上 下
1 / 1

あなた好みに着飾りたい

しおりを挟む
あなたが好きな服を、あなたが脱がしやすい服を、
あなたが似合うと言ってくれた色を、
あなたが好む私の外見に近づくように。
ただそれだけで服を選ぶ。
自分の好きなデザインも柄も、一切見ないの。
周りの人に似合ってないと言われても趣向が変わったと言われても気にしないの。

あなたは私をきれいなお姉さんと言った。
だからこの大人っぽいワンピースにヒールを合わせてみたい。
あなたは私をかわいい人だと言った。
だからこのフレアのスカートに編み込みの髪型をしようと思う。

全部、あなたに良く思われるために選んだ服。
なのにそんなにたくさん選んだ数だけあなたに会える夜はなかった。
夏が終わる。
あなたのために着てもらえなかった服達がクローゼットに並ぶ。
全然好みじゃない花柄、パステルグリーン、黒のレース。

肌寒くなってきたね。
今度は秋服を買いに行かなくちゃ。あなたの好きなテイストの。
長袖のブラウスを、黒いカーディガンを、裏地のついた厚手のスカートを、
その先の素肌を触ってもらうために、纏うの。

着飾った私を見せて、裸の私を触ってもらうように
私の外面を見て、心の弱さに触れるかのように、あなたは言う。
でもそれは、とても僅かに、かする程度に。
何もかも深くは関われない。
私もそれを望んでいる。
2人でいるときだけ、楽しく過ごせればいい。
正しくない関係だ。あなたが好きだ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

不器用な皇太子は皇妃を溺愛しているが気づいて貰えない

音爽(ネソウ)
恋愛
他国からやって来た妃は沈痛な面持ちで皇太子に目通りする。 人質として娶られることを知っていたからだ。ところが実際は彼女に一目惚れをしていた皇太子である。 だが、彼は少し変わっていて素直に気持ちを伝えられずにいた。 「あぁ、なんて愛らしいんだ!でも言えない……」 強面で知られる皇太子は笑顔を作ろうと頑張るのだが……

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

塩対応彼氏

詩織
恋愛
私から告白して付き合って1年。 彼はいつも寡黙、デートはいつも後ろからついていく。本当に恋人なんだろうか?

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

その伯爵令嬢は、冷酷非道の皇帝陛下に叶わぬ恋をした

柴野
恋愛
それは一目惚れだった。 冷酷非道の血まみれ皇帝と呼ばれる男に、恋をしたのだ。 伯爵令嬢マリア・フォークロスは、娘を高値で売り付けたい父に皇妃になれと言われ、育てられてきた。 とはいえ簡単には妃どころか婚約者候補にすらなれるはずもなく、皇帝と近くで言葉を交わす機会さえろくに得られない。しかしながら、とあるパーティーで遠目から眺めた際――どうしようもなく好きになってしまったのだ。 皇帝陛下の、最愛になりたい。 皇帝に冷たい視線を向けられつつも、マリアは恋心のままに文を綴る。 自分の恋が叶わぬものだという現実に見て見ぬふりをして。 ※本作は『社交界のコソ泥と呼ばれる似非令嬢に課されたミッションは、皇帝陛下の初恋泥棒です(https://www.alphapolis.co.jp/novel/6211648/759863814)』の前日談ですが、単体でもお楽しみいただけるはずです。 ※主人公は報われません。 ※悲恋バッドエンドです。

婚約者

詩織
恋愛
婚約して1ヶ月、彼は行方不明になった。

王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。

みゅー
恋愛
 王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。  いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。  聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。  王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。  ちょっと切ないお話です。

処理中です...