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09騎士の願いごと②
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靴を無造作につま先に引っ掛け、レオポルドが真っ先に走ってくる。その後ろを全速力で従者が追いかけている。汗まみれの従者の顔、まるで鬼ごっこをしているみたいだった。
「レオポルド様。どうされたのですか?」
「聞いてくれよ。こんど、王宮で剣でたたかう大会があるんだって」
「剣……?決闘大会のことでございますか」
レオポルドはわくわく気持ちが昂っている。彼に代わって、息切れした従者がこくんと首を上下に振った。年にいちど開催されるという決闘大会は、騎士道文化から生まれた行事だ。
なんでもシオン王国内で最も強い男を決める名誉ある大会でもあるらしい。ルイはそれがなんだという顔で、改めて少年を見つめた。
「俺も出られるようになったんだよ。10歳になったから!!」
なるほど、子どもにも参加資格があったのかとルイは納得した。レオポルドは自慢気に背中を反らして、どうだといわんばかりである。
「それでは、鍛錬をたくさんしなくてはいけませんね」
「うん。さいきょうの俺を見せるときがきたんだ」
決闘大会は己のプライドをかけた死闘をするのだと、ルイは従者から聞いたことがある。子どもだからと手加減されるような甘い舞台ではないのだろう。
話しの中で、隣でひかえていた女性が、ひょっこりと身を前に出してきた。
「レオポルド殿下。騎士のあいだでは勝負にあたって、奥方や好いた相手にお願いごとをするのが通例なのだそうですよ」
ルイの侍女のひとりがそのように王子に吹きこんだ。「こら」と手で制止しても、もう少年には遅かった。
「え?お願いごと?」
「そうです。見事敵に勝ったあかつきには、そのお願いした内容をなんでも叶えてもらえるのです」
「うおおぉ。ホントか?そんなことができるのか?」
まんまと口車に乗せられたレオポルドは、庭中を飛び跳ねている。こうなると彼は止まらない。
「なんでもか。すごい、お願いごとか!!」
ここにいる全員の視線が、一直線にルイのもとに注がれる。「さいきょう、さいきょう」と変な振りつけで踊っているレオポルドも、目だけはルイのことを追っていた。
「そうだ。ルイと俺は結婚したから、俺にもお願いするけんりがあるのか!!」
勘づいた王子に対して、侍女たちは喜びの拍手で応えた。この場においてルイは呆れて言葉を挟む気にもなれなかった。
だが、彼も完全に乗り気がないわけではない。子どもの願いなどたかが知れている。お菓子か、勉強の手伝いか。無茶苦茶な頼みでなければ、レオポルドの頑張り次第では叶えようとも考えていた。
「どうしようかなぁ。何をお願いしようかな」
中庭で隠す気もなくレオポルドは本気で悩んでいる。腕を組んでうーんと唸っている少年を見て、周りは王子の可愛さのあまり悶絶の声を漏らした。
侍女たちが笑いをこらえている様子を、ルイは容赦なくぴしゃりとたしなめた。
「レオポルド様。どうされたのですか?」
「聞いてくれよ。こんど、王宮で剣でたたかう大会があるんだって」
「剣……?決闘大会のことでございますか」
レオポルドはわくわく気持ちが昂っている。彼に代わって、息切れした従者がこくんと首を上下に振った。年にいちど開催されるという決闘大会は、騎士道文化から生まれた行事だ。
なんでもシオン王国内で最も強い男を決める名誉ある大会でもあるらしい。ルイはそれがなんだという顔で、改めて少年を見つめた。
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なるほど、子どもにも参加資格があったのかとルイは納得した。レオポルドは自慢気に背中を反らして、どうだといわんばかりである。
「それでは、鍛錬をたくさんしなくてはいけませんね」
「うん。さいきょうの俺を見せるときがきたんだ」
決闘大会は己のプライドをかけた死闘をするのだと、ルイは従者から聞いたことがある。子どもだからと手加減されるような甘い舞台ではないのだろう。
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「え?お願いごと?」
「そうです。見事敵に勝ったあかつきには、そのお願いした内容をなんでも叶えてもらえるのです」
「うおおぉ。ホントか?そんなことができるのか?」
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「なんでもか。すごい、お願いごとか!!」
ここにいる全員の視線が、一直線にルイのもとに注がれる。「さいきょう、さいきょう」と変な振りつけで踊っているレオポルドも、目だけはルイのことを追っていた。
「そうだ。ルイと俺は結婚したから、俺にもお願いするけんりがあるのか!!」
勘づいた王子に対して、侍女たちは喜びの拍手で応えた。この場においてルイは呆れて言葉を挟む気にもなれなかった。
だが、彼も完全に乗り気がないわけではない。子どもの願いなどたかが知れている。お菓子か、勉強の手伝いか。無茶苦茶な頼みでなければ、レオポルドの頑張り次第では叶えようとも考えていた。
「どうしようかなぁ。何をお願いしようかな」
中庭で隠す気もなくレオポルドは本気で悩んでいる。腕を組んでうーんと唸っている少年を見て、周りは王子の可愛さのあまり悶絶の声を漏らした。
侍女たちが笑いをこらえている様子を、ルイは容赦なくぴしゃりとたしなめた。
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