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ヒミツの恋人【第一部】
12.理想の夫
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夏休み目前、紺野は顧問をしているバスケ部のインターハイ予選で忙しく、日曜日なのに試合のために早朝から出かけた。
ついさっき、勝ったよ、と電話があった。
別に紺野のお手柄ってワケじゃないけど、休日出勤を労ってやろうと思い、ビールを冷やし、あんまり得意じゃない料理に奮闘する。
つまみの枝豆は冷凍モノを解凍して、鳥の唐揚はニンニクと生姜を利かせたタレに漬け込み冷蔵庫に入れた。
サラダにするレタスは洗いながら手で千切ってザルにあげる。
トマトは紺野が帰ってから切ろう。
上々の段取りに満足して、鼻歌でも歌いたい気分になる。
料理なんて本当は面倒だし苦手なのに、誰かのためにするときは少しも苦痛じゃないのが不思議だ。
考えたら、学生時代にアパートで一人暮らししていた時は、外食かコンビニ弁当ばかりで、自分で作って食べるなんてほとんどしたことなかった。
もう少ししたら、上機嫌の紺野が帰って来て、同じテーブルで同じ物を一緒に食べる。
紺野は、オレが作ったものを食べる時、「うまいよ」って、いちいち大袈裟に褒めてくれる。
紺野みたいな男は、結婚したら、理想的な夫になるんだろうなって思う。
抱き合うときも、紺野は必ず「好きだ」って言う。
オレは、紺野のようには、言えない。
ごくたまに、切羽詰って、紺野に"言わされる"ことはあるけど、自分からはとてもじゃないけど、恥ずかしくて言えない。
オレは多分、紺野に、応えることが、出来ていない。
恥ずかしいなんていうのは自分と紺野に対する言い訳で、本当は、自分の中でまだ認めたくないのかもしれない。
自分が、男である紺野を、好き、だということを。
世間の認識にショックを受けながら、オレもまた同じように、偏見を持っているんだろうか。
男が男を好きになる、ということに。
下準備が整って、そんなことを考えていると携帯が鳴った。
紺野からだろうと思って表示も確かめずに電話に出ると、受話器の向こうからは酒場のようなざわめきが聞こえる。
「もしもし、紺野?」
『先生………』
聞き覚えのない声だった。
「誰だ」
『松浦です』
「松浦?!どうしたんだよ」
一瞬、なんで松浦がオレの携帯の番号を知っているんだろうと疑問に思ったが、それよりも松浦の声の様子に異変を感じた。
『…先生、助けてください』
「えっ?!おまえ、今どこ?!どうしたんだよ?!」
オレは消え入りそうなか細い声からなんとか松浦の居場所を聞き出して、部屋を飛び出した。
ついさっき、勝ったよ、と電話があった。
別に紺野のお手柄ってワケじゃないけど、休日出勤を労ってやろうと思い、ビールを冷やし、あんまり得意じゃない料理に奮闘する。
つまみの枝豆は冷凍モノを解凍して、鳥の唐揚はニンニクと生姜を利かせたタレに漬け込み冷蔵庫に入れた。
サラダにするレタスは洗いながら手で千切ってザルにあげる。
トマトは紺野が帰ってから切ろう。
上々の段取りに満足して、鼻歌でも歌いたい気分になる。
料理なんて本当は面倒だし苦手なのに、誰かのためにするときは少しも苦痛じゃないのが不思議だ。
考えたら、学生時代にアパートで一人暮らししていた時は、外食かコンビニ弁当ばかりで、自分で作って食べるなんてほとんどしたことなかった。
もう少ししたら、上機嫌の紺野が帰って来て、同じテーブルで同じ物を一緒に食べる。
紺野は、オレが作ったものを食べる時、「うまいよ」って、いちいち大袈裟に褒めてくれる。
紺野みたいな男は、結婚したら、理想的な夫になるんだろうなって思う。
抱き合うときも、紺野は必ず「好きだ」って言う。
オレは、紺野のようには、言えない。
ごくたまに、切羽詰って、紺野に"言わされる"ことはあるけど、自分からはとてもじゃないけど、恥ずかしくて言えない。
オレは多分、紺野に、応えることが、出来ていない。
恥ずかしいなんていうのは自分と紺野に対する言い訳で、本当は、自分の中でまだ認めたくないのかもしれない。
自分が、男である紺野を、好き、だということを。
世間の認識にショックを受けながら、オレもまた同じように、偏見を持っているんだろうか。
男が男を好きになる、ということに。
下準備が整って、そんなことを考えていると携帯が鳴った。
紺野からだろうと思って表示も確かめずに電話に出ると、受話器の向こうからは酒場のようなざわめきが聞こえる。
「もしもし、紺野?」
『先生………』
聞き覚えのない声だった。
「誰だ」
『松浦です』
「松浦?!どうしたんだよ」
一瞬、なんで松浦がオレの携帯の番号を知っているんだろうと疑問に思ったが、それよりも松浦の声の様子に異変を感じた。
『…先生、助けてください』
「えっ?!おまえ、今どこ?!どうしたんだよ?!」
オレは消え入りそうなか細い声からなんとか松浦の居場所を聞き出して、部屋を飛び出した。
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