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48祝福と束縛➀ ※
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熱い。
顔が、胸が、身体の芯が燃え出しそうになる。別に運動したわけではなくて、お酒を多く身に入れたわけでもない。祭典の場がやけに盛り上がった以外で、ルイが催事で目立ったことはない。常に彼は弁えていた。
世間知らずの子どもみたいに、はしゃいでいる若者とは違う。王族の目もあることだし、前や後ろへ気配りするだけの注意をした。決して、レオポルドの下手な誘いに乗っかるなんて、ありえないことだ。儀礼じゃあるまいし。ましてや自分が王子の情に絆されるなんてとんでもない。
「気持ちいいか?ルイ」
「い……いくないぃ……!!」
「さっきまでの強がりは消えてきたな」
「ううぅ……」
そんなルイの意思は、脆くも崩れ去っていった。レオポルドに踊りに誘われてから、彼はその後もあれよあれよという間に抱き込まれた。時間は長くはいらなかった。
王子に押し倒されるのも織りこみ済みだったかといえば、微妙なところである。ルイは祭典の眩しさに目が奪われ、レオポルドの年相応の行動に心が揺れていた。「完璧」を貼り付けたような王子の像が、少しだけ改まったばかりのことだ。だからこそ、いつもより油断していた面もある。
祝いの言葉でも掛けてやるかとルイは、従者もつけずに丸腰で王子の住まいに入りこんだ。これは悪手だった。ララに一声するだけでも、状況は違っていただろう。
「素直だと思ったら、いきなり暴れだしたから驚いたぞ」
「だって!!それは……レオポルド様が」
「レオ。そう呼んで」
水と水が弾きあうような音がする。下半身がひたひたになっていることを、ルイは直視することができていない。尻穴に油を注がれて、ほじくられる体験なんて信じられるだろうか。少なくとも、ルイは現実を否定し続けたかった。夫の手を汚してしまったことや、その行為すべてが堪らないほど恥ずかしい。
待ての声、叫びに反応する人はいない。なぜなら王宮の人間は、もれなく祭典の会場にいるのだから。
「さっきまで俺のことを説教していたのに」
「あぁっ!!んぅう……」
「今じゃ俺に背中を向けて、ルイがよがっているなんて」
「いうなぁっ……あぁ!!」
信じられない、と何度も頭を抱えるレオポルド。その表情には愉悦が見られ、背徳感に震えている。弱い腕の力では、まるで王子の腰の動きは収まる気がしない。ルイは王子の寝台のうえで、なす術がなかった。
実家で揃えた羽織布が、無残にも床に捨てられている。儀礼では相手の腕にうずくまるばかりだったが、今は辺りの光景がよく見える。
王族の寝室といえば服や小道具であふれているものとルイは想像したが、実態はその逆だ。王子の自室は、ルイの手紙以外に無駄なものはいっさい置いていなかった。無駄な品を置かず、最低限の家具だけが定められた位置にある。
「はぁう、あっ……はぁ」
腕をつかまれて、のけ反りながらも相手に背を預けている。次は自分が泣きべそをかく番なのかとルイは内心笑いがこみ上げてくる。お互いが見られない体位とはいえ、あまりに情けない。儀礼での失態の二の舞はごめんだったのに。
「も……うちょっと、やさしく」
「これでも抑えてる。ルイが気持ちよさそうにしている速度で止めてるつもりだよ」
「うそそんなの、うそ」
ルイは、ぴりぴりと脳を突かれる感覚がした。快感だとは認められないが、確かに先からレオポルドの腰振りに意識がいく。どうしてかはわからない。でも尻に沈んでいく太いそれに、前より順応ができていた。
「ルイ、俺……ほしいよ」
「はぁ……っ!!ああっ」
「お前からの言葉がほしい。我慢してたぶん、ここで祝ってくれよ」
祝いの言葉が言える状況ではない。冗談じゃない。できるわけがないだろう、とルイは今叫びたかった。レオポルドの顔を見ていたら、きっと、感情的になっていたかもしれない。情けなくてまた泣いていたかも。
意地悪だ。ルイはレオポルドが意地悪な奴だと思った。自分の恥ずかしがっている姿を見て、彼は間違いなく興奮を高めている。尻穴で感じる彼の肉棒の質量が、だんだんと膨らんでいく。今にも精を放ちそうなほど性器が波打っている。
