ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~

芽吹鹿

文字の大きさ
上 下
48 / 62

48祝福と束縛➀ ※

しおりを挟む
 熱い。
 顔が、胸が、身体の芯が燃え出しそうになる。別に運動したわけではなくて、お酒を多く身に入れたわけでもない。祭典の場がやけに盛り上がった以外で、ルイが催事で目立ったことはない。常に彼は弁えていた。

 世間知らずの子どもみたいに、はしゃいでいる若者とは違う。王族の目もあることだし、前や後ろへ気配りするだけの注意をした。決して、レオポルドの下手な誘いに乗っかるなんて、ありえないことだ。儀礼じゃあるまいし。ましてや自分が王子の情に絆されるなんてとんでもない。

「気持ちいいか?ルイ」

「い……いくないぃ……!!」

「さっきまでの強がりは消えてきたな」

「ううぅ……」

 そんなルイの意思は、脆くも崩れ去っていった。レオポルドに踊りに誘われてから、彼はその後もあれよあれよという間に抱き込まれた。時間は長くはいらなかった。

 王子に押し倒されるのも織りこみ済みだったかといえば、微妙なところである。ルイは祭典の眩しさに目が奪われ、レオポルドの年相応の行動に心が揺れていた。「完璧」を貼り付けたような王子の像が、少しだけ改まったばかりのことだ。だからこそ、いつもより油断していた面もある。
 祝いの言葉でも掛けてやるかとルイは、従者もつけずに丸腰で王子の住まいに入りこんだ。これは悪手だった。ララに一声するだけでも、状況は違っていただろう。

「素直だと思ったら、いきなり暴れだしたから驚いたぞ」

「だって!!それは……レオポルド様が」

「レオ。そう呼んで」

 水と水が弾きあうような音がする。下半身がひたひたになっていることを、ルイは直視することができていない。尻穴に油を注がれて、ほじくられる体験なんて信じられるだろうか。少なくとも、ルイは現実を否定し続けたかった。夫の手を汚してしまったことや、その行為すべてが堪らないほど恥ずかしい。

 待ての声、叫びに反応する人はいない。なぜなら王宮の人間は、もれなく祭典の会場にいるのだから。

「さっきまで俺のことを説教していたのに」

「あぁっ!!んぅう……」

「今じゃ俺に背中を向けて、ルイがよがっているなんて」

「いうなぁっ……あぁ!!」

 信じられない、と何度も頭を抱えるレオポルド。その表情には愉悦が見られ、背徳感に震えている。弱い腕の力では、まるで王子の腰の動きは収まる気がしない。ルイは王子の寝台のうえで、なす術がなかった。

 実家で揃えた羽織布が、無残にも床に捨てられている。儀礼では相手の腕にうずくまるばかりだったが、今は辺りの光景がよく見える。
 王族の寝室といえば服や小道具であふれているものとルイは想像したが、実態はその逆だ。王子の自室は、ルイの手紙以外に無駄なものはいっさい置いていなかった。無駄な品を置かず、最低限の家具だけが定められた位置にある。

「はぁう、あっ……はぁ」

 腕をつかまれて、のけ反りながらも相手に背を預けている。次は自分が泣きべそをかく番なのかとルイは内心笑いがこみ上げてくる。お互いが見られない体位とはいえ、あまりに情けない。儀礼での失態の二の舞はごめんだったのに。

「も……うちょっと、やさしく」

「これでも抑えてる。ルイが気持ちよさそうにしている速度で止めてるつもりだよ」

「うそそんなの、うそ」

 ルイは、ぴりぴりと脳を突かれる感覚がした。快感だとは認められないが、確かに先からレオポルドの腰振りに意識がいく。どうしてかはわからない。でも尻に沈んでいく太いそれに、前より順応ができていた。

「ルイ、俺……ほしいよ」

「はぁ……っ!!ああっ」

「お前からの言葉がほしい。我慢してたぶん、ここで祝ってくれよ」

 祝いの言葉が言える状況ではない。冗談じゃない。できるわけがないだろう、とルイは今叫びたかった。レオポルドの顔を見ていたら、きっと、感情的になっていたかもしれない。情けなくてまた泣いていたかも。
 意地悪だ。ルイはレオポルドが意地悪な奴だと思った。自分の恥ずかしがっている姿を見て、彼は間違いなく興奮を高めている。尻穴で感じる彼の肉棒の質量が、だんだんと膨らんでいく。今にも精を放ちそうなほど性器が波打っている。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

処理中です...