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15しばしの別れ②
しおりを挟む次の日は、王宮がいつもの倍増しで人が多かった。
レオポルドの見送りとして従者はほとんど駆けつけ、衛兵も必要以上に警備を固くしている。
「あちらでは体調をしっかりなさい」
王妃様の声にルイも耳を傾けている。だが、レオポルドへの別れの言葉は、ほんのささやかであった。王様にいたっては遠くの円塔から様子を見ているというお粗末なものだった。
「ロイドによろしくね」
「はい!母上もたっしゃで。立派になってもどってきます」
レオポルドの顔を見れば、その態度が空元気で保たれていることがわかる。やはりこの親子の溝は深いのだろうか。ルイは場にそぐなわないことを色々と勘ぐってしまった。
宮の門を抜けて、外庭へ。森のように植物が茂った林道を歩く。風になびく艶やかな銀髪が、少年の後頭部をそっと触れた。
「ルイ、ちょっとの間はわかれだな」
「許しをもらえば帰ってこられるのでしょう?お別れではないような気もしますが」
「へへっ。そうかもなーー」
手をつなぎながら道を進んでいく。
毎日のようにいたから、いざ離れたら寂しくなるのかもしれない。ルイはこれほど長く深く人と接したことがなかったので、この先をうまく想像できなかった。
「じゃあ、俺はさいきょうになってくる」
「くすっ。気が早いかもですが、楽しみにしています」
王宮の敷地の端まで行き着き、レオポルドはルイの手を放した。王子の方は目元を赤くしながら、口を結び目のように固くすぼめている。触れたら今すぐにでも決壊して泣きだしそうであった。
今生の別れでもないのに、ずいぶんと大仰なことだなとルイは微笑んだ。
「どうぞお達者で。レオ様」
お辞儀をして、小さなレオポルドの背中を見送る。彼のシルエットが見えなくなるまでルイはその場にとどまっていた。
ルイは故郷を離れたときよりも、自分の胸がきゅっと締め付けられる気がした。見送る側は儚い気持ちを紛らわすように深く息を吸った。
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