。
「週末の会社の飲み会帰りにまだ飲み足りなくて、以前友人とたまたま入ったバーに今日は1人でふらっと寄ってみた」の体でいくことにする。わざわざ会いに来たとバレるのはちょっと恥ずかしい。
だから仕事帰りOL風な、でもちゃんとオシャレを意識した服を選んできた。もしもはるおに会えたら「キレイになったね」と思ってもらいたくて、程よく身体のラインが出るワンピース。
そのバーは繁華街にあって、朝の5時まで営業している。2軒目、3軒目の利用にもってこいな上、お酒の種類が豊富で料理も美味しい、程よくにぎやかで1人でもグループでも女子会にも居心地の良い人気店だ。だから満席で入れないことも多いらしい。
今日は金曜日、予約もしていない。1人と言えど、席がないかもしれない。
意を決してきたけれど、もしも断られたらそれはそういう運命だったと思える。また3回目に挑戦するのか、それとも私は何をやっているんだと冷静になるのか、どんな気持ちで帰る事になるのかは想像つかないけれど、不可抗力。いっそそうなってくれてもいいのかもしれない。
「1名様ですね。いらっしゃいませ。カウンターへどうぞ。」
案内されてしまった。
入口から店内は全て見渡せるため、席はほぼ埋まっていること、従業員が5人いること、その中にはるおはいないこと、がわかる。
案内されたのはカウンターで唯一空いている左から3番目だった。椅子に座って時計を見る。本当は店に入る前から何度も時間は確認していたから、今が22時を過ぎたところだとわかっていた。何となく、ふらっと寄った感を出すためだったのかもしれない。手持ち無沙汰でもあった。スマホを机の上に出してからカバンを足元のかごに入れ、ぼんやりメニューを眺めてみた。
お酒は好きだけれど、全然詳しくない。
2週間前に真希ちゃんとこのお店に来た時も、何を頼もうか迷ったあげく2人そろってシャンディガフを注文した。
若い頃、居酒屋に行っては「とりあえずビール」だった私たちは、ある時の合コンで男の人が当たり前のように女の子はカクテルがいいかな?と聞いてきた時、何を頼めばいいかわからなくて何故かよくわからないままシャンディガフを注文した。別に「いや、私たちとりあえずビール派です」っていつもなら言えるだろうに、なぜだろう、すごくオシャレな男の人ですごくオシャレなお店だったのだろうか。
それ以来、私と真希ちゃんの中では「何となく今は生中じゃないな」というシチュエーションの時はシャンディガフを頼むことになっている。
真希ちゃんに会ったのは1年振りだった。しかも、夜に、街に繰り出してお酒を飲みに行くなんて、きっと10年くらいしていなかったと思う。真希ちゃんは私より少し結婚も出産も早かったから、タイミング的に常に2人のどちらかが妊娠中か赤ちゃん抱えてるかバタバタ育児をしているかで10年が経ってしまった。子連れランチも最初こそしていたけれど、お互い仕事に復帰してからは忙しくて中々会えずにいたのだ。
だからすごく久しぶりに、夜飲みに行かない?と連絡した時の「行きたいね!行っちゃおうよ!」の返事が嬉しかった。同時に、はるおのお店に1人で行く勇気がないために真希ちゃんを利用しているようで心苦しくて、すぐに事情を説明した。
「私が大学生くらいの時に少し遊んでた、はるおって覚えてる?あの人が今バーをやってるみたいで、たまたま見つけたら行きたくなってさ。それで真希ちゃんを誘ってみました。ついでっぽくてごめん笑」
「ついでかい!!笑」
「でも子育てが、本当に少しだけどやっと落ち着いてきて、夜飲みに行きたくなってきたんだよー。今後の我々の人生について語りまくりまクリスティ。」
「はるおは何となくしか覚えてないなー。でもそれは全然いいよ!はるおくんのお店で飲もう!そして語りまくりまクリスティ!」
小学校から仲良しの真希ちゃんと、2人にしかわからないネタでメールを返して、日時を決めた。
