ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~

芽吹鹿

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38散らして絡まる③ ※

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「レオと呼べ」

ルイの耳もとで聞こえてくるのは、甘ったるい声。喉の奥底から出されたような低い響きが、鼓膜にこもっていく。

「なに……を?」

「俺をそう呼んでくれよ。昔みたいに」

敏感になった身体を好き放題されながら、ルイは上にそびえる人からの言葉に驚いた。確かに彼は、再開してから一度も「レオ様」と相手に呼びかけたことがなかった。

「もう俺のことは、どうでもよくなったのか?」

意識せずに半年間、レオポルド、レオポルドと口にするのみであった。
彼はかつての願いを忘れたのか、それともわざと呼ばないようにしてあるのか。モヤモヤする気持ちが邪魔をして、互いの距離は埋まっていかない。
ルイの言葉や態度に、相手は業を煮やしたのであろう。この場で強圧的に求めてくるレオポルドは、もはや手が付けられない獣だった。

「今は、でも」

「呼んでくれないのか、どうして?お前にとって俺は夫にはふさわしくないからか」

「んっ!!だからっ、それやめっ」

性器をゴシゴシとしごかれて、ルイは絶叫した。しまった、と彼は歯噛みする暇もなかった。自慰で得られるものの何倍も強い、激烈な快感。いくら興奮を抑えようとしても、敏感な性感帯にはルイの意思が伝わっていかない。

「こんなに愛しているんだぞ?好きな想いをぶつけているのに」

「いっ、ううぅ」

「お前の夫はそんなに魅力がないか?」

ありすぎて困っているんだと、ルイは心のなかで怒鳴った。6年で少年が見違えて、隣にいた自分が彼の変貌ぶりに追いつけなくなっている。彼にこの世界を教えていたはずなのに、今ではそれが逆の立場になってしまった。

夫の成長を心から祝うことができない。どうしても、ルイは情けない自分と比べてしまうからだ。
非の打ち所のない肉体と教養を兼ね備えたレオポルド。
脚を開き、尻を持ち上げられて、浅ましくよがっている自分。どちらも、ルイには受け入れがたい変わり様だった。

「俺はお前の夫だ。それを自覚しているか?」

「してる……してるっ。してるからもうこすらないで!!」

身体が弓のようにのけ反って歓喜する。ビクビクと腰が動く。2度目の絶頂を味わって、ルイはまたもやひどく悶えていた。人の手によって子種を搾取されて、充足感と危機意識が同時に迫ってくる。
ベッドの左端を掴んで、まるで声にならない呻きを漏らしていく。

「ルイ。俺はレオと呼んでくれるまで、容赦しないからな」

「はぁ……はぁ、ああぁ。ぁああ」

「さんざん我慢してきたんだ。この日のために、ルイとひとつになれるように」

組み敷かれた人は臀部を持ち上げられても、抵抗できなかった。まだ余韻のなかで身体の芯が乱れている。激しい流れを断ち切ることは、もうできない。

見えないところで尻に異物をあてがわれていることを、ルイは片隅で察知していた。待てとか、やめてという言葉を出すことも考えた。
だが今宵は閨教育だ。思えば成人になった王子に手ほどきをするのが役目として与えられている。無駄な足掻きをしても、どうせ王子のなすがままとなることが目に見えていた。

「い……あ!!」

滑りの良い尻に、巨大な異物はぬるりと入りこんでいく。先端部まではよかったが、さっそく入りきらずにレオポルドの勢いは失せた。貫けばどこまでも入っていく、上からはそのような風にも捉えることができた。

あっけなかった。悩み葛藤していたのに、相手に身体を許すのはあっという間だった。

「痛いよな。ゆっくり挿れるから……」

「ぐ……う」

ルイはボロボロと涙を流しながら、レオポルドの腕にしがみついていた。年長者としての面子などありはしなかった。顔を隠して、黙って、尻に生じる痛みにじっと耐えるのが関の山だ。
つま先がぴんと糸を張ったように硬くなる。細い腕で、汗に濡れる王子の顔を引き寄せる。

(顔はぜったいに見せたくない)

意地だった。ささやかなプライドが、レオポルドの顔を抱きしめる力をルイにもたらしていく。

「辛いか?まだ痛むよな」

尻の奥を無理やり裂かれることはなかった。じっとこちらを待ち続ける、レオポルドの手心は言葉どおりだ。ほとんど腰を押しつけず、性欲を貪るような抽送もしない。彼の紳士ぶりが理想すぎて、ルイはありがたさに胸が締め付けられた。

「も、うごいて……終われないから」

「でも」

「いいから。ん……お願い、レオ様」

魔術にかけられたようにレオポルドのペニスが、尻の中で膨張していく。圧迫感、身体に肉棒が入っている恐怖。相手が満足してくれないと、この感覚を終えることはできない。

「ルイ。お前……泣いているのか」

「お願い、ちゃん……と。レオ様」

ろれつが回らない。唾液が口の動きを防いでくるから、生っぽい風味がするそれらを飲み込んだ。

「ちゃんと、そだって」

「え?」

「りっぱに育って。レオ様、おねがいだから」

ルイはたった一つの望みを伝えて、相手に恭順する身ぶりを示した。ぱくぱくと口を開けると涙の塩辛さが感じられる。いや、もしかしたら覆いかぶさっている相手の汗の味かもしれない。

~~~~~

腰を打ち付ける淫らな音がする。その音に応じるように、人の弱々しい喘ぎがあとに続く。

「あぁ……ルイ……ルイ」

「レオ様、んっ……んぅ」

「なんで今まで呼んでくれなかった、理由を教えてくれよ。ルイをもっと知りたいんだ」

「また、ああっ!!うぅう」

痙攣して、足腰が宙に漂っていきそうになる。激しい絶頂に、ルイは耐えきれずに目をつぶった。力んで、声をあげて、快楽の衝撃に頭が冴えていく。

白く天井がぼやけている。ルイの頭に浮かぶのは、自分の羞恥心と、レオポルドの昔の面影。あとは雄として覚醒した今のレオポルドの容貌だった。

「俺たちは夫婦だろ。隠しごとは無しにしよう」

「ひっ……んんっ!!そんなの、そんなこと」

自分が吐き出した精液が、股のあたりに粘着する。熱さにうつらうつらとしていたところで、さらに追い討ちが重なる気分だった。

「い……んぅ……レオ様……!!あなたは、いつもっ後ろに」

震える声に反応するように、王子はぴたりと手を止めた。
愛撫によってまき散らされた体液の数々。それらがベッドのシーツに淫らな染みを作っている。かすかな沈黙の内に聞こえてくるのは、鼻をすする音のみであった。

「なんだって?」

「後ろに……ぐっ、いると……思ってたの」

涙が粒のように見えるほどに、ルイは泣いた。顔を隠そうとするが、顔を歪ませて、崩れ落ちていく。彼が感情を高ぶらせていることは、攻めていた相手の方にも伝わってきた。
尋ねられた方はしゃっくりを重ねて、水滴を拭うばかりだった。レオポルドは多くの内容を理解できない様子だった。

「ずっとレオ様……ぐっ……ひぐっ、ううぅ」

「……」

レオポルドが人として、上へ上へと昇っていく。疎外感を募らせていたのはルイの方も同様であった。
置いていかないで、遠くに行かないでとルイは告げたかった。だが咽びながら喉が震え、うまく言葉にすることはできなかった。
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