顔が、胸が、身体の芯が燃え出しそうになる。別に運動したわけではなくて、お酒を多く身に入れたわけでもない。祭典の場がやけに盛り上がった以外で、ルイが催事で目立ったことはない。常に彼は弁えていた。
世間知らずの子どもみたいに、はしゃいでいる若者とは違う。王族の目もあることだし、前や後ろへ気配りするだけの注意をした。決して、レオポルドの下手な誘いに乗っかるなんて、ありえないことだ。儀礼じゃあるまいし。ましてや自分が王子の情に絆されるなんてとんでもない。
「気持ちいいか?ルイ」
「い……いくないぃ……!!」
「さっきまでの強がりは消えてきたな」
「ううぅ……」
そんなルイの意思は、脆くも崩れ去っていった。レオポルドに踊りに誘われてから、彼はその後もあれよあれよという間に抱き込まれた。時間は長くはいらなかった。
王子に押し倒されるのも織りこみ済みだったかといえば、微妙なところである。ルイは祭典の眩しさに目が奪われ、レオポルドの年相応の行動に心が揺れていた。「完璧」を貼り付けたような王子の像が、少しだけ改まったばかりのことだ。だからこそ、いつもより油断していた面もある。
祝いの言葉でも掛けてやるかとルイは、従者もつけずに丸腰で王子の住まいに入りこんだ。これは悪手だった。ララに一声するだけでも、状況は違っていただろう。
「素直だと思ったら、いきなり暴れだしたから驚いたぞ」
「だって!!それは……レオポルド様が」
「レオ。そう呼んで」
水と水が弾きあうような音がする。下半身がひたひたになっていることを、ルイは直視することができていない。尻穴に油を注がれて、ほじくられる体験なんて信じられるだろうか。少なくとも、ルイは現実を否定し続けたかった。夫の手を汚してしまったことや、その行為すべてが堪らないほど恥ずかしい。
待ての声、叫びに反応する人はいない。なぜなら王宮の人間は、もれなく祭典の会場にいるのだから。
「さっきまで俺のことを説教していたのに」
「あぁっ!!んぅう……」
「今じゃ俺に背中を向けて、ルイがよがっているなんて」
「いうなぁっ……あぁ!!」
信じられない、と何度も頭を抱えるレオポルド。その表情には愉悦が見られ、背徳感に震えている。弱い腕の力では、まるで王子の腰の動きは収まる気がしない。ルイは王子の寝台のうえで、なす術がなかった。
実家で揃えた羽織布が、無残にも床に捨てられている。儀礼では相手の腕にうずくまるばかりだったが、今は辺りの光景がよく見える。
王族の寝室といえば服や小道具であふれているものとルイは想像したが、実態はその逆だ。王子の自室は、ルイの手紙以外に無駄なものはいっさい置いていなかった。無駄な品を置かず、最低限の家具だけが定められた位置にある。
「はぁう、あっ……はぁ」
腕をつかまれて、のけ反りながらも相手に背を預けている。次は自分が泣きべそをかく番なのかとルイは内心笑いがこみ上げてくる。お互いが見られない体位とはいえ、あまりに情けない。儀礼での失態の二の舞はごめんだったのに。
「も……うちょっと、やさしく」
「これでも抑えてる。ルイが気持ちよさそうにしている速度で止めてるつもりだよ」
「うそそんなの、うそ」
ルイは、ぴりぴりと脳を突かれる感覚がした。快感だとは認められないが、確かに先からレオポルドの腰振りに意識がいく。どうしてかはわからない。でも尻に沈んでいく太いそれに、前より順応ができていた。
「ルイ、俺……ほしいよ」
「はぁ……っ!!ああっ」
「お前からの言葉がほしい。我慢してたぶん、ここで祝ってくれよ」
祝いの言葉が言える状況ではない。冗談じゃない。できるわけがないだろう、とルイは今叫びたかった。レオポルドの顔を見ていたら、きっと、感情的になっていたかもしれない。情けなくてまた泣いていたかも。
意地悪だ。ルイはレオポルドが意地悪な奴だと思った。自分の恥ずかしがっている姿を見て、彼は間違いなく興奮を高めている。尻穴で感じる彼の肉棒の質量が、だんだんと膨らんでいく。今にも精を放ちそうなほど性器が波打っている。
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