「週末の会社の飲み会帰りにまだ飲み足りなくて、以前友人とたまたま入ったバーに今日は1人でふらっと寄ってみた」の体でいくことにする。わざわざ会いに来たとバレるのはちょっと恥ずかしい。
だから仕事帰りOL風な、でもちゃんとオシャレを意識した服を選んできた。もしもはるおに会えたら「キレイになったね」と思ってもらいたくて、程よく身体のラインが出るワンピース。
そのバーは繁華街にあって、朝の5時まで営業している。2軒目、3軒目の利用にもってこいな上、お酒の種類が豊富で料理も美味しい、程よくにぎやかで1人でもグループでも女子会にも居心地の良い人気店だ。だから満席で入れないことも多いらしい。
今日は金曜日、予約もしていない。1人と言えど、席がないかもしれない。
意を決してきたけれど、もしも断られたらそれはそういう運命だったと思える。また3回目に挑戦するのか、それとも私は何をやっているんだと冷静になるのか、どんな気持ちで帰る事になるのかは想像つかないけれど、不可抗力。いっそそうなってくれてもいいのかもしれない。
「1名様ですね。いらっしゃいませ。カウンターへどうぞ。」
案内されてしまった。
入口から店内は全て見渡せるため、席はほぼ埋まっていること、従業員が5人いること、その中にはるおはいないこと、がわかる。
案内されたのはカウンターで唯一空いている左から3番目だった。椅子に座って時計を見る。本当は店に入る前から何度も時間は確認していたから、今が22時を過ぎたところだとわかっていた。何となく、ふらっと寄った感を出すためだったのかもしれない。手持ち無沙汰でもあった。スマホを机の上に出してからカバンを足元のかごに入れ、ぼんやりメニューを眺めてみた。
お酒は好きだけれど、全然詳しくない。
2週間前に真希ちゃんとこのお店に来た時も、何を頼もうか迷ったあげく2人そろってシャンディガフを注文した。
若い頃、居酒屋に行っては「とりあえずビール」だった私たちは、ある時の合コンで男の人が当たり前のように女の子はカクテルがいいかな?と聞いてきた時、何を頼めばいいかわからなくて何故かよくわからないままシャンディガフを注文した。別に「いや、私たちとりあえずビール派です」っていつもなら言えるだろうに、なぜだろう、すごくオシャレな男の人ですごくオシャレなお店だったのだろうか。
それ以来、私と真希ちゃんの中では「何となく今は生中じゃないな」というシチュエーションの時はシャンディガフを頼むことになっている。
真希ちゃんに会ったのは1年振りだった。しかも、夜に、街に繰り出してお酒を飲みに行くなんて、きっと10年くらいしていなかったと思う。真希ちゃんは私より少し結婚も出産も早かったから、タイミング的に常に2人のどちらかが妊娠中か赤ちゃん抱えてるかバタバタ育児をしているかで10年が経ってしまった。子連れランチも最初こそしていたけれど、お互い仕事に復帰してからは忙しくて中々会えずにいたのだ。
だからすごく久しぶりに、夜飲みに行かない?と連絡した時の「行きたいね!行っちゃおうよ!」の返事が嬉しかった。同時に、はるおのお店に1人で行く勇気がないために真希ちゃんを利用しているようで心苦しくて、すぐに事情を説明した。
「私が大学生くらいの時に少し遊んでた、はるおって覚えてる?あの人が今バーをやってるみたいで、たまたま見つけたら行きたくなってさ。それで真希ちゃんを誘ってみました。ついでっぽくてごめん笑」
「ついでかい!!笑」
「でも子育てが、本当に少しだけどやっと落ち着いてきて、夜飲みに行きたくなってきたんだよー。今後の我々の人生について語りまくりまクリスティ。」
「はるおは何となくしか覚えてないなー。でもそれは全然いいよ!はるおくんのお店で飲もう!そして語りまくりまクリスティ!」
小学校から仲良しの真希ちゃんと、2人にしかわからないネタでメールを返して、日時を決めた。